No.001 楽器中毒 side-ユキ
1節 ジャズマスター
昼の学校が終われば、家へ帰る。
そして夜がくる。ギターを構える。僕はいっつもこんな生活だ。
至って普通のギタリスト。
いや普通、普通なのか?
普通とはちょっとズレてるかもしれない。そんなことはどうでもいいが。
僕はギターが大好きだ。
子供の頃からずっと弾いているくらいには。
だからいっつも僕はギターを弾く生活しかしていない。
学校とか、ご飯とか、お風呂とか、睡眠とか、そういう必要不可欠な時間以外は大体ギターに充てている。一応、友達と連絡を取ったりTwitterを見たりとかもしてはいるが。
でもまあ、連絡を取ると言っても、大抵は
だから零を巻き込んで面白いことをしたいとは思っているが、それはまだ零には秘密だ。どんな反応をするか、そしてそれに応えてくれるかはわからない。
まあ、ギターを弾くとしよう。
僕は中学の頃に買ってもらった黒色のフェンダー・ジャズマスターをここ数年はずっと弾いている。
ピックを持って、弦を押さえて、掻き鳴らせば音が鳴る。
ただそれだけでも、難しくて奥深い。
最初はGコードとかで苦戦してた気がする。
結局下手くそなまんま16になったけど。
弾くジャンル変えようかな。
流行りの曲じゃなくてロック。
一応弾いてみた上げるために練習はしてるけど、最近流行ってるような曲はどれもキラキラしてるしリズムに全任せしたような曲ばっかであんまり好きじゃない。もちろん好きでハマるような曲も普通にあるが。
ギターが
僕も、零も。
というか、僕が音楽関係で関わる人はみんなそうな気がする。
類は友を呼ぶってやつだな。
2節 病
レイとしての活動を知っている
零が僕にレイとしての活動を教えてくれたのには理由がある。
僕が彼女の幼馴染だったり、僕のことを信頼してくれているからというもあるが、それだけではない。
僕も彼女と同じように病んでいるから。
だから時々お互いに相談したりしているし、定期的に連絡もしている。
この録音はどこがダメだ、とか、 ここのミックスどうすればいいかな、とか。まあ、音楽の事ばかりではないが。
大体たまにお互い非常に病む時期があるので、そういう時は互いに相談し合ったりすることもある。
そんな生活をずっと繰り返して、びっくりするくらい退屈な日々になった。
零と話したり色々するのが嫌という訳ではないが、変わり映えはしなくなってた。
リアルで会うことも数ヶ月はしていない。
今度久しぶりに会ってみるか。
3節 幼馴染
何日か経ったあと、久々に2人で会うことになった。
ショッピングモールで遊んで、カラオケで歌って、という感じで決まった。
そんなことを考えていれば、いつの間にか零がやってきた。
「やっほー」
「久々だな」
身なりは思ったよりマトモではあった。
グレーのパーカーに黒のショートパンツと黒いハイソックス、それに厚底のスニーカーだ。
それに、腹が立つことに元から顔はいいから見た目はいい。正直羨ましい、のだが、病んでるから当たり前っちゃ当たり前ではあるが、生気がものすごく抜けている。つまり、いかにも地雷系女子といった感じ。
地雷系やサブカル系は好きだし人の事は言えないので強く言うことはできないが、もう少しどうにかしてほしい。
今度また相談乗るか。
「んじゃどこ行く?楽器屋?」
「またマイク見るのか?」
「いやあケーブルがちょっとねー」
そんな会話をしながら適当に店を回りつつ、いつ話をしようか考えていた。
まあ解散する辺りでいいか。
—————————
「今日は入れてるのか?」
「ンー、10だけ」
「10ならそこまでじゃないか」
「そうだねぇ」
カラオケに入って零が一曲歌った辺りで気づいた。
入れている。
この時の歌声は本当に聴き入ってしまう。
まさに天性の才能といった言葉が相応しい。
もっとも、これはODをした時の歌声であるが。
普通の声も力が抜けていたり大分抑えてるように見えるが若干ふらついているのでその点も分かりやすい。
普通の歌声は、学校の授業以来聴いたことがない。
自信がなさそうな声だった。か弱くて、今にも消えそうな声だった。
レイの活動を始めてからは、まるで変わった。
零は本来の声で歌えるようになりたいと言っていたが、その勇気はずっと出ないままでいる。
彼女の心身が心配な僕としては、普通の歌声に戻ってほしい。
そのための案を、今日話そうと思っているのだ。
「なあ、零」
「どしたの」
正直、かなり大きいことだ、否定されてもおかしくないが、僕は言う。
「僕とバンドを組んでくれないか?」
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