第18話 目障りよ! ※デルフィーナ

 ――これは謀反よ。


 わたくしは、大臣たちの動きを監視していた。

 途中で使者を殺すより、ザカリア様の城に入るのを見届けてから、ルドヴィク様に報告するほうがいいと判断した。

 案の定、使者はザカリア様の城へ入った。


「ザカリア様をルドヴィク様やロゼッテの代わりに、王位につけようと、大臣たちが謀反をたくらんでいますわ」


 わたくしの報告に、ルドヴィク様が不快な顔をした。

 国王陛下に不満があるから、謀反が起きる。

 つまり、ルドヴィク様のせいだというのに、怖い顔で睨み付けた。

 まるで、わたくしのせいだというように!


「そんなもの起きるわけがない」


 ルドヴィク様は、自分の統治能力に自信を持っている。

 けれど、評判がよかったのは過去のこと。

 今のルドヴィク様は、まったく民から支持されていない――ロゼッテもそう。

 だから、今のうちに邪魔なザカリア様を片付けておかねばならない。

 

「大臣がザカリア様に使者を送った理由が気になりますわ」


 それとなく、不信感を煽ってみる。

 けれど――


「ご機嫌伺いだろう」


 のんきなルドヴィク様の言葉に、我慢できなくなり、声を張り上げてしまった。

 

「そんなわけなくてよっ! 大臣の一人が捕らえられ、一族を奴隷にされたのよ!? 大臣たちの報復に決まってるわ!」

「報復?」


 ルドヴィク様は大臣たちが裏切ると思っていないようだった。

 何度でも言わないと、ルドヴィク様には伝わらないらしい。


「ザカリア様を王にしようと目論んでいますのよ!」

「ザカリアを?」

「ロゼッテが女王になるのが決定いしているのに、これは謀反ではなくて!?」

「わたし、女王様になれないの~?」


 ロゼッテ不満そうに口をとがらせた。


「ルドヴィク様。ザカリア様は領地を広げたいと考えているかもしれませんわ。いつ、裏切るかわからない野心家な男だと、噂でお聞きしました(そんな噂はないけれど)」


 さすがのルドヴィク様も、これだけ言われるとその気になったのか、兵士を呼ぶ。


「調べてこい」

「調べて終わりなんて、甘いですわ」

「しかし……」


 ルドヴィク様はいつもこう。

 セレーネの時もそうだった。

 最後まで追わず、死を見届けることもなく、逃がした。

 

 ――今回ばかりは、そうはさせない。


 ロゼッテの王位がかかっているのだ。


「謀反の疑いがあるようなら、ザカリア王弟殿下を捕らえなさい!」


 再度、兵士に命じた。


「疑いで捕らえるのか? もし、勘違いだったら、ザカリアになんと言い訳するつもりだ」


 ルドヴィク様は嫌そうな顔をしたけど、相手はザカリア様。

 ここまでやらなければ、安心できない。


「なんとでも言えるでしょ。間違いでしたとでも、言っておけばいいのよ」


 ルドヴィク様はため息をつき、面倒そうな顔をして、わたくしとロゼッテから離れていった。

 最近、ずっとこんな調子だった。


「ねえ、ロゼッテ。お父様がなんて思っていたかわかるかしら?」

「ううん。わかんな~い」


 ロゼッテの力は不安定で、心を読める時と読めない時がある。

 ルドヴィク様の本心が知りたいのに、なんて役に立たないのかしら。


「ロゼッテ。お父様の心をちゃんと読むのよ! 特にセレーネの名前が出たら、すぐに教えなさい」

「う~ん……わかったぁ」

「ロゼッテのために、お母様は頑張っているんだから、ロゼッテも協力するのよ?」


 わかっているのか、わかっていないのか、ロゼッテは首を縦に振った。


 ――ザカリア王弟殿下。七年前も、わたくしを邪魔した目障りな男。

 

 七年前、セレーネが行方不明になった時も王宮にいた。

 逃がしたのは、あの男に決まってる。

 

「ふん。でも、ここで終わりよ。謀反の罪を着せて、領地を没収してやるわ」


 ザカリア様の領地は魅力的だった。

 わたくしに貢がせていた貴族たちも、最近では財産を隠すようになり、国王陛下に呼ばれない限り、王宮に寄り付かなくなった。 

 あの豊かな領地の収入も欲しい――


「ロゼッテ。ザカリア様を捕らえ、ここに連れて来られたら、あなたを殺そうとしていると言うのよ?」

「どうして?」

「ザカリア様は、あなたを女王にさせたくないと思ってる悪い人間だからよ」

「えー。こわーい」

「そう、とっても怖い人」


 ロゼッテは怯えていたけど、これくらい言っておかないと、ザカリア様に勝てない。


「セレーネの居場所も知っているかもしれないし、ちょうどいいわ」


 領地を奪い、セレーネの居場所を吐かせて、奴隷になるか、死ぬか、選ばせてあげるわ。

 これで、わたくしに逆らえる者はいなくなる。

 自分の勝利を確信していた。

  

 ――七年ぶりに再会する日が近づいていた。

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