第20話「夏の風物詩、仙台七夕まつりの記憶と現在」



仙台の夏といえば、やっぱり「仙台七夕まつり」だ。

毎年8月6日から8日の3日間、街中を色鮮やかな七夕飾りが彩り、通りを歩くだけで気持ちが浮き立つ。風に揺れる吹き流しやくす玉、短冊…まるで夢の中に迷い込んだような気分になる。


その前夜、8月5日に行われる「仙台七夕花火祭」もおなじみだ。仙台市中心部から打ち上げられる約16,000発の花火は、それはそれは見事。だけど、正直に言うと、街はもう“激混み”。

若い頃なら人混みにも負けず花火を観に行っていたけど、今はもう無理…。

浴衣姿のカップルや友人同士をすり抜けながら、「あ〜、浴衣見るのも夏祭りの醍醐味だな」と思いつつ、私はさっさと電車に乗って帰る。


家に帰って、猫のくうと並んでソファに座り、テレビ中継で花火を見るのがここ数年の定番スタイル。

涼しい部屋で、お菓子を片手に眺める花火も、なかなか悪くない。

ちなみに私は「しだれ柳」の花火が好き。金色の光が、ふわっと垂れて消えていくあの感じ、なんともいえず美しい。福島で見たときのあの花火は今でも忘れられない。


…って、今は仙台の話だった。


この華やかな七夕まつりにも、じつはけっこう波乱の歴史がある。

昔は家庭でこぢんまりと祝う行事だったのが、時代の変化や戦争、経済の低迷で一時は衰退。それが、昭和初期の商店街の工夫で再び盛り上がり、戦後の復興とともに“街ぐるみの大イベント”としてよみがえった。


1970年代には「花火」や「パレード」も加わって、まさに一大イベントへ。最近はまた飾り中心の静かな雰囲気に戻ってきているけれど、それもまた味わい深い。


コロナで中止になった年もあったけれど、それでも街角のどこかに七夕飾りは揺れていた。そんな風に、少しずつ姿を変えながら、仙台の夏を見守り続けているこのお祭り。


もう人混みに飛び込むことはできないけれど、吹き流しが風に揺れるあの空気を吸い込むと、

「ああ、また夏が来たな」って思える。


それが、私にとっての仙台七夕まつりだ。

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