第3話:男子高校生、決意する①
最初の授業以来、僕はすっかり問題児になってやった。
これでも前世は大人たちの望む通り、真面目に生きてきたという自負があるし、どちらかと言えば何かにつけて反抗するような奴の気が知れない方だったが、やってみれば案外悪くはない。
そもそもこれは僕じゃなくて世界の方が悪いのだ。
着心地の悪いドレスは着せられた傍から脱いでやるし、いかにも育ちの良いお嬢様風のロングヘアは、初日の授業を受けたその日にガタガタに切ってやった。
酷い髪型の第一発見者になった専属メイドのアンは悲鳴を上げていたが、それですら今は爽快だ。
不愉快極まりないメアリーの授業の前には決まって行方不明になったし、ようやく発見された後にもとことん準備を妨害してやって、頑なに授業を中止に追い込んでいた。
そんな僕の暴れっぷりはどうやら母親にもしっかり伝わっているらしく、食事の時など顔を合わせる度に僕の顔色を伺うようにしているが、直接的なことは何も言ってこない。
父親の方にはまだ話がいっていないのか、それとも子供の教育については母親の仕事だと割り切っているのか、今のところ変わった様子は見られないが、とりあえず母親が動揺しているのであれば幸先が良い。
この調子でさっさと僕を厄介者認定してくれれば良いのだ。
そうしてメアリーの授業に出なくなってから数日が過ぎ、ついにあの先生が断念したらしい。
乳母のサラから、次回から他の先生が教えに来ると知らされた。
しかも既に話がついていたはずの礼儀作法教育以外の先生も、そのままでは対応できないということになったのだろうか、全てその新しい先生に任せることになったようだ。
つまり僕は無事問題児への第一歩を踏み出したのである。
サラはその先生のことを確か色々と説明していた気がするが、そんなことより僕の頭の中は「勝利」へと着実に近づいている喜びで一杯だったから、何を言っていたのかはほとんど覚えていない。
そもそも上手くいけば一度も顔を見ることすらないかもしれない人間の情報なんて、何の意味がある?
新しい先生には悪いが、先生が変わったところで、僕のやることはこれからも変わらない。
またその先生が匙を投げるまで、授業をボイコットし続けるだけだ。
他の先生じゃ対応できなかった子供を任されるくらいだから、もしかすると問題児への対応に自信があるのかもしれないが、どれだけ粘られたとしても貴族の嫁になるための教育なんて絶対に受けてやる気はない。
サラの話を聞いてそんな決意を固めた翌日、早速新人先生の授業が始まった。
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