Ep13:林間学校への旅立ちと1日目の冒険
~バスの中でのたわいのない会話~
10月上旬、秋の気配が深まる朝、星見小学校の5年生は林間学校に向けてバスに乗り込んだ。目的地は山間の「森の自然の家」で、紅葉に染まる森と清流に囲まれた場所だった。
「星見キッズ」は、窓辺に座りながら興奮気味に話をしていた。バスのエンジン音が響き、車窓には田園風景が流れていく。
「ねえ、シュウ! 紅葉がきれいそうで楽しみだよ。星見計画のことは忘れて、思いっきり遊ぼうね!」カナエが窓の外を指さして元気よく言った。
「うん、そうだね。自然の中でリフレッシュするのもいいかも。たまには頭を休めたいし」シュウはメガネをクイッと直し、ノートをカバンにしまった。
「俺、キャンプファイヤーが楽しみだ! 森の中でサッカーしたら、めっちゃ気持ちいいだろうな」ケンタがサッカーボールを膝に置いて笑った。
「スケッチするの、楽しみだな。紅葉の色をちゃんと描けるか、ちょっと緊張するけど」リナがスケッチブックを手に持って微笑んだ。
「自然の家のWi-Fi、使えるかな? 夜にゲームでもしてみたいんだけど」タクミがタブレットを手にいじりながら呟いた。その時、隣の席から声がした。
「シュウたち、林間学校って何するんだろうね?」振り返ると、クラスメイトの田村悠斗(ゆうと)くんがニコニコしながら話しかけてきた。
悠斗はサッカー部で明るい性格の人気者で、ショートカットの黒髪が特徴だった。
「悠斗! お前も楽しみだろ? ハイキングとかキャンプファイヤーがあるみたいだよ」ケンタがボールを軽く蹴って笑った。
「うん、楽しみだよ! 特に川遊びがいいな。魚でも釣れたら最高だ」悠斗が目を輝かせて言った。
「魚釣りか…。僕、釣り竿持ってくればよかったかも」シュウが少し後悔したように呟いた。
「大丈夫だよ、シュウ。自然の家に道具があるって先生が言ってたから」カナエが優しくフォローした。
「でも、夜はちょっと怖いかも。森の中って、動物とか出ないかな?」リナが少し不安そうに言った。
「出ても可愛い動物だけでしょ? シカとかタヌキとか。狼はいないから大丈夫だよ」悠斗が笑いながら手を振った。
タクミがタブレットで調べて言った。
「この辺りは自然保護区だから、野生動物は少ないみたいだ。でも、虫は多いかもな」
「虫…。苦手だから、気をつけようね」カナエが少し顔をしかめた。
バスは約2時間走り、自然の家の近くまで来た。車窓から見える紅葉が美しく、子供たちは窓に顔を押し付けて歓声を上げた。
悠斗が興奮気味に言った。
「見て! あの木、まるで燃えてるみたいだよ!」
「うん、本当にきれいだね。写真撮っておこう」リナがスケッチブックを置いてカメラを構えた。
「この景色、ゲームの背景にしたら映えそうだな」タクミがタブレットを手に笑った。
「シュウ、林間学校で何か面白いこと起こるかな? 星見キッズらしい冒険が」ケンタが目を輝かせた。
「さあね。でも、事件じゃなくて楽しければいいけど…」シュウが少し考え込むように言った。
バスが自然の家に到着すると、木造の宿舎が目の前に現れた。
看板には「ようこそ、森の自然の家へ」と書かれ、子供たちは荷物を降ろして宿舎に入った。
担任の田中先生がマイクを持って説明を始めた。「みんな、2泊3日の予定だよ。今日はオリエンテーションとハイキング、夜にキャンプファイヤーだ。安全に楽しもうね!」
~1日目のオリエンテーションとハイキング~
オリエンテーションでは、宿舎のルールや緊急時の連絡先が説明された。
シュウたちは真剣に聞き、ノートにメモを取った。
悠斗が隣で小声で言った。「シュウ、ルール多すぎだろ。自由に遊びたいな」
「うん、でも安全のためだから我慢しよう。ハイキングが楽しみだよ」シュウが笑顔で答えた。
オリエンテーションが終わると、早速ハイキングに出発した。
森の中のトレイルは土と葉で覆われ、秋の香りが漂っていた。
田中先生が先頭に立ちながら言った。
「みんな、紅葉の葉っぱやどんぐりを集めてみて。自然の美しさを感じてね」
シュウたちは班ごとに分かれ、森を歩いた。
カナエがどんぐりを拾って叫んだ。
「見て、シュウ! こんな大きなどんぐり、初めて見た!」
「すごいね、カナエ。よく見つけた。僕も探してみよう」シュウは木の根元を覗き込み、小さな石を見つけた。
「シュウ、それはどんぐりじゃないよ。石だよ!」ケンタが笑いながら言った。
「うっ…。確かにね。次は気をつけるよ」シュウが照れ笑いした。
リナはスケッチブックに紅葉の葉を丁寧に描き、集中していた。
タクミが木の枝を調べながら言った。
「この木、昔の教科書で見た種類だ。紅葉が特に美しいね」
「うん、色が濃くてきれい。スケッチに活かせそう」リナが頷いた。
悠斗は班の前を歩きながら、木の枝を手に持って振った。
「この枝、剣みたいだ! 冒険気分だね!」
「悠斗、気をつけて。怪我したら大変だよ」カナエが心配そうに言った。
ハイキングのルートは約2時間で、頂上近くの展望台に着いた。
眼下に広がる紅葉の海に、子供たちは歓声を上げた。
「わあ、すごい! 絵本みたいだね!」リナが目を輝かせた。
「この景色、最高だ! 写真撮っておこう」ケンタがスマホを取り出した。
「ゲームの背景にしたら映えそうだな」タクミがタブレットを手に笑った。
「自然の中って、気持ちいいね。星見計画のことも忘れて、楽しもう」シュウが深呼吸しながら言った。
~夕食とキャンプファイヤー~
ハイキングの後は宿舎に戻り、夕食の準備が始まった。メニューはカレーライスで、シュウたちは班ごