第5話 彼らの状況と途方もない力

「 「軍団体」という単語、「アノマーリング」という単語、聞いたことありますか?」


軍団体?


「いや、初耳だ。」


そうだと思ったという表情。


「この惑星はずいぶん前から少しずつ、おかしくなったそうです。 私が生まれるずっと前からです。」


「何がおかしの?」


コーネリアはビームプロジェクターをオンにした。


最新式のホログラムシステムよりはるかに古典的な装置、つまり遺物だった。


「装置ではなく画面を見てください、閣下。」


白い壁を土台に投影された画面に見えたのは恐ろしい怪物だった。


宇宙人も、宇宙の怪物も、すでに慣れ親しんだ帝国の軍人に無惨さを感じさせる怪物がいるのか? 思うはずなのに、


画面に映った人たちの最も恐ろしく、いやな点はまさに


人間に似ているということだ。


生まれて初めて見る獣なら、見慣れないだけの怪物なら、見慣れないし怖いとしてもぞっとしたり気持ち悪くないはずだが、人間を奇怪にひねって変形したその姿が嘔吐感を誘発するのだ。


「これはこの惑星のあちこちに存在する怪物です。 ご覧のとおり、人間に似ています。 その姿も、大きさも、能力も千差万別ですが、ただ一つ、人間の顔をしているという点だけが共通点です。 雑巾のように歪んでいてねじれていますけれども。 アノマーリングという名前で呼ばれています。 おそらく、人間の遺伝子がねじれていると推測しています」


「なるほど。これが帝国がここの行政力を失った理由なのか?」


…違うよ。そんなはずないのに。 どんなにおぞましい怪物でも、


「そんなことないですよ。 彼らは皆、銃で撃たれると怪我をし、大砲で撃たれると死に、ミサイルで撃たれると粉になります。。 個体ごとにその程度の差はあるでしょうが。 帝国の武力で彼らを制圧することは十分に残っています」


そうだね。俺が思ったのがそれだった。


「しかし、この惑星で起きた変容が、すべてこのように恐ろしく、つまらない形で起きたわけではありません」


コーネリアの視線は、ずっと私の後ろで待機していた少女に少し移った。


「あのパラシャという子の力を見たでしょう。」


「…そうだ。」


この惑星にはあのような超越的な強者が多数存在します


多数?


戦闘の光景は一瞬にしてファオラマのように広がった。


そういうのが多数?


「まあ、もちろん、惑星人口の割合からすると、ごく少数ですが。」


それは惑星人口はものすごく多いから、100人が存在してもごく少数だと。


そしてその100人がみんなそんな強者だったら···


「そんな超越的な強者たちを、この惑星では『軍団体』と呼びます。」


「軍団の力を持つ個体とはどういうことか。」


言われてみれば直観的な名前のような気もするし。


「そうですね。それから···」


「うん。彼らがこの惑星に散らばっていて、彼らを制圧する武力が必要だ。 そういうことだったんだ。」


「思ったより頭がいいですね。」


「それ、上官への言辞か。」


「…すみません。」


しかし…


「それは大変なことではありませんか。 このお嬢さんがさっき犯したことを思い出してみてください。

私たちが敵だったら、どうしようもなく皆殺しのエンディングだったんです。」



ソルフスの言葉に,パラシャの顔は暗くなった。


「私が主人を敵に置く仮定は気に入りませんが···。」


「あ、そ、だから、仮定。 もし。IFのことを言っているだけですマン···あ、いや、とにかく。」


ソルフスは彼らしくない言い訳をした。


「この惑星にこの娘のような強者が何人かいるとしたら、制圧することは可能でしょうか。」


「問題ありません。 ご主人様の意思は武器である私が貫きます。」


この軍団体のお嬢さんの理由を知らないと、忠誠心が一番おかしいんだよ。


今日、いや、数時間前に初めて会った仲だって?


「そうだよ、でも一つや二つじゃないって。 正確な数字は知らないんだよね?」


「少なくともこの惑星に存在する自治区の数ほどにはなるでしょう。」


「軍隊がその自治区の支配者だから?」


「頭が··あ、はい。」


何度も意外という目つきを送ってくるのは本当に失礼なんだ。


その時、技術副官のヘトプスが入ってきて言った。


「船長、いや、閣下。 ニックスに組み込まれていたくちばしの艦船に対する分析が終わりました。 ところが、」


「変なところでもあったの?」


「はい。本当に変なところがありました。 来てみてください。」


彼について行ったところにはニックスと、それから引き抜いたくちばしの艦船が整列していた。


「これらのくちばしの艦船には『メガランス』という機体名があるようです。

独自の武装は機関銃だけで、突進と乗船だけに特化した、本当に気の狂った奴らが設計して使う艦船です」


軽く悪口を浴びせたヘトプスについて行き、一番上の者にたどり着いた。


他のやつに比べて目立つ巨大な図体だった。


「こいつが一番大きいやつで、その時に一番最初にニックスに衝突したやつです。 でも…···」


ヘトプスは私をあいつの糞鼻に導いた。


「ごらんなさい」


何か物足りない。


変だ。


あるのが当たり前すぎて、ないものを想像もできないような、何かが。


「推進装置はどこにあるの?」


「そうですね!それです。 この船、どこにも推進装置がありません。」



?!


