第11話 船の構造
「さて、彼がいるのは隣の部屋だ」
「結構、広い」
「船にとって重要な部品はほとんど下のコンテナにあるからね。上の2つは広々使えるのさ」
ディードリッヒの言葉を受けて、エルマは潜水艇の構造を頭の中に思い描いた。
前にも確認した通り、この潜水艇は三つのコンテナからなっている。
大きなコンテナ1つの上に、一回り小さいコンテナ2つ。
この分だと、その2つがそれぞれ部屋になっているらしい。
となるとここはコンテナ同士の連結部なのだろう。
それがそのまま通路になっているというわけだ。
ディードリッヒが向かっているのは、部屋を出てすぐ右手側だった。
正面と、右斜め前方にもドアが見えたが、左手側にも壁から突き出した何かがある。
ハンドル付きで、随分と重厚感のある……これも扉かなにかだろうか?
(初めて見るものばっかり……)
目をやると、ディードリッヒが
どうやら、船体上部のコンテナは、四部屋に分かれているらしい。
コンテナ二つにそれぞれ二部屋、だから四部屋。
エルマが船の構造を理解すると同時に、扉が開かれる。
「もががごがあああ!」
「おっと」
「ッ!?」
部屋内から響く濁った悲鳴。
しまったという様子で口元を抑えるディードリッヒ。
息を詰まらせるエルマ。
もはや人の言葉ではない声は、なにやら切羽詰まった様子でもあったが、同時にそれは、エルマにとって聞き覚えのあるものでもあった。
「今の声、クラウス!?」
「ああちょっと待った方が……ああ」
脳内で一致する声色に目を見開くエルマ。
ディードリッヒの静止も虚しく、彼女はぬるりと下半身を走らせて部屋の入り口を見やる。
「
「大人しく全部飲みなさい!」
「ごぼごぼごばぁ!」
部屋の中には、先程みた赤茶色のクラゲヘアに押さえつけられ、口に巨大な容器の開口部をねじ込まれているクラウスの姿があった。
彼は、先程エルマが寝かされていたものとは違う、タオルケット付きのキチンとしたベッドを存分に乱して、白眼にも近い涙目で何かを訴えかけている。
開口部からは何らかの液体を流し込まれているようで、彼が暴れるたびにそれが散っては、ベッドの上やら床やらにこぼれ散らしている。
「……どういう状況?」
理解に苦しむ光景に困惑の声を上げるエルマ。
最初の悲鳴を聞いた時には、反射的に助けなければと行動に出たエルマだったが、この状況では流石に困惑が勝った。
「ん? 船長……ってメロウ!?」
「やあロミー。さっきぶり」
続いて驚愕に目を見開いたのはロミーだった。
彼女はクラウスの首に手をまわし、開口部と口元をガッチリと固定した上で、首だけで振り向いてこちらへ叫ぶ。
「何をのんきに! というかなんで拘束解いてるんですか!!」
「医療目的って言っただろう?」
「だからって……!」
ディードリッヒの返答を大声で糾弾しようとしたのか、瞳孔まで見開いて叫ぶロミー。
しかし、言葉を続けている中で、より一層困惑するエルマに気が付いたのか、その覇気を消沈させていく。
「あの……」
「……説明は任せます」
「任された」
二人の間に奇妙な沈黙が流れた直後、部屋の中へ踏み入ったディードリッヒが、エルマの前に顔を出した。
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