第2話 混雑の中での触れ合い
次の駅に着くと、ドアが開いた瞬間、大勢の人が一気に乗り込んできた。
先まで静かだった車内は、急にざわめきに包まれる。
俺たちの間にあったわずかな距離も、自然と消えていった。
華乃の肩が俺の肩に、腕が俺の腕に、そっと触れる。
けれど、それを嫌がる気配はどこにもなかった。
むしろ、俺たちは動けないふりをして、互いに身を寄せ合っていた。
電車が急に揺れたとき――
華乃の手が、俺の手にそっと触れた。
一瞬の沈黙。
でも、俺は手を引っ込めなかった。
いや、もう引っ込めたくなかった。
「……華乃。」
小さく名前を呼ぶと、彼女が目を見上げてくる。
その目は、驚きと少しの不安、そしてほんの少しの期待で揺れていた。
俺は、ゆっくりとその手を包み込むように握った。
ためらいながらも、でも確かに、優しく、指を絡める。
華乃の手が、きゅっと握り返してくる。
それだけで、胸が熱くなった。
言葉なんていらなかった。
今、この手のぬくもりが、すべてを語っていた。
「…ほんとに、もう離れたくない。」
小さくこぼした俺の言葉に、
華乃がふっと笑って、少しだけ俺の肩に寄りかかってきた。
電車はゆっくりと次の駅に向かう。
けれど、この時間だけは、永遠に止まっていてほしいと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます