青梅ヶ原シリーズ SSまとめ
矢庭竜
2013
三月生まれの二人【クウ】
「見て見て真白、バースデーカードだよ! どれも凝ってるねえ」
高校から駅まで歩く途中、寄り道した大型書店には雑貨も売られていて、そこに並んだメッセージカードを手に取りながら私は後輩を振り返った。男子にしては長い髪を雑にくくった後輩は、いつも通りの無表情で「そうですね」と愛想のない返事をよこす。
「ねえ、真白っていつ生まれ?」
「忘れました」
「自分の誕生日を?」
めちゃくちゃ困らないか、それ。グーグルでアカウント作るときとか。
「私はねえ、三月九日! 知ったからには何かちょうだいね」
冗談半分に笑いかけると、真白は目をぱちくりさせて、「先輩も早生まれですか」とつぶやいた。早生まれ、そんなくくられ方をすることもある。
クラスメイトが続々と十七歳になっていく中、私は年度末まで十六歳。せいぜい末っ子としてチヤホヤされたいところだ。
「三月三十一日です」
唐突に、真白が言った。忘れたはずの誕生日を思い出す気になったらしい。
「え、ほんと? 三月生まれ、おそろいじゃん! ってことは魚座?」
「牡羊座です」
間違えた。照れ隠しに後輩の前髪をかき回しながら、「魚座は情熱的だというよ。魚座におなり」と勧誘すると、後輩は「はい」とうなずいた。
(2013/4)
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