いや.


いやいや。


推進装置がなければ船じゃないじゃん!


ただの鉄の塊なの?


俺たちは船でもない奴と戦っていたのかと!


いや,


「明らかに、こいつ、ニックスの探知も突破する速度で飛んできたじゃないか」


「それが本当におかしいんです。 ワープをしようとしても、エンジンは必要だし、最低限、浮いているためにもエンジンは必要じゃないですか?

ところが、これは推進のためのエンジンも、浮遊のためのエンジンも全くないということです。」


誇らしげに推進装置をべたべたつけておいて、補助推進機までつけている隣のやつらと比べてみると、もっと明確におかしかった。


代わりに、本来艦船の推進装置が必要な後方には長い棒と引き金一つが付いているだけだった。


ふと、「軍団体」という言葉が思い浮かんだ。


そして私が思い出した、そしてこの名前に含まれた、「ランス」という単語が浮び上がった。


「…こんなこともできるの? 一体どうやって?」


私は笑った。


「危なかった。 俺たち死ぬところだった。」


パラシャが来た頃にはもうみんな死んでいたかもしれない。


その能力を正確には分からないが、少なくともパラシャと同級、あるいは理想と考えた方が楽だろう。


「え?」


「敵の正体は分かったか?」


「あ、はい。この惑星の周辺にいた海賊と推定されます。」


幸いにも、


「海賊らしく、馬鹿な敵だったのが幸いだったのだろうか」


そんな超越的な強者をただ兵力輸送、引き金トリガーだけで使うなんて。


そのような判断を本人がしたはずはなく、どんなバカが指揮していることが明らかだった。



ベラはくしゃみをした。


「誰が私の話をするのか。」


軽くつぶやいた後、その耳に食い込んだ数々の騒ぎに一喝した。


「ああ、聞きたくないんだ。」


木が主な素材のある空間だった。


多数の人間が円卓に集まって座っていた。


海賊であり、ある船団の首長であるベラと目線を共にする彼らの正体は言わなくても分かるだろう。


「これこれ、負け犬のくせに頭が固い。」


「鉄柱をつける旧型戦艦1隻に、我々の艦船何隻を交換したんだ? それも勝つこともできずに?」


「どんな顔で生きているのか? 私ならいっそ死んだ方がましだ。 いつ死ぬの? ロープはこちらから支援してあげる。 丈夫なもので。」


数々の叱咤を耳元で流したが、その言葉だけは聞き流すことができなかった。


「あ、そう? そんなに死にたければ。」


ベラは拳で軽く後ろを叩いた。


その拳はすぐに、柔らかいお腹の肉に触れた。


その中に宿ることを全く想像できないほど、その肌触りは柔らかくて暖かく、優しかった。


けれど、,


次の瞬間に見える壊れた円卓と首を失って転がる相手の体は、子供の仮面をかぶったその怪物の本当の正体を悟らせた。


つぶされて四方に飛んでいったそれは、つぶされた肉の塊をわずか数点残しただけだ。


「また?」


「…」


急激に場内は静けさを取り戻した。


「そのように思う存分騒いでも、この子の前で静かになる奴らが私に何か言うことがあるのか? 相手が軍団体だったという話はすでにしたはずだが

「それは推測にすぎない…···」


ベラがその子に送る目つきを素早くキャッチした彼は


「いや、そんな力は軍団体しか持てないだろう」


先に去った女性とは違って、命を救うことができた。


「私はもう抜けるから、思う存分しゃべるか、しないか。 行こう、ルナ」


「はい」


やや粗い模様ができた黄色いドレスを着た、そのかわいい子供は両親の手を握るようにベラの手を握り、その場を離れていった。


「…どうしよう。」


「このままだと困る。」


「そうだね。でも、むやみにけんかしたら、私たちもこうして魚の塊になってしまうんだよ。」


「いっそ、売ってしまわない?」


「売るって?誰に?」


「その帝国軍、軍団体を率いていると。 あいつらが助けてくれれば、あの女を殺してなくすことができるかもしれない。 あのルナという女さえいなければ、あの女は何でもないんだから」


「でも、帝国正規軍が海賊と話そうとしてるの? むやみに行ったらみんなこうなるよ。 これが嫌なんじゃないの?」


彼の指は再び床に倒れた体を指差した。


「ひょっとして、あの指揮官が適当に腐敗した偉い方なのか」


「そうだ。こんな辺境に派遣された奴だなんて、ほぼ粛清、よく見てこそ左遷だと。 何かに渇いているかもしれないよ。」



「まずはその方を探してみよう。」

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