第4話「おふろって、さいこう!」

――おふろ。

それはこの家でいちばんフシギで、いちばんスキな場所!


最初はね、「水!濡れる!逃げろ!!」って思ったよ。

だって、猫だもん。水って天敵って相場が決まってるじゃない?


でもある日――ふらっと通りかかったときに、

ぼくの鼻がピクって反応したんだ。


おやじのにおい。

……と、あったかい空気!

しかも、あの声。


「ふぅ……」


あれ、なんか気持ちよさそう!

……凄いしあわせそうじゃない!?


最初は、ちょっとだけ覗いてみようかな、って思って。

そっとドアの隙間から顔を出すと――


あれ? おやじ、なんだか疲れた顔してるけど、

湯気の中でちょっとリラックスしてるみたいだ。


そんなの、気になるに決まってるじゃないか。

猫として。いや、家族として!


それから毎日、ちょっとずつそのドアを開けておやじを見てたんだ。

その顔、あったかそうな湯気の中で、すっごく安らいでる。


「ふぅ……」って、息を吐くおやじの顔がどんどん気になってきて、

ある日、とうとう――


ドアをちょっと開けたら、そこに入っちゃった!

これも運命ってやつだね。


ぴしゃぴしゃしてて、足はちょっと冷たいけど、

おやじの顔見たら――あったかくて、やさしくて、

……あれ? ぼく、ここ、好きかも?


「おい、入ってくんな。お前猫の筈だろ……」


って言うけどさ、

タオルで毎回拭いてくれるし、

最近じゃ、先にぼくの分まで準備してあるんだよ?


つまり――そう!

「ふたりで入るおふろタイム」ってことだよね!


その日から、おやじとお風呂に入る時間が、

ちょっと特別な時間になった気がする。


でね、わかったんだ。

おやじ、ここでよくしゃべるんだよ。


「世話が焼ける……」だとか。

たぶん、誰にも言えない仕事の愚痴を、

お湯とぼくにこっそり打ち明けてるんだ。


ぼく? もちろん聞いてるよ!


「お前がいると飯代がかさむ」とか言われても、

うんうん、ごはんは大事、って思うし。

今日の愚痴だって、どんと来いだよ。


だって、ぼくが湯船にいると、

おやじの「ふぅ……」がいつもより長くなるんだもん!


それって、すごくない?

おやじの世界が、よりあったかくなってるってことだよ!?


おやじ、最初はふろ場で「なんだよ、マル猫」とか言ってたけど、だんだん優しい顔でぼくを見てくれるようになった。

その顔が、ちょっとだけ好きだなって、ぼくも思うようになった。


ぼくのしっぽも、そのおかげでだんだんごきげんになってくるんだもん!


おふろって、さいこう!




~つづく~

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