僕の心がみんなに筒抜けてると思うんですけど

柳谷「こんばんは」

相談者「こんばんは」

柳谷「お名前年齢お願いします」

相談者「高林、30歳です……」



柳谷「ありがとうございます。本日は、ひとの心と量子情報、そして“聞かれている気がする何か”について、

現代物理と神経科学の橋渡しをする専門家、**伊集院 感音(いじゅういん・かんのん)**先生をお招きしています」



伊集院「こんばんは。“誰かに見られている気がする”は、だいたいカメラじゃなくて自己認知です」



柳谷「深いこと言い始めてますねぇ……。では高林さん、ご相談をどうぞ」



相談者「僕の……心が……みんなに筒抜けてると思うんです……

たとえば、電車に乗ってると……“今こいつウンコ我慢してる”とか……思われてる気がして……」



(静かな間)



柳谷「それは……実際に我慢してませんか?」



相談者「してます……」



伊集院「まず、“自分の考えが外に漏れている気がする”というのは、

専門的には“思考伝播感”と呼ばれる心理状態で、自他境界の感覚が一時的にあいまいになっている状態です」



柳谷「つまり、“心の個室の壁がベニヤ板”みたいになってるってことですね」



伊集院「ええ。特に脳が疲弊していたり、対人緊張が続くと、

“他人に思考を読まれている”という感覚が錯覚として生じやすくなります。

この時、“読まれる”より“漏れてる”と感じる方が強いのも特徴です」



相談者「じゃあ……実際には読まれてない……?」



伊集院「読めるわけがありません。もし人の心を電車内で読めるなら、

満員電車は羞恥と殺意で即時爆発しています」



柳谷「つまり、全員が“自分の思考は見られてないけど他人の思考はヤバそう”と思ってる世界なんですね」



伊集院「ええ。安心してください。誰もあなたの“妄想オナニー回数”なんて数えてません」



相談者「……は、はい……」



伊集院「それでも苦しい時は、思考の“視線”を外に向けてみてください。

“読まれる”と感じた瞬間に、“こいつも読まれてるかもな”と思うと、急にバランスが取れます」



柳谷「なるほど。“全員負け戦だと思えば、怖くない”ってやつですね」



伊集院「そのとおり。心の防壁は、まず“孤独ではない”というところから再建されます」



柳谷「ということで、今夜も1ミリだけ前に進みました。

子供は寝なさい、大人も寝なさい……起きてるのは、今夜も――頭の中で騒ぎ続ける“誰か”だけ……」

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