夕暮家の血筋

「とても素敵な花ですね」

 毎日同じ夢を見ている。

「ありがとうございます。ですが、この花少し色が濃くて…」

 夢だとわかるのは、それほどまでに同じ夢を見ているから。

「そうですか?素敵な色じゃないですか。この――――」


 ピピピッと目覚ましが鳴る。

 いつも同じ夢で、同じところで目が覚める。花を見ている人が誰なのか、なんの花を見ているのか分からず終わる。

 夢なんてものは起きてしまえば忘れていくものなんだから気にしなければいいのだが、こうも毎日同じ夢を見続けると気になってしまうのは仕方ないだろう。

「おい茜。遅刻するぞ、早く起きろ。置いてくぞ」

 紫花しかに呼ばれ、俺は慌てて学校に行く支度をする。

「遅いよ、茜」

 呆れ笑いをしながら夕暮が待っている。紫花は隣で無愛想に携帯をいじる。

「昨日寝れなかったんだよ!悪いなー」

「思ってねーだろ絶対」

 中身のない会話をしながら三人で学校に向かう。

 俺と紫花は夕暮の家に一緒に住んでいる。身寄りのなかった俺達を二つ返事で養ってくれる家庭なのだから、相当なお金持ちだろうと踏んでいる。実際そうなのだろうが。

 

 代々、夕暮の一族には不思議な血が流れていたと言う。

 自分は夕暮の人間でないので詳しくは知らないが、所謂「超能力」が使えるらしい。

 今の夕暮家トップである「夕暮宇宙」は、目が合った人を自分の思うように人を操れるらしい。歴代の夕暮家の中でも最も強い力だと周りは恐れ、崇め、敬った。

 宇宙さんはその力を使い、企業のトップに登り詰め、自分のやりたいように仕事をする。とんでもない人だ。

 俺と紫花は夕暮家に引き取られた時、宇宙さんに一つの頼み事をされた。

「世界を消せ」

 と。目を見て。しっかりと。

 理由は聞いてない。でも俺達は断らなかった。宇宙さんの能力もあっただろうが、身寄りのない俺達を引き取ってくれた命の恩人なのだから。親ガモに着いていく子ガモのように、宇宙さんの命令は当たり前に遂行すべきだと思ったのだ。

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