Ep31:公民館の暗雲(絆の試練)


合唱祭前日の夜、星見市に新たな事件が降り注いだ。


星見小学校近くの公民館で、男性が胸を刺され、意識はあるものの重傷を負った。現場に残された脅迫文には「次はお前が…星見キッズを壊す」と書かれており、過去の公園事件やモール事件と同じ手口が示唆された。星見キッズは、シュウのタクミへの感情が原因でチームに亀裂が入ったままだったが、高木刑事からの緊急連絡でシュウが現場に向かったことをきっかけに、徐々に再結集の動きを見せていた。






雪が降り続ける夜、星見キッズの試練が再び始まった。


シュウは自宅を出て、公民館に向かう途中、高木刑事からの電話の内容を頭の中で反芻していた。


「男性が刺された…。『星見キッズを壊す』って…。犯人が僕たちを狙ってる。タクミやみんなを巻き込む前に、解決しないと…」シュウはノートを握りしめた。




公民館に着くと、警察のテープが張られ、救急隊員が被害者を担架で運び出している姿が見えた。


高木刑事がシュウに近づき、「シュウ、間に合った。被害者は佐々木健次、38歳。公民館で夜間清掃中、背後から刺された。意識はあるが、話せない状態だ。脅迫文が近くに落ちてた」と説明した。


シュウは現場を観察した。公民館の入口近くの雪に血痕が残り、脅迫文がビニール袋に入れられていた。




シュウがノートに書き込みながら言った。


「『星見キッズを壊す』…。モール事件や公園事件と同じ『次はお前が…』の続きだ。犯人は僕たちを標的にしてる。トリックがあるはず…」




高木が頷き、「そうだ。凶器はナイフとみられるが、見つかっていない。目撃者もいない。早朝や深夜の事件と違い、ここは人通りがあるのに…」と首をかしげた。




シュウは「公民館の構造を調べます。犯人がどうやって逃げたか…」と決意を込めた。






その頃、タクミは自宅でシュウが公民館に向かったことを知り、心配でたまらなかった。「シュウ…。また事件…。僕、行かなきゃ…」タクミはタブレットを手に、コートを着て家を出た。




