明治が始まって約十年。
盲目の語り部の少女と、不器用な薩摩隼人の邏卒(らそつ)。
惹かれ合う二人の運命は、司法卿・江藤新平との出会いによって、静かに、だが抗いようもなく歴史の奔流へと巻き込まれていく。
士族の失望と維新の矛盾が臨界点に達し、不穏な影が江藤を、そして日本を覆う。
ついに勃発する「佐賀の乱」、そして未曾有の激戦「西南戦争」。
江藤新平、木戸孝允、そして西郷隆盛。
英雄たちが己を歴史から消し去ることで果たそうとした「最後の使命」とは何だったのか。
戦火の中、二人の恋情は運命の「田原坂」へと向かう――。
歴史そのものが意志を持って時代を終わらせようとするかのような、激動の明治初期。
市井に生きる二人の純愛を描き切った、著者渾身の最高傑作です。