AIは博多弁を語らない

ロックホッパー

 

AIは博多弁を語らない

                          -修.


 我が家の公用語は博多弁だ。


 妻「ほら、なんやったっけ。あの美味しかった奴よ。ほら、あれ、あれくさ、博多駅の、丸くて、茶色で、美味しい奴よ。名前が出て来んったい。」

 AI「はい、博多駅では、食事ですと、とんこつラーメン、うどん、お土産ですと、クロワッサン、千鳥饅頭、チロリアン、・・・」

 妻「ALEXA、黙っといて。もうちょいで思い出せそうちゃけどね。」

 夫「なんか、お菓子ね?」

 妻「そうそう。お土産やけん、お菓子よ。そうやった、あれ、あれ、あれくさ、一回お取り寄せしたやん。何やったかなー。」

 AI「はい、最近の購入履歴は新しい順に、エクストラバージンオリーブオイル、乳液、小説、・・・」

 妻「ALEXA、黙っとってて!なんで口挟んで来るとかいな?」

 夫「そりゃ、お前が『あれくさ』、『あれくさ』、言うけんやろ。」

 妻「あー、そういうことね。なるほど。」


 夫「さっきから思い出せんとは『カヌレ』やないと?前、買ってきた時、安いのに本格的で美味いって言いよったやん。」

 妻「あー!そうやん、カヌレたい!忘れとった。」

 AI「はい、カヌレとは16世紀にフランスのボルドー地方で誕生した焼き菓子で、・・・」

 中国企業製の、我が家のもう一台のAI「Souyang」が静かにカヌレの説明を始めた。


おしまい


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