謎のスイッチ
なぎ
プロローグ
もう一度人生をやり直せるとしたらどうしますか?
そう書かれた紙と謎のスイッチが、ある日突然ある男の元に届いた。その男は、先日、日本中を騒がせたテロ事件の犯人として刑務所で服役していた。
判決は死刑。男は一貫して黙秘を続けた。判決の決め手は、狐のお面。
事件当日、男は渋谷のスクランブル交差点のど真ん中に狐の面をかぶり、裸で現れ、大声でカウントダウンを始めた。カウントダウンが終わると、渋谷のビジョンがハッキングされ、同じ狐の面を被った男が、ビジョンに映し出された。その男はこう言った。「私は日本を変えるためにこの世に生まれてきた狐だ。今からこの腐った国を変えてやる」その一言と同時に、国会議事堂が爆発した。騒ぎが大きくなる中、次々と総理官邸や各省庁などの政治にまつわる場所が爆破されていった。
その後男は、そのままスクランブル交差点の真ん中で逮捕されたが、逮捕後は一貫して黙秘を続けている。
事件が日本中で話題になり、この謎のキツネ男が誰なのか、どうやって爆発を起こしたのか、目的は何なのかなど様々な考察が飛び交った。もしかすると、キツネの国から現れたヒーローなんじゃないかと男を賞賛する人をも現れた。なぜなら、逮捕された男の部屋からは何も出てこなかったからだ。男が逮捕され、死刑になったのは、男が被っていた狐の面とビジョンに流れている狐の面が一致したから。決めてはただそれだけだった。
その後、事件は日本中で話題になったが、次第に反響は薄まり、やがてニュースにも取り上げられなくなった。日本を変える。ただそれだけの為に生きてきた男は、その届いた謎のスイッチを迷いなく押した。だが、スイッチを押しても、男の人生がまた1から始まる訳ではなかった。
男はスイッチを何度も何度も押した。その間にどうしたら日本を変えられるのだろうかと考えた。もし、このスイッチが本物なら、次はもっと勉強して総理大臣になろうか、はたまた完璧なテロ犯罪を計画し、国を支配してやろうか。様々なことを考えながら男はスイッチを押し続けた。そしてスイッチを押し続けて1ヶ月が経った頃、突然男はパラレルワールドに吸い込まれた。
目が覚めると、男は赤子の状態になっており、目の前には知らない顔の親らしき人がいた。そう、その謎のスイッチは本当に人生をやり直せるスイッチだったのだ。男の記憶はそのままで、違う人間に生まれ変わっていた。テレビを見ると、狐の面の男が獄中で自殺をしたというニュースが流れていた。
記憶を全て残し、生まれ変わった男はどんな人生を歩むのか、何もかも忘れて普通の人生をあゆむのか、日本を変える為に今度こそはと完璧なテロ犯罪を計画するのか、そもそも謎のスイッチは誰から送られてきたのか、どうして自分は生まれ変われたのか。これはそんな元テロリストの男が、謎のスイッチをきっかけに生まれ変わり、自分自身の生きる目的を探していく物語である。
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