カナエはニュースを見て、「シュウ…。また関わってる…。私たち、助けに行かなきゃ…」と呟き、ケンタに連絡した。「ケンタ、公民館で事件だよ。シュウが危ないかも…」


「え!? 僕、行く!」ケンタがサッカーボールを手に家を飛び出した。




リナもスケッチブックを手に、「シュウ…。星見キッズとして、また一緒に…」と決意し、出かけた。






シュウは公民館の内部を調べ始めた。ホールには合唱祭の準備で使われた椅子が積まれ、窓には雪が反射して薄暗かった。




シュウがノートにスケッチを書きながら呟いた。


「窓が開いてる…。犯人がここから逃げた? でも、雪に足跡がない…」




高木が近づき、「窓は施錠されてた。外から開けられた形跡もない。トリックだな…」と付け加えた。




シュウは「内部で姿を消した…。隠れる場所か、視線を逸らす何かがあるはず」と考え、ホールの隅を調べた。


その時、タクミが公民館に到着し、シュウの姿を見つけた。




「シュウ!」タクミが駆け寄り、シュウが振り返った。




「タクミ!? どうして…」




「ニュース見たんだ…。シュウが危ないって…。僕、そばにいたい…」タクミが目を潤ませた。




シュウはタクミの手を握り、「タクミ…ありがとう。でも、危険だから…」




「シュウ、一人じゃダメだよ。僕、助ける!」タクミがタブレットを取り出し、「公民館の監視カメラ、調べるよ。犯人の動き、見つけられるかも」と提案した。




シュウは「タクミ…頼もしい。ありがとう」と微笑んだが、心の中で「この気持ちを抑えないと…」と葛藤した。




カナエ、ケンタ、リナも公民館に到着し、シュウとタクミの姿を見つけた。「シュウ! タクミ!」カナエが叫び、3人が近づいた。




「みんな…! どうして…?」シュウが驚いた。




「タクミからメッセージが…。シュウが危ないって…。私たち、距離を取ってたけど…見捨てられないよ」カナエが目を潤ませた。




「シュウ、僕も星見キッズ、解散したくない…!」ケンタが拳を握った。




「シュウ、私も…。一緒に戦いたい…」リナがスケッチブックを握りしめた。




シュウは涙をこぼし、「みんな…ありがとう。僕が悪いんだ。タクミへの気持ちで、みんなを傷つけて…。でも、こうやって来てくれて…」




タクミが「シュウ、僕も嬉しい…。でも、犯人がシュウを狙ってるなら、みんなで守ろう!」と声を上げた。




高木が「星見キッズ、再結集だな。だが、完全な絆はまだ戻っていない。気を引き締めろ」と警告した。




シュウは「みんな、協力してくれる…? 犯人のトリックを解いて、星見キッズを守りたい…」と尋ねた。




カナエが頷き、「シュウ、今回は協力するよ。でも、私たちの気持ちも考えてね…」




「うん、カナエ…。ありがとう。星見キッズとして、また一緒に…」シュウが言葉を詰まらせた。






星見キッズは公民館のホールを調べ始めた。


タクミがカメラ映像を解析し、「シュウ、ホールにいる間に、黒いフードの人物が突然消えてる! 出口や窓を使わずに…」と報告した。




リナがスケッチブックにホールの配置を書き、「この舞台裏に隠れる場所があるかも…。カーテンや小道具で姿を隠した?」と提案した。




ケンタが舞台裏を調べ、「シュウ、ここに足跡がある! でも、雪じゃない…。床に残った泥だ!」と叫んだ。




シュウが「泥…。外から入った証拠だ。舞台裏で隠れて、別の出口を使ったか…」とノートに書き込んだ。




高木が舞台裏の裏口を確認し、「このドア、施錠されてたが、内側から開けられた形跡がある。犯人はここから逃げたんだ…」と報告した。




シュウが「トリックは姿を消すこと…。舞台裏でカーテンや小道具を使い、目撃者を欺いた。泥の足跡が証拠だ。だが、なぜ星見キッズを壊す…?」と考え込んだ。




タクミが「シュウ、犯人が僕たちに恨みがあるのかも…。モール事件や公園事件の続き?」と呟いた。




高木が「被害者の佐々木健次から聞き取りできた。意識は戻ったが、話が途切れる。『黒い影…星見…』と言っただけだ。星見キッズに関係がある可能性が高い」と説明した。




シュウは「星見…。僕たちを壊すって、過去の事件と繋がってる? 田村くんの事件や松本誠司の恨み…。新しい敵が現れたのか…」と呟いた。




カナエが「シュウ、慎重にね。犯人が僕たちを挑発してるなら、罠かもしれない…」




「うん、カナエ…。みんなを守るために、トリックを解くよ」シュウが頷いた。




リナがスケッチブックに舞台裏の配置を描き、「シュウ、このカーテンの影で犯人が隠れた可能性がある。カメラ映像と合わせると、タイミングが…」と提案した。




タクミが映像を確認し、「シュウ、犯人がカーテンに隠れて、裏口に逃げた瞬間が映ってる! 時間は事件から3分後…」と報告した。




シュウが「3分…。目撃者が少ないのは、カーテンで姿を隠し、素早く裏口を使ったからだ。トリックは視覚の操作…。だが、動機が…」とノートに書き込んだ。




高木が「ナイフはまだ見つかっていない。だが、泥の足跡から犯人の靴サイズが分かる。鑑定に出す。シュウ、星見キッズの力を借りて、犯人の意図を解明してくれ」と頼んだ。




シュウは「みんな、協力ありがとう…。犯人が星見キッズを壊すなら、僕たちが立ち向かう。合唱祭も近いけど、事件を優先しよう…」と提案した。




カナエが「シュウ、合唱祭も大事だけど…。事件が解決しないと、僕たちも安心できない。頑張ろう」


ケンタが「うん、シュウ! 星見キッズ、復活だ!」


リナが「シュウ、私もスケッチで手伝うよ」と頷いた。


タクミがシュウのそばで、「シュウ、僕、ずっとそばにいるよ。危険でも…」と呟くと、


シュウは「タクミ…ありがとう。でも、みんなも大事だ。僕、この気持ち、抑えるよ…」と葛藤した。




カナエがその様子を見て、「シュウ、タクミのこと大事にするのは分かる。でも、僕たちも同じくらい…。お願い、バランスを取って…」と静かに言った。




シュウは「カナエ…ごめん。分かった。みんなを同じように大事にするよ…」と答えた。






星見キッズは公民館の調査を終え、夜遅くに解散した。


シュウは自宅に戻り、ノートを開いた。




「犯人は星見キッズを壊す目的で動いてる。トリックはカーテンを使った視覚操作…。だが、動機が分からない。合唱祭が近いのに…」




シュウが呟いた瞬間、窓の外で影が動く気配がした。「…!?」シュウが窓に近づくと、雪に残る足跡だけが残り、影は消えていた。「また…。犯人が近づいてる…。合唱祭、危険かもしれない…」シュウはノートを握りしめ、不安が胸を締め付けた。




(Ep31 完)

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