崇められてこそ神、崇めてこそ神

佳乃瑠 吟 Kanoru_Gin

第0章 「原点」

ーーこの世界のは、


 神と人間の間で行われてる戦い。


神の軍団によりある小さな村が襲われた崩壊していた。

建物は崩れ落ち至る所で煙が立ち上がっており、人間や家畜の焼けた嫌な臭いが鼻に付く。


 そんな村の中にボロボロの服に身を包んだ少年が一人立っていた。

左手に手を握っている。その手の主人の姿はなく爆風にでも巻き込まれたのだろう。少年はそんな事にも気付いてないのだろう。

少年自身も目には焦点が合ってなく色をなくしていように放心状態である事は一目瞭然である。


「少年よ。

この現状から世界に何を見た?

平等を装いながら多数に依存する不条理、

自由を歌いながら正義を振りかざした制裁、

なあ、少年。

君はどう思う? 」

少年も気付かぬうちに目の前にフードを深く被り顔の見えない何者かが立っていた。

少年は力無き目を声の主に顔を向けた。

フードを深く被りし者は尚問い掛ける。

「いつしか始まった戦いは終わりは見せる事なく続いて行く。

望者、望まない者関係なく参加させられ、繰り返される殺戮の日々」

それからフードを被りし者は少年の頭の上に手を置いて、微かに見える唇の両端の口角を上げて、

「もしも……、君が強ければ、もしも……君が戦えたなら。

そう考えたらこの戦場も君の所為なのかも知れないな」

その言葉に少年は微かに目に反応を見せた。

フードを被りし者は少年から頭から手を離した。

「もしも話をしても仕方ないな。

ただ、君が生き残って此処に今生きている事は事実だ。それが幸運か不運かはどうかは知らないが、これから先は君次第だぞ」

少年は微かな声で言葉を漏らした、

「もう……どうでも良い……」

「ん? 」

少年の声は風吹かれて今にも消えそうな小さな火のように囁かれた。

「もう……いいよ。

戦った所で僕に何が出来る訳でもないし何も戻ってこない……。

もう……何も無くなった」

少年は左に握った手を顔の前に持ち上げて視界に入れた。

その見つめる目には色は無い。

「まあ、悲観してしまうのも無理はない。

だが、どんな結果、形にしろ君は生き残った。

その真実はどうする?

このまま自ら死を選ぶのかな? 」

なんの返答もしない少年。

「その手の持ち主も無駄死になってしまう事になっても良いのかな?」

少年は手に持った手を胸に押し付けて、

「叱られる事が多かったけど嬉っかた。

褒められる時にこの手で頭を撫でてくれる時の温かさ。

眠れない夜は僕の手を握ってくれるて安心して眠れた。

それなのに僕は……、

何もしてあげられなかった……」

声からして後悔している事は理解出来た。

フードを被りし者は、

「どうだろ少年。

君がこの世界を変えられるとしたら何を望む? 」

少年は顔を始めてフードを被りし者に向けた。


「君に捧げよう。

君が望むように世界は微笑む。

君が望むように世界は動く。

君が望まずとも世界は傾く。

君が望まずとも世界は輪廻する……


だからこそ君は君の望むようにすれば良いのだ」


フードを被りし者はその場で楽しそうに回転した。

それと同時に少年の握っている手を確認して納得した。

其処には魔術師による天使除けの紋章が刻印されていたからだ。

少年に手を差し出して、

「その手を貸して頂けますか? 」

少年は少し戸惑いながらも手を差し出しいた。

受け取った手を確認して何やら呪文を唱えた。

刻印の入った手は緑の光り魂のようになったと思うと、それを少年の心臓部分に押しつけた。

緑の光の魂は少年の身体の中に取り込まれ、少年は慌てて服の下から自分の肌を見ると其処には蝶の刻印が刻まれていた。

「驚く事はありませんよ。

その手の刻印を目にした時から思ってたのですが、貴方はどうやら特別は存在のようですね」

フードを被りし者は少年に問いかけた。

「それはともかくとして、その手の持ち主と君は一つになれましたよ」

少年は特別な変化を感じる事なくいつも通りの状態であった。

「これで君は簡単に死ねわけには行かなくなりましたね」

「僕の中に? 」

「そうです。その手の持ち主の遺志を君と共にあります。

其処で君は何を望みますか?」

二人に少しの間が続いた。

少年は呟くように言った。


「僕はこの世界の神になる」


フードを被りし者は微笑んだ。


「崇められてこそ神。

崇めてこそ人間だ。」


其処にはもうフードを被りし者の姿はなかった。

少年は一人空を見上げた。

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