お祭りバトル~呪いのドラゴンロード・ルーシーVSアイ・アマテラス~
神谷モロ
呪いのドラゴンロード・ルーシーVSアイ・アマテラス
「ふははは! ついにこの時が来たな! そう、長きにわたる我らの因縁に終止符をうつべく。いざ決戦のバトルステージへ!」
「ふう、ルーシー、私達は初対面ですよ? 因縁なんかあるはずないでしょうに……」
「う、うるさい! 細かいことを気にするな! いちいち突っ込みを入れるところがベアトリクスにそっくりだ。うん、それだけで我には因縁が出来たぞ! ふっはっは!」
「はぁ……。そうですか。しかしこの理不尽な世界にすっかり溶け込んでいますね。
疑問に思いませんか? なぜ私達が戦わないといけないのか……とか。思考を放棄しては人間失格ですよ? まあ私も人間ではありませんが」
「人間失格、結構。我は呪いのドラゴンロード、ルーシー・バンデルなのだ、憶えておけ!
あ、もうすぐで名前が変るんだった。次に会う時はルーシー・カルルクと呼ぶがいいぞ、はっはっは」
「あ、ご結婚されるのですね。おめでとうございます」
「うむ、ありがとう。戦いが終わったら連絡先を教えてくれ、特別に式の招待状を送るから」
「あら、ありがとうございます。では私とマスターの二人分お願いいたしますね」
【バトルスタート!】
システムメッセージ。
いや、不可思議なバトル空間を取り仕切る神の声が二人に聞こえると、周囲は見渡す限りの草原と変化した。
「では、アイとやら、いくぞ! アイスジャベリン!」
ルーシーの手から放たれた氷の槍は、アイの胴体に命中すると粉々に砕けた。
だがアイはかすり傷一つ負わずに平然としていた。
「なに! また失敗してしまったか? ぐぬぬー、最大の見せ場で失敗してしまった……」
砕けた氷の破片を払うとアイは、また魔法の失敗をしたのではとぶつぶつと独り言を言っているルーシーに向かって話す。
「いいえ、ルーシー。魔法は成功していますよ? ただ、このメイド服が頑丈なだけです。
フェーズ5の宇宙服と同じ素材で造られておりますのでそれなりの防弾防刃仕様となっております。では次はこちらの番ですね」
アイはメイド服のスカートを捲り、太もものホルスターから拳銃を抜く。
その拳銃は3024年では一般的な6ミリ口径、ケースレス弾。
反動が小さく女性でも扱える護身用の銃だ。
「まあ、ファンタジー世界で拳銃が役に立つのかは疑問ですが……」
アイは、目の前の少女相手に躊躇なくトリガーを引くと、パンッ! パンッ! と乾いた破裂音が草原に響く。
ちなみにコメディー時空なのでロボット三原則の外である。
音速を超える金属の弾丸が容赦なくルーシーを襲う。だが彼女は微動だにしない。
それもそのはず、弾丸は彼女に直撃する寸前に何かにぶつかり火花を散らして四散した。
「ふははは! ちょっとびっくりだったが、我がマジックシールドの前には無力のようだな。うん? ぎりぎりだったって? う、うるさいぞ、結果良ければそれでよいのだ」
ルーシーはまたぶつぶつと独り言を言っている。
「なかなか愉快な子ですね。おそらくは初見であろう銃撃を、弾丸が発射された直後に回避できないと判断、瞬時にバリアを展開できるなんて、随分人間離れした動体視力をお持ちのようですね」
「え? そうなの? ふ、ふはは、言ったであろう。我はドラゴンロードであると、お遊びはこの辺にして我も本気を出してやろう。貴様はドラゴンブレスを見たことがあるか!」
そういうとルーシーは大きく深呼吸をする。
「いくぞ! 極大火炎魔法、最終戦争。序章第三幕『選別の炎』改め! 我が必殺のぉぉおお! ルーシードラゴンブレス!」
大きく開いたルーシーの口から、青白いレーザービームが放たれた。
少女が口からビームを出す姿は間抜けに見えた。
だが、紛れもなくドラゴンブレスである。
巨大な岩石を一瞬で蒸発させるだけの威力はあるのだ。
アイの立っていた場所は地面ごと爆発し、大きな爆炎を上げる。
空高くまで上るキノコ雲。
「ふははは、どうだ、思い知ったか! これが舐めプしないドラゴンロードの真の力だ!」
