冬のヒマワリ
@kaede_88
第1話
冬は嫌いだ。
冬は街中が無駄にキラキラしすぎている。
恋人たちの距離は夏よりも近い。
恋人がいないからといって僻んでいるわけではない。
友達は数人いるが、一人でいるのが好きな自分にとってはそんな冬は眩しすぎて自分だけ暗闇に取り残されたような気になるから、嫌いだ。
今日は金曜日。
仕事の帰り道、車の中は暖房がよく効いて暖かい。
コンビニに寄ってビールとおでんを買った。
アパートの駐車場に車を停め、アパートの階段を上る。
玄関を開けて部屋の電気を付ける。
「ただいま」
もちろん返事は無い。
俺の名前は小林健太。
35歳、独身、一人暮らし。
我ながらどこにでも居そうな名前、どこにでも居そうな寂しいやつ。
7年前の冬、俺は失恋をした。
同い年の女の子と4年付き合って婚約した。
が、彼女は他の男の子どもを妊娠した。
飲みの場で知り合った男との子どもらしく、その男とちゃんと付き合いたいからと言ってフラれた。
4年間ずっと一緒にいたのに、たった数日で取られたのが悔しかったし、ショックだった。
それから冬が来ると自分だけ暗闇に閉じ込められたようなあの日を思い出して辛くなる。
それからは彼女を忘れるために仕事に全てを注ぎ込んだ。
そうしているうちに気付けば7年が経っていた。
音のない部屋に俺の足音だけが鳴る。
買ってきたおでんとビールをテーブルに置いてスマホを手に取る。
ラインを開くと仕事のラインが数件入っていて返事をした後、インスタグラムを開いて友達のストーリーを何となく見る。
帰った直後の日課だ。
「お、翔太の子ども大きくなったな」
「ゆうやはまたパチンコか」
「りほちゃんはまた彼氏の事で病んでるな」
インスタはいい。
わざわざ個人的に連絡をしなくてもその人の近況が分かったり、生存確認が出来たりする。
俺は投稿はしたことはなく、見るだけだ。
というより、投稿することがない。
「あれ、ココ今日暇なのか」
俺の家から徒歩10分のところにBarCOCOというバーがある。
そこのアカウントで「暇〜」というストーリーが上がっていた。
「明日土曜日だし、飲みいくか」
着替えだけ済ませて俺は家を出た。
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