第10話|具だくさんミネストローネと、あなたの体温

赤いスープに込めた“だいじょうぶ”の気持ちを――



朝、いつもより静かなキッチン。

リビングのソファで丸まっている日向は、毛布に包まれたまま、少し熱っぽい顔でこちらを見た。


「ごめんね、なんか……風邪、引いたみたい」


楓はすぐに頷いて、何も言わず冷蔵庫を開けた。

そのまま、野菜室から次々に具材を取り出す。


「いいの。今日は、わたしがつくるから」


鍋の中に音がして、包丁のリズムが響く。

部屋の空気がゆっくりと、スープの湯気でやさしく満ちていった。


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今日のレシピ|具だくさんミネストローネ(看病ver.)


材料(2人分)

* 玉ねぎ … 1/2個(粗みじん)

* にんじん … 1/2本(5mm角)

* セロリ … 1/2本(5mm角)

* キャベツ … 2枚(ざく切り)

* じゃがいも … 1個(1cm角)

* ウインナー … 3〜4本(輪切り)

* トマト缶(カット) … 1/2缶

* 水 … 400ml

* コンソメ … 1個

* オリーブオイル … 大さじ1

* 塩・こしょう … 少々

* パセリ(あれば) … 少々


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作り方

1. 野菜の準備

全ての野菜を食べやすい大きさに切る。火が通りやすいよう、細かめに。


2. 炒める

鍋にオリーブオイルを熱し、玉ねぎ・にんじん・セロリを中火で炒める。玉ねぎが透明になるまでじっくり。


3. 煮込む

じゃがいも・キャベツ・ウインナーを加え、軽く炒めたらトマト缶と水を入れる。

コンソメも加えて、弱火で15分〜20分ほど、野菜が柔らかくなるまで煮込む。


4. 味を整える

塩・こしょうで味を整え、最後にパセリを散らす。


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「うわ……もう香りだけで治りそう」


「まだ熱あるんだから、ゆっくり食べてね」


スプーンを持つ手が少し震えて、楓がそっとそれを支えた。

それだけで、日向の顔がほんのり赤くなる。熱のせいじゃなくて。


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味の感想(by 日向)

くたくたに煮えたキャベツが甘い。ウインナーの旨味がしみてて、スープが優しすぎる。

にんじん、セロリ、じゃがいも――ぜんぶの野菜が、楓の気持ちみたいにやわらかい。


「……なんか、泣きそう」

わたしのためだけに煮込まれたスープに、体も、心も、ぽかぽかになった。


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その夜、毛布の中で手を握った。

小さな体温のやりとりに、ふたりは何も言わなかったけれど――

きっと、いちばん伝わっていた。


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次回は「焼きおにぎりと、朝日の約束」

少しずつ回復していく日向と、早起きした楓の朝。

焼けた醤油の香ばしさと、交わされる“ひとくち”の想い。


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