Ep35:地下室の闇


2月下旬、星見小学校は3学期の終盤を迎えていた。校庭の雪が溶け始め、春の気配が漂い始めていたが、まだ冷たい風が吹き抜ける日々が続いていた。星見キッズは、公民館刺傷事件で逮捕された黒羽根遥斗の供述から、星見計画の真相が星見小学校の地下室に隠されていることを知っていた。


シュウとタクミの距離はバレンタインデー以降さらに近づいていたが、カナエたちとのバランスを取る努力を続けながら、チームの絆を修復しようとしていた。






2月25日、シュウは自宅で星見計画のノートを見直していた。地下室に隠された証拠、黒羽根の同級生・野村慎二の存在が頭から離れなかった。


「野村慎二…。星見計画の真相を知る最後の人物…。地下室に何があるんだ…?」シュウが呟いた瞬間、携帯に高木刑事からの着信が入った。




「もしもし、シュウです。」




「シュウ、地下室の調査がようやく許可された。だが、危険が伴う。星見キッズの力を借りたい。学校に来てくれないか?」高木の声が緊迫していた。




シュウはノートを握りしめた。


「分かりました…。今すぐ行きます。みんなにも連絡します」




シュウはタクミ、カナエ、ケンタ、リナにメッセージを送り、星見小学校に向かった。






まだ雪が残る校庭に、春の気配が薄く漂う中、星見キッズが再び集結した。


学校に到着すると、高木刑事が校舎の裏にある古い倉庫の入り口で待っていた。倉庫の奥に地下室への階段が隠されており、警察が封鎖していた。


「シュウ、みんな、よく来てくれた。地下室には古い記録や装置があるらしい。星見計画の証拠が隠されてる可能性が高い。だが、罠があるかもしれない。気をつけてくれ」高木が説明すると、シュウが頷いた。




「分かりました、高木刑事。星見キッズとして、真相を暴きます」タクミがシュウの手を握った。




「シュウ、僕、怖いけど…。シュウと一緒なら大丈夫…」シュウはタクミの温かさに心が温まり、微笑んだ。




「タクミ…ありがとう。僕も君がいるから頑張れる。みんな、一緒に…」




カナエが冷静に言った。


「シュウ、危険かもしれないから、慎重にね。私たちも協力するよ」




ケンタが拳を握った。


「シュウ、星見キッズの力、見せるぞ!」




リナがスケッチブックを手に頷いた。


「うん…。地下室、スケッチで記録するよ。証拠を見逃さない…」




星見キッズは高木刑事と共に地下室へ降りる階段を進んだ。階段は古く、湿った空気が漂い、薄暗い電灯が頼りだった。地下室に到着すると、広い空間に古い机やファイル、壊れた装置が散乱していた。シュウが懐中電灯で照らしながら言った。




「これ…。星見計画の記録だ…。ファイルがたくさんある…」




カナエがファイルを手に取り、読み始めた。


「シュウ、見て…。星見計画は、20年前に始まったプロジェクト。優秀な子供たちを選んで、実験的な教育プログラムに組み込んでた…。予算の不正も絡んでる…」




タクミがタブレットでファイルを撮影した。


「シュウ、子供たちを利用するなんて…。ひどいよ…」




ケンタが装置の残骸を調べながら言った。


「シュウ、この装置…。何かデータを記録する機械みたいだ。子供たちの行動を監視してたのかも…」




リナがスケッチブックに地下室の配置を描き、呟いた。


「シュウ…。奥に隠し扉がある…。スケッチしてて気づいた…」




シュウが隠し扉に近づき、慎重に開けた。扉の奥には小さな部屋があり、古いノートと一枚の写真が置かれていた。写真には、星見小学校の卒業生たちが写っており、その中に黒羽根遥斗と、もう一人の男がいた。




「この男…。野村慎二…? 黒羽根の同級生…。星見計画の中心人物だった…」シュウがノートを開くと、星見計画の詳細が書かれていた。




「優秀な子供たちを選び、行動を監視し、データ収集。予算は不正に流用され、計画は失敗に終わる。責任者:野村慎二」と記されていた。




カナエが驚いた。


「野村慎二…。学級委員だったって。星見計画を主導してた…。黒羽根は犠牲者だったんだ…」




タクミが写真を見つめ、呟いた。


「シュウ、野村慎二…。星見キッズを壊そうとしてるのは、この人だ…」




ケンタが拳を握った。


「シュウ、野村慎二が次の犯人だ! 僕たちを狙ってる…」




リナがスケッチを続けながら言った。


「シュウ…。ノートに、野村慎二の最後のメッセージが…。『星見キッズが真相に近づけば、次の試練を与える』って…」




シュウがノートを手に、高木に報告した。


「高木刑事、星見計画の真相、掴みました。野村慎二が主導者で、子供たちを利用してた。黒羽根は被害者で、復讐のために動いてた…。野村慎二が次の犯人です」




高木が頷いた。


「よくやった、シュウ。証拠を押収する。野村慎二の行方を追う。だが、君たちを狙ってるなら、危険だ。しばらく身を隠して…」




シュウが決意を込めて言った。


「高木刑事、僕たち、星見キッズです。野村慎二が動くなら、立ち向かいます。みんなを守るために…」




タクミがシュウの手を握った。


「シュウ、僕、シュウと一緒なら怖くない…。星見キッズとして、戦うよ…」




カナエが微笑んだ。


「シュウ、頼もしいね。私たちも協力する。星見キッズとして…」




ケンタが笑顔を見せた。


「うん、シュウ! 星見キッズ、負けないぞ!」




リナがスケッチを手に頷いた。


「うん…。証拠、スケッチに残したよ。次の試練、乗り越えよう…」






地下室から出た星見キッズは、校庭の桜のつぼみが膨らむ中、一息ついた。シュウがみんなを見回し、言った。


「みんな…ありがとう。タクミとの時間も大事だけど、みんなとも一緒にいたい。星見キッズとして、また一歩進めた…」




タクミがシュウの手を握った。


「シュウ、僕、シュウと一緒にいて嬉しい…。でも、みんなとも仲良くしたい…」




カナエが頷いた。


「シュウ、バランス取る努力、伝わってるよ。少しずつ、信頼が戻ってきてる…」




ケンタが拳を突き上げた。


「星見キッズ、復活だ! 野村慎二、絶対捕まえる!」




リナがスケッチブックを抱きしめた。


「うん…。桜とみんな、スケッチしたよ。星見キッズ、最高…」シュウは桜のつぼみが膨らむ校庭で、決意を新たにした。「野村慎二…。星見計画の最後を終わらせる。みんなを守るために…」星見キッズは新たな試練に立ち向かう準備を整えていた。2月下旬の冷たい風が、星見計画の最終章が近づいていることを予感させていた。




(Ep35話 完)

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