異世界に召喚され続けているが、俺は日常を捨てないし無双もしない

遠近普遍

序章


 ん?

 おい、やめろ。

 俺の事は放っておいてくれ。俺のことを物語るな。俺はただの会社員で、何の面白みもない普通の商社の経理課の係長補佐でしかない(役職手当千五十円)。係長補佐というのは、要するに平社員だ。ただ年数を重ねたから会社も仕方なく役職紛いの身分にしただけのことだ。

 特技は領収書の分類速度が課内で三番目くらい。特技と言いつつかなり微妙だ。これまでもこれからも、社内で重要な位置を占める事は無い。少々鬱気味だが、これは元からの性格だ。社畜と言うほど会社に貢献もしていないし、ブラック企業だなどと公言したら今度は俺が訴えられる。

 やや脂肪肝。太ってないのに。要経過観察連続二回。たまに散歩をしているが、痩せるに追いつく食欲なし。

 何の取り柄も無い。取り立てて賞罰も無い。犯罪歴もない。・・・いや、一時不停止で罰金は払ったな。とはいえ概ね可も不可もなし。

 特にオタクでもない。ゲームもたまにしかやらないし、上手くもない。課金もしない。

 たまに息抜きに漫画は読むが、ONEPIECEは途中で読むのを諦めた。ガンダムはまだ最新作が放送され続けている事に驚いたばかりだ。

  彼女はいないが、それで世を嘆くほど女好きでもない。かといってそれで不自由するほどでもない。

 見た目も普通の41歳で、太っても痩せてもいない。少し白髪交じりで禿げない遺伝を祖父ちゃんに感謝している程度の男だ。両親は健在だ。特に仲は悪くないが、この歳で実家にいる訳でもない。

 もういい。俺の事を注目するな。俺の事は書くな。

 俺は取るに足らないそこらにいる普通のサラリーマンでしか無いのだ。



 

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