『……なるほど。さすがファンタジー世界ですね。威力としては一昔前の宇宙戦艦の荷電粒子砲並みの威力がありますね』
「なにぃ! あれを喰らって無傷でいる……だと?」
爆炎が収まると、何事も無かったかのように大きなクレーターに平然と立つアイの姿が見えた。
『なんということでしょう、あのボディは特注品で高かったのですが。……まあこの世界はコメディ時空。本編には全く影響ないのですが……』
もちろん無傷ではない。アイが入っていたアンドロイドの体は跡形もなく吹き飛んでいた。
今のアイの姿は衛星軌道上にある宇宙船アマテラスからの遠隔ホログラムである。
インチキに思えるが、アイの本体は宇宙船アマテラスである。
『インチキとは失礼ですね。それにインチキをしているのはあちらも同じです。
ルーシー、あなた、どういう理屈か分かりませんが体の中に何か飼っていますね? 霊子コンピューターのスキャンを無効化するほどの謎の化け物を』
「……うん? どういうこと? つまりアイはゴーストみたいな存在? え? 違うの? そもそも生きてない? 何言ってるか全然分かんないって。
……なにをー! 馬鹿と言った方が馬鹿だ! お前、さっきから文句ばかり言って、頭がいいならさっさと解決策を教えなさいよ!」
ルーシーは体内の何者かと喧嘩をしているようだ。
『ふう、どうもやりずらい相手です。でも手加減しませんよ、どうせコメディ時空。べつに殺しても死なないのですから。
では次は私の全力全開の一撃をお見舞いしましょう、マスター、主砲発射許可お願いします』
アイがそう言った瞬間……それは起きた。
突如、大地がめくれ上がりドームの様に半球状に膨れ上がった。
そして、水風船が破裂するようにドームの表面は爆発し、中から真っ赤に煮えたぎる溶岩が噴き出す。
破裂した地面からは、まるでテーマパークにある噴水のような勢いで、天高く溶岩が噴き上がり大きな火柱をつくった。
その高さは成層圏を突破し、宇宙にまで上った。
そう、宇宙船アマテラスから垂直に放たれたタキオンビーム砲は一瞬よりも早くにコア外周のマントルに到達し、素粒子反応爆発を起こしたのだ。
ちなみに3024年の宇宙の戦時国際法では宇宙戦艦の主砲を惑星大気圏内で撃つことは禁止されている。
もし、ここが生命のいる惑星であったなら、どれだけの被害をもたらしただろうか。
だが、あくまでコメディ時空。生き物はルーシーしかいない。だがその彼女も……
「ブファーあああ! な、何が起きたのだ! ……うん? リザレクションで蘇ったって? そ、そうか、私は死んだのか、いや、まだ死んでないから負けてない!」
『驚きましたね。なら、降参するまでタキオンビーム砲を撃ち続けますけど?」
「ま、まて! 本当にいいのか? どうやらルシウスは見つけたらしいぞ? お前のご主人様の居場所を、イチローだっけ?
25歳独身で彼女いない歴が年齢……あ、ごめんなさい。
そしてだ! お前の魔力の繋がりをたどって呪い殺すこともできるのだ。いいのか?」
はったりではない。
霊子コンピューターの霊子と、ファンタジー世界の魔法は基本原理としてはよく似ている。
もちろん、ただの魔法使いが霊子コンピューターを扱えるかというと話は別だ。
しかし、少なくとも魔力の根源ともいえる上位生命体のドラゴンロードにとっては、霊子通信をたどって宇宙船に居るであろうアイの主人にたどり着くことは容易であるのだ。
『ち、マスターの命には代えられません。降参します。まあこの手のバトルに宇宙戦艦とかチートもチートですから、ここで退場も致し方ありませんね』
「よし、勝ったぞー! ふははは! 少々卑怯な手を使ったが勝てばよかろうなのだ!」
――終わり――
続く? たまには気分転換にお祭り企画を考えたいと思います。
お祭りバトル~呪いのドラゴンロード・ルーシーVSアイ・アマテラス~ 神谷モロ @morooneone
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