Ep36:校庭の異変
3月上旬、星見小学校は春の訪れを感じさせる穏やかな日々を迎えていた。星見キッズは、2月下旬の地下室調査で星見計画の真相に迫り、野村慎二が次の犯人であることを突き止めていた。
チームの絆は徐々に回復しつつあり、シュウとタクミの距離は近づいたままだったが、バランスを取る努力が続いていた。
朝、教室は春の陽光に照らされ、生徒たちが春休み前でソワソワしてた。
シュウはノートを手に星見計画の記録を確認していたが、心は平穏な日常に少し安堵していた。タクミが隣に座り、笑顔で声をかけた。
「シュウ、今日の理科、楽しそう! 一緒に実験しようね」
「うん、タクミ…。君と一緒なら、なんでも楽しいよ」シュウはタクミの笑顔に心が温まりつつ、抑えきれぬ感情に葛藤した。
カナエがリナとスケッチの話をしながら、シュウたちを見ていた。
「シュウとタクミ、また仲いいね…。私たちももっと一緒にいたいな」
リナがスケッチブックを手に頷いた。
「うん…。星見キッズ、5人で…」
ケンタは教室の隅でサッカーボールを手に、クラスの男子と笑い合っていた。
シュウが近づき、声をかけた。
「ケンタ、理科の実験、一緒にやろうよ」
「うん、シュウ! 実験、楽しそうだね!」ケンタの明るい笑顔に、シュウは安心感を覚えた。
3時間目の理科の授業が始まった。
田中先生が教室の前で実験の準備をしながら説明した。
「今日は磁石の実験をします。グループに分かれて、磁石が引き合う力と反発する力を調べましょう」
シュウ、タクミ、ケンタが同じグループになり、磁石を使って実験を始めた。
タクミが磁石を手に持つ。
「シュウ、磁石って不思議だね。くっつくよ!」
「うん、タクミ…。引き合う力だね。面白い…」シュウが微笑むと、ケンタが磁石を反発させながら笑った。
「シュウ、反発するのも楽しい! 」
カナエとリナは別のグループで実験しながら、シュウたちを見ていた。
カナエが呟いた。
「シュウ、楽しそう…。私たちも星見キッズとして、もっと関わりたいね」
リナがスケッチブックに磁石の動きを描きながら頷いた。
「うん…。」
昼休み、クラスの男子たちで鬼ごっこが始まった。
校庭に男子生徒が集まり、シュウ、タクミ、ケンタも参加した。
タクミが鬼になり、シュウを追いかけた。
「シュウ、捕まえるよ!」
「タクミ、捕まえられるならね!」シュウが笑いながら走ると、ケンタが横からタクミを援護した。
「タクミ、シュウを捕まえるぞ! 負けない!」校庭は笑い声に包まれ、男子たちは楽しそうに走り回った。
カナエとリナは校庭のベンチでスケッチを続けながら、男子たちの様子を見ていた。
「みんな、楽しそうね…。鬼ごっこ、私たちも混ざろうかな」カナエが笑うと、リナがスケッチを手に微笑んだ。
「うん…。スケッチしてから、私も…」
鬼ごっこが終わり、男子たちが休憩していると、校庭の隅で異変が起きた。生徒たちがざわつき、教師が慌てて集まった。シュウが立ち上がり、状況を確認した。
「何だ…? みんな、行ってみよう」
校庭の隅に近づくと、体育倉庫のドアが壊され、中の用具が散乱しているのが見えた。田中先生が説明した。
「誰かが倉庫に侵入したみたい。バットやボールが壊されてる…。悪戯だと思うけど、犯人を探さないと」
シュウがノートを取り出し、観察を始めた。
「壊され方、わざとっぽい…。星見計画とは関係ないかもしれないけど、気になるな」
タクミが不安そうに言った。
「シュウ、怖いよ…。誰かがやったんだ…」
カナエが冷静に提案した。
「シュウ、証拠を探してみよう。足跡とか、何か手がかりがあるかも」
リナがスケッチブックを取り出し、現場をスケッチした。
「うん…。壊れたバット、描いておくよ。形が変だ…」
ケンタが倉庫の中を覗き込み、呟いた。
「シュウ、僕、探してみる…。何かあるかも」
シュウはケンタの提案に頷き、チームで調査を始めた。
雪が溶けた地面に、靴の跡が残っていた。シュウが懐中電灯で照らすと、跡が複数の方向に分かれていた。
「足跡がいくつもある…。複数人じゃない。誰かがわざと混乱させようとしたのか…」
カナエが足跡を指さし、記録した。
「シュウ、これは計画的だね。星見計画とは別かも…」
タクミがタブレットで写真を撮りながら言った。
「シュウ、足跡のサイズ、似てるよ。同じ人じゃない?」
リナがスケッチを続け、気づいた。
「うん…。足跡、全部同じ靴底のパターン…。一人がやった証拠かも…」
ケンタが倉庫の奥を調べ、突然立ち止まった。
「シュウ…。ここにメモが…。『シュウ、見てろよ』って…」
シュウがメモを受け取り、眉をひそめた。
「これは…。誰かが僕を挑発してる。星見計画と関係あるのか…?」
田中先生が近づき、メモを見た。
「これは…。君を狙った悪戯かもしれない。警察沙汰にはしないけど、犯人を見つけるよ。協力してくれる?」
シュウが決意を込めて言った。
「はい、先生。僕たちで真相を追います。みんなを守るために…」
タクミがシュウの手を握った。
「シュウ、僕、そばにいるよ…。一緒に解決しよう」
カナエが頷いた。
「シュウ、慎重にね。私たちも協力するよ」
ケンタが笑顔で言った。
「うん、シュウ! 星見キッズ、負けない!」
リナがスケッチを手に微笑んだ。
「うん…。証拠、スケッチに残したよ…」
放課後、星見キッズは教室で話し合った。
シュウがノートに記録しながら、考えをまとめた。
「倉庫の破壊…。『見てろよ』ってメッセージ。星見計画とは別かもしれないけど、僕を狙ってるのは確かだ」
タクミが不安そうに言った。
「シュウ、誰がやったんだろう…。怖いよ…」
カナエが冷静に分析した。
「シュウ、足跡が一人のものなら、内部の犯行の可能性もある。クラスメートとか…」
リナがスケッチを見ながら呟いた。
「うん…。靴底のパターン、どこかで見た気がする…」
ケンタが少し黙り込んだが、笑顔を取り繕った。
「シュウ、僕、調べるの手伝うよ」
シュウはケンタの言葉に感謝しつつ、疑問を抱いた。
「ケンタ、ありがとう…。でも、誰かが僕を試してる感じがするな…」
その夜、シュウは自宅でノートを見直していた。足跡のスケッチ、メモの内容が頭から離れなかった。
「一人の犯行…。クラスの中か…。野村慎二の仕業じゃないなら、誰だ…?」
シュウが呟いた瞬間、窓の外で影が動く気配がした。懐中電灯を向けると、足跡だけが残り、影は消えていた。「…! また…。誰かが近くに…」シュウはノートを握りしめ、星見キッズを守る決意を新たにした。校庭の異変は、静かに次の危機を予感させていた。
(Ep36 完)
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