Ep52:試練の先に見えた絆
学校が休みの土曜日。朝から強い日差しが差し込み、もうすぐ夏本番が迫っていた。
その日の午後、シュウ、タクミ、リントの3人は、進展のない桜の木の謎を解決するため、高校生探偵・波崎湊の自宅を訪ねた。残りのメンバー(ハル、ユウキ)は習い事で合流できず、3人で湊に最新の状況を報告するとのこと。
湊の家に着くと、シュウがドアをノックし、眼鏡を光らせた湊が迎え入れた。部屋は本や書類で溢れ、調査の痕跡が散乱していた。
シュウが早速切り出した。
「湊兄さん、進捗報告だよ。桜の木の調査、結局何も見つからなかった。脅迫手紙のヒントもつかめないままだ。」
タクミがシュウに寄りかかり、補足した。
「シュウと一緒に頑張ったけど、何も出てこないよ。お兄さん、どうしよう 。」
リントがメガネを直し、冷静に続けた。
「お兄さん、僕も校長室の記録を調べ尽くしたけど、桜の木の植樹に関する手がかりはなし。タイプライターの出所も不明です。」
湊がノートを手に取り、ため息をついた。
「シュウ、タクミ、リント…。正直、僕も手がかりがつかめないでいる。タイプライターの文字分析も、歴史調査も行き詰まってる。申し訳ないが、もう少し時間が欲しい。」
シュウが眉を寄せ、焦りを隠せなかった。
「湊兄さん、月末の運動会までになにかヒントでもあればと思ったのですが。」
タクミがシュウの手を握り、幼い声で励ました。
「シュウ、大丈夫だよ。お兄さんも頑張ってくれるって。」
湊が眼鏡を直し、決意を込めた。
「分かった。月末までにもう一度全力を尽くす。君たちは運動会を楽しんでくれ。何かあればすぐ連絡する。」
3人は湊の家を後にし、帰路についた。
シュウはタクミの手を握り返しながら考えを巡らせた。
「湊兄さんが手詰まりか…。タクミ、頼りにしてるよ。」
タクミが笑顔で答えた。
「シュウ、僕もシュウと一緒なら大丈夫だよ。」
リントが静かに頷き、言った。
「シュウ、タクミ、僕も協力する。お兄さんの助けを待とう。」
3人はそれぞれ家路に戻り、運動会の準備に備えた。
そして、月末の日曜日、星見小学校では運動会が開催された。
校庭はカラフルなテントと観客で埋め尽くされ、子供たちの笑い声と歓声が響き渡っていた。 事件に繋がるヒントはつかめなかったが、純粋に競技を楽しむ一日となった。
シュウとタクミは、リレー競技の準備で一緒に準備体操をしていた。
シュウがタクミの肩に軽く手を置き、囁くように言った。
「タクミ、今日のリレー、勝つぞ。君のスピード、頼りにしてるよ。」
タクミがシュウに寄りかかり、頬を赤らめて答えた。
「シュウ、嬉しい…。シュウと一緒なら、絶対勝てるって。僕もシュウのこと大好きだよ。」
2人は互いに微笑み合い、肩を寄せ合って準備を進めた。
観客席からはリナが遠くから見つめていたが、複雑な表情を浮かべていた。 リレー開始の合図が鳴り、シュウがバトンをタクミに渡す瞬間、2人は一瞬手を重ね、視線を絡ませた。
シュウがタクミの耳元で囁いた。
「タクミ、頑張れ。あとは頼む。」
タクミが照れ笑いを浮かべ、走り出した。 その姿に観客が歓声を上げ、シュウは胸を熱くして見守った。
リナは遠くでその様子を見ながら、昔の記憶が蘇った。
「シュウとタクミ…。やっぱりあの頃と同じだ。イチャイチャが原因で私たちが辞めたのに…。でも、今日は見過ごそう。」
一方、ケンタとカナエは応援団として参加し、元気よく太鼓を叩いていた。 カナエがケンタに声をかけた。
「ケンタ、頑張って! みんな楽しそうね。」
ケンタが笑顔で答えた。
「カナエ、うん! シュウとタクミ、ちょっと目立ってるけど、いい雰囲気だな。」
障害物競走では、リントが先頭を走り、観客を沸かせた。
その後、シュウとタクミはゴール近くで再び寄り添い、互いの手を握って笑い合った。
その様子に、リナは決意を新たにした。
「私、シュウに話さなきゃ。星見探偵団を救うため、キッズの傘下に入るしかないかも…。過去は過去として受け入れよう。」
何事もなく運動会は終わった。
シュウとタクミはハグを交わし、チームの絆を深めた。 リナの視線は鋭さを増し、未来への一歩を踏み出す準備を始めていた。
その夜、シュウは自宅で窓の外を見つめていた。 運動会の興奮が冷めやらぬ中、リナの表情が頭をよぎった。
「リナ、また何か企んでるな。星見探偵団を救うって言ってたけど…。傘下に入れる話、前向きに考えよう。昔のわだかまりも解消できるさ。」
シュウはノートに新たな計画を書き込み、湊の連絡とリナの次の行動を待つことにした。 桜の花びらが舞う中、星見キッズと星見探偵団の新たな関係が始まろうとしていた。
(Ep52 完)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます