第19話|スパゲッティと、思い出の場所

あの日から少しずつ季節が変わり、外の空気も少しずつ温かくなってきた。

今日は、ちょっとだけ懐かしい気持ちを味わいたくなって、日向が提案した。


「昔、よく作ったスパゲッティを作らない?」


楓は少し驚きながらも、うれしそうに頷いた。

「あの頃の、あの味?」

「うん、あの味」


あれはまだふたりが出会ってから少し経った頃、初めて一緒に作ったスパゲッティ。

その頃の記憶が、心の奥底にまだ残っている。


「懐かしいな、あの時の味」

「うん。あれから何回作っても、あの味に近づけないんだよね」


ふたりは台所に立ち、手順を確認しながら料理を始めた。


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今日のレシピ|昔ながらのトマトソーススパゲッティ


材料(2人分)

* スパゲッティ … 200g

* トマト(生または缶詰) … 3個(または1缶)

* ニンニク … 1片

* オリーブオイル … 大さじ2

* 塩 … 適量

* こしょう … 少々

* バジル … 適量(お好みで)

* パルメザンチーズ … 適量

* 砂糖 … 小さじ1(甘みを調整)

* 赤ワイン(お好みで) … 大さじ1(省略可)


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作り方

1. トマトを準備する

生のトマトを湯むきして、細かく刻む。

缶詰を使う場合はそのままでもOK。


2. ニンニクを炒める

フライパンにオリーブオイルを入れ、みじん切りにしたニンニクを弱火でじっくり炒める。

香りが立ってきたら、トマトを加えて混ぜる。


3. ソースを煮込む

トマトが崩れたら、塩・こしょう・砂糖で味を調え、赤ワインを加える。

中火で15〜20分ほど煮詰めていく。


4. スパゲッティを茹でる

塩を入れたお湯でスパゲッティをパッケージの指示通りに茹でる。


5. 盛り付け

茹で上がったスパゲッティにトマトソースをたっぷりとかけ、お好みでバジルやパルメザンチーズをふりかける。


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トマトのソースがフライパンでジュワっと煮立つ音が、少し懐かしく感じる。

日向は、昔作った時の記憶を辿るように、慎重にソースをかき混ぜながら言った。


「このソース、ほんとにおいしいんだよね」

「うん、あの頃はそれが特別だったなって思う」

「今食べても、やっぱりあの味がするよ」


スパゲッティを食べながら、ふたりは黙ってお互いを見つめた。

その瞬間、少しだけ過去の自分たちに戻ったような気がした。


「ねえ、これからもこうやって一緒にご飯作って食べられるかな?」

楓の言葉に、日向はちょっと笑って答える。


「もちろん、ずっとだよ」

「だよね」


ふたりの間に、静かな時間が流れた。

懐かしい味が、あたたかい記憶を呼び起こし、今の自分たちの未来に続いているような、そんな感覚が広がった。


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味の感想(by 楓)

トマトソースの酸味と甘さが、スパゲッティの麺に絡んで本当においしい。

ニンニクの香りが全体を引き締めて、まるで昔みたいに温かい気持ちになれる。


なんだか、ずっとこの味を忘れたくないと思ってしまう。

これからも一緒に食べたい、って、そんな気持ちになった。


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食べ終わった後、ふたりは台所に並んで片づけを始めた。

でも、何気ないその時間が、かけがえのないものだと感じる。


静かな夜の中で、次に進む勇気が少しずつ湧いてきた。


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次回は「カレーと、ひとりでいること」

スパイシーなカレーに込められた気持ち――


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