Ep33:バレンタインデーの鼓動(近づく距離)

2月に入り、星見小学校の3学期は穏やかな日々を迎えていた。


1月の合唱祭と公民館刺傷事件の解決から約3週間が経ち、星見キッズも平穏な日常を取り戻していた。


公民館事件の犯人、黒羽根遥斗は逮捕され、「星見計画」の真相が星見小学校の地下室に隠されていることが判明したが、警察の調査が続く中、星見キッズは高木刑事から「しばらく動かないように」と指示を受けていた。




学校生活に戻った彼らは、学級活動や授業に励みつつ、チームの絆を少しずつ修復しようと努力していた。しかし、シュウとタクミの距離は日に日に近づいていた。合唱祭での協力や事件解決を通じて、シュウはタクミへの感情を抑えきれず、タクミもシュウに心を開き、友情以上の信頼を寄せていた。カナエ、ケンタ、リナは二人の関係に複雑な思いを抱きつつも、チームとして再び団結するために距離を取る姿勢を緩めていた。






バレンタインデー当日、星見キッズの心に新たな波が広がっていた。


朝、5年1組の教室は、バレンタインデーの甘い雰囲気に包まれていた。女子生徒たちがチョコレートを手に男子に渡したり、友達同士で交換したりする姿があちこちで見られた。




シュウは教室の窓際でノートを手に、星見計画の記録を読み返していた。「地下室に証拠がある…。高木刑事から連絡がないけど、星見計画の真相、気になるな…」シュウが呟いていると、タクミがそっと近づき、「シュウ、おはよう! 今日、バレンタインデーだね!」と笑顔で声をかけた。




シュウはタクミの無垢な笑顔に心臓がドキリと鳴り、「お、おはよう、タクミ…。うん、そうだね…」と少し緊張しながら答えた。


タクミが小さな紙袋を手に、「シュウ、これ…僕、お母さんと一緒に作ったんだ。シュウに渡したくて…」と顔を赤らめながら差し出した。


袋の中には、手作りのハート形チョコレートが入っていた。


「タクミ…! ありがとう…。僕、嬉しい…」シュウはチョコを受け取り、タクミの手が触れた瞬間に温かさが伝わり、心がざわついた。


「タクミ…。君って、本当に…」シュウは言葉を詰まらせ、ショタコンとしての感情が抑えきれなかった。




カナエは教室の反対側で、リナと一緒にチョコを交換していた。


「リナ、これ、友チョコ! いつもスケッチ見せてくれて、ありがとうね」と笑顔で渡すと、リナが「カナエ、ありがとう! 私も友チョコ、作ったんだ」と小さな包みを渡した。


カナエがシュウとタクミの様子を見やり、「シュウとタクミ…。最近、すごく仲いいね…。事件解決して、距離が縮まったんだろうけど…」と呟いた。


リナがスケッチブックに二人の姿を描きながら、「うん…。シュウ、タクミのこと大事にしてるよね。でも、私たちも星見キッズの一員だよ…。また5人で仲良くしたい…」と呟いた。




ケンタは教室の入り口で、クラスの男子たちとチョコをもらった話をしていた。「俺、3個もらった! ケンタは?」と聞かれ、「うん、2個だよ! でも、星見キッズのみんなとも交換したいな…」と笑顔で答えた。




ケンタがシュウとタクミを見つけ、「シュウ、タクミ、俺もチョコ持ってきた! 友チョコだけど、食べる?」と紙袋を差し出した。


「ケンタ、ありがとう! 僕も食べるよ!」タクミが喜び、シュウが「ケンタ、嬉しいよ。ありがとう…」と微笑んだ。


ケンタが「シュウ、タクミ、最近仲いいね。星見キッズとして、また5人で何かしたいな…」と呟くと、シュウは「うん、ケンタ…。僕もそう思う。みんなでまた…」と答えたが、タクミへの想いが頭を離れなかった。






昼休み、星見キッズは校庭のベンチに集まり、チョコレートを交換しながら話をした。カナエが「シュウ、タクミ、リナ、ケンタ、はい、友チョコ! 星見キッズで交換するの、楽しいね」と笑顔で渡すと、みんなが「ありがとう、カナエ!」と受け取った。


タクミが「シュウ、僕のチョコ、美味しい?」と尋ねると、シュウは「うん、タクミ…。本当に美味しい。手作りって、特別だね…」と頬を赤らめた。カナエがその様子を見て、「シュウ…。タクミのこと、特別に思ってるよね…。でも、私たちもシュウのこと、大事だよ…」と静かに言った。


シュウはカナエの言葉にハッとし、「カナエ…ごめん。タクミのこと、特別に見てた…。でも、みんなも本当に大事だ。星見キッズとして、また5人で…」と答えた。


リナがスケッチブックに5人の笑顔を描きながら、「うん…。シュウ、タクミ、カナエ、ケンタ、私…。星見キッズ、復活しようね…」と微笑んだ。


ケンタが「そうだ! バレンタインデーだし、みんなで何か楽しいことしようよ! 放課後、公園で雪遊びしない?」と提案し、タクミが「いいね! シュウ、一緒に雪だるま作ろう!」と目を輝かせた。






放課後、星見キッズは近所の公園に集まった。雪が積もる公園で、タクミとシュウは一緒に雪だるまを作り始めた。


「シュウ、目はどうする? 石にする?」タクミが無垢な笑顔で尋ねると、シュウは「うん、石でいいよ。タクミ、雪だるま上手だね…」と微笑んだ。


タクミが雪を丸めながら、「シュウと一緒に作るの、楽しい…。シュウ、最近、そばにいてくれて嬉しいんだ…」と呟いた。


シュウは「タクミ…。僕もだよ。君と一緒にいると、心が温かくなる…」と答え、タクミの手を握った。




カナエ、ケンタ、リナは少し離れた場所で雪合戦をしていた。


「カナエ、くらえ!」ケンタが雪玉を投げ、カナエが「ケンタ、負けないよ!」と笑いながら反撃した。


リナがスケッチブックに雪遊びの様子を描き、「みんな、楽しそう…。星見キッズ、こうやって笑えるの、久しぶり…」と呟いた。


カナエがシュウとタクミを見やり、「シュウとタクミ…。本当に仲いいね。私たちもシュウと距離、縮めたいな…」と呟くと、ケンタが「うん、カナエ。シュウも変わろうとしてるよ。星見キッズ、復活させよう!」と笑顔を見せた。




シュウはタクミと雪だるまを完成させ、二人で写真を撮った。


「シュウ、いい雪だるまだね! また一緒に作ろうね!」タクミが笑うと、シュウは「うん、タクミ…。また一緒に…」と頬を赤らめた。


シュウの心は、タクミへの想いでいっぱいだったが、「みんなも大事…。バランスを取らないと…」と自分に言い聞かせた。


タクミが「シュウ、バレンタインデー、楽しかった…。シュウ、大好きだよ。友達として…ね?」と呟くと、シュウは「タクミ…。僕もだよ。君のこと、大好き…」と答え、複雑な感情が胸を締め付けた。






夕方、星見キッズは公園で別れ、帰路についた。


シュウは自宅に戻り、タクミからもらったチョコを手に、「タクミ…。君への気持ち、どうすればいいんだ…。星見キッズとして、みんなとまた…」と呟いた。


ノートを開くと、星見計画の記録が目に入った。


「地下室…。高木刑事からの連絡、待つしかない…。でも、星見計画が終わってないなら…」シュウが呟いた瞬間、携帯に高木からの着信が入った。




「もしもし、シュウです。高木刑事?」




「シュウ、悪いな。星見計画の調査が進んだ。地下室に何かあるのは確かだが…。まだ入れない。だが、黒羽根が『同級生が動く』と言ってる。気をつけろ…」高木の声が重かった。




シュウは「同級生…。黒羽根の同級生が…。次の犯人…?」と呟き、ノートに「黒羽根の同級生」と書き込んだ。




「星見計画…。まだ終わらない…。みんなを守らないと…」シュウはバレンタインデーの温かい思い出と、迫る危機の間で心が揺れ動いた。




(Ep33 完)

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