「君」と言う「鎖」

wkwk-0057

存在

朝起きたら君が居なくて、空っぽの2LDKの家。腫れた目を擦りながらキッチンへ向かう。

いつも、いつも君が「おはよう」というのに、今日はなかった。

珈琲を注ぎ、コップを口元に近づけ1口飲み込む。


苦い。


苦しい。

どうしようもない虚無感を忘れさせるようにテレビの電源をつける。

だけど、それも雑音でしかなくて直ぐに消す。



何故か君が隣にいる姿を想像してしまって、枯れたと思った涙が瞼に溜まる。


視界が煙り、何も見えなくなる。

寝巻きのズボンに大粒の涙がポツポツと落ちる。

鼻がツンと痛む。

嗚咽をする度にこの悲しみは増すばかり。


僕と君を繋いでいたのは偶然だった。

それがわかった。


もう。背中をさすってくれる人は居ない。

1回だけ、1回だけ過去に戻れるのならば、

あの日、君と出会った日に戻りたい。


苦しくて。虚しくて。やるせなくて。切なくて。


僕の身体を押し潰してくる。


涙を指で拭き取り鼻水をティッシュで拭き取る。


珈琲の二口目を飲み込む。


あの時、君が泣いていたと知っていたならば、僕は君を抱きしめに行ったのに。

なんて、自分勝手で、言い訳だよな。



残りを全て飲み干す。


悲しくて、切なくて、前に進めなくても。

君が今の僕にとって鎖となって存在していても。


僕は君との世界を忘れない。


だけど、最後に、本当に最後だから。

君の声をもう一度、聞かせて欲しい。


何気なく「ただいま」って言って。

何気なく「おかえり」と言って。


そしてそして、






















「愛してる」

と言いたい。

















鏡を見ると目が真っ赤に腫れでも尚、瞳から涙が零れている自分の姿。



























所々、君がいたと言う【忘れ物記憶】が。




















どれだけ強く願っても戻ってこない君が。




























僕にとっては「鎖」だったんだ。

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