第20話|カレーと、ひとりでいること

ひとりの夜、だけどどこかあたたかい。



「今日は、遅くなるから晩ご飯いらないって」


そのメッセージが届いたのは、夕方5時すぎ。

キッチンに立っていた楓は、スマホの画面を見つめながら、そっと息をついた。


「……ひとりか」


静かな部屋。

湯気の音も、笑い声もない夜。

でも、だからこそ作りたくなる料理があった。


それが――カレー。


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今日のレシピ|やさしいチキンカレー


材料(2人分 ※翌日分も兼ねて)

* 鶏もも肉 … 250g(一口大に切る)

* 玉ねぎ … 1個(薄切り)

* にんじん … 1/2本(乱切り)

* じゃがいも … 1個(大きめの一口大)

* にんにく・しょうが … 各1片(みじん切り)

* カレールウ … 2〜3かけ(お好みの濃さで)

* サラダ油 … 大さじ1

* 水 … 500ml

* ごはん … 適量

* 牛乳(仕上げ用) … 大さじ1(まろやかさアップ)


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作り方

1. 下準備

鶏肉は軽く塩こしょうしておく。野菜類は食べやすく切る。


2. 炒める

鍋に油を熱し、にんにくとしょうがを炒め、香りが立ったら玉ねぎを加えてあめ色になるまで炒める。

次に鶏肉を加えて焼き色がつくまでしっかり炒める。


3. 煮込む

にんじん、じゃがいも、水を加え、弱火で15〜20分ほど煮込む。


4. ルウを溶かす

一度火を止めてルウを入れ、よく溶かす。

再び火をつけて、とろみがつくまで弱火で10分。

最後に牛乳を加えて軽く混ぜたら完成。


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カレーの香りが、ひとりの部屋に広がっていく。

お皿にこんもりとごはんを盛り、その横にとろりとしたカレーをたっぷり。

静かなダイニングに、ふっと笑みがこぼれる。


「やっぱり、カレーって、なんか落ち着くよね……」


一口、スプーンで口に運ぶ。

とろりとしたルウのコク、やさしい辛さ、ホロホロのじゃがいも。

そして、鶏肉のやわらかさ。


それだけで、今日はひとりでも、なんだか大丈夫な気がした。


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そのとき、LINEの通知音が鳴った。

日向からのメッセージ。


『ごめん、ちょっとだけ帰れそう!

お腹すいた……カレーある?』


楓は、思わずスプーンを止めた。

そして、笑った。


「もちろん。明日の分にするつもりだったけど……

今夜の分にしてあげるよ、特別に」


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味の感想(by 楓)

じっくり煮込んだ野菜と鶏肉の旨みが溶け込んだ、やさしい味のカレー。

牛乳のひとさじがふわっと全体を包んで、辛さのなかにほっとする甘みが残る。


ひとりでも作ってよかったって思える。

でも、誰かと食べられたら、やっぱりもっと嬉しい。


---


玄関の鍵が回る音がして、日向が「ただいま」と言う。

湯気の立つカレーが、ふたりをまた並ばせた。


そんな夜。

ひとりだったはずの夜が、もう少しだけ、あたたかくなる。


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次回は「ハンバーグと、胸の奥の“好き”」

言葉にしない気持ちが、ナイフとフォークの音に溶けていく。


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