No.021 リズム隊 side-カズ/ニト

 1節 裏方


 俺と二斗さんはベースとドラム。それすなわち、バンドの心臓。

 バンドを支える心臓となるのが、ベーシストとドラマーなのだ。

 この2パートがズレると全てがずれて、バンドの音は瓦解する。ドラマーに至っては、“ドラマーの限界はバンドの限界”と言われる程だ。なのでこうして、俺と二斗さんは一緒に練習する。正直、二斗さんに限界があるようには見えないが。

「じゃあまたいつものコースで」

「了解」

 二斗さんのカウントでまた練習を始める。

 メトロノームを使って叩かれる正確な8ビート。それに合わせて、四分音符、八分音符、三連符、16分音符、三連符、八分音符、四分音符の順に上昇下降を繰り返す。基本的なリズム練習だ。これを曲練習の前に俺たちは必ずやる。こういう基礎練習は大事だ。

 それが終われば少しだけ個人練してまた合わせ、という感じ。

 二斗さんの方を見ると、細かいアクセントやゴーストノートの練習をしている。俺もスラップとか複雑なフレーズの練習を重ねていく。難しいが、やっぱり楽しいものだ。



 2節 昔から


 ドラムというパートは、他のパートに比べるとバカにされたりすることが多い。“叩くだけだから簡単そう”とかそういうもの。こっちとしては、そんな訳はあり得ないのだが。そういう奴には、難しいフレーズを数小節叩いた後「簡単ならできるよね?」で黙らせるというところまでが定番のルートだ。俺はそこそこドラムが上手いという自負があるから。

 その自負を失わないためにも今日もまたこうして練習する。

 練習は楽しいし苦痛ではない。むしろそうだったら今日までドラムなんて続けていない。元々は親にやらされているだけだったドラムが楽しくなったのはいつからだろうか?中学生くらいか。

 自分にとってかなり衝撃的な曲と出会ってからだったか。その曲は今でも大好きだし叩ける。多分そこからだな。

「そろそろ合わせませんか?」

「そうだな」

 思い出しも程々に、練習に戻ることにした。



 3節 曲合わせ


 最近END MEMORIESで練習しているのは割とテンポの速い曲だ。作曲者曰く、180くらいはあるとのこと。まだ楽器のみで歌詞はないので、今日の練習に彼女はおらず、家でずっと歌詞を書いているとのことだ。

 テンポが速い曲でずっと指弾きをするのは疲れるので、今日はピックを使う。

 ピック弾きは速いテンポの時はよく使う。ギターのように弾けるので、早いテンポに向いている。もちろん、ゆっくりなテンポの曲で使っても問題はないが。多分指弾きオンリーだと弾けない曲は割とある。ベーシストとしてそれでいいのかという感じはあるが、まあ別にミスだらけという訳でもないので別にいいだろう。

 30分くらい練習したら、そろそろ全体練だ。ボーカルはいないが。



 4節 背中


「そろそろみんなで合わせよー」

「了解〜」「わかった!」「おけー」

「ワン、ツー、スリー、フォー!」


 ——————————


 バンドでドラムをやってて一番楽しいのは、こうして合わせること。そして、みんなの背中が見えること。

 ステージでは後方に置かれるドラムは、全員の背中を見ることができる。そんな中で叩くのは、みんなを支えているという感じがして好きだ。

 それに、みんな割と音のノり方が違うのも面白い。ゆったりノったり、体を揺らしたりとか色々。ドラムは精々頭を振るくらいしかできないが。というかそれもパフォーマンスだったりするし、あんまりそういうことはしない気がする。そもそも自分でリズムやテンポを作っているし。

 全員の音を聴いていると、なんとも言えない心地よさがある。祐樹くんと月花ちゃんの貫くようなギター。和也のどっしりとしたベース。理紗の踊るようなキーボード。そして俺のドラム。楽しい。

 崩さないように、丁寧に叩いていく。フィルインを叩いたらすぐに鮮やかなギターソロ。その間。俺は16ビートで細かく刻み、月花ちゃんのソロを際立たせる。

 そんなことを考えながら、また叩いていく。

 あと1時間ピッタリは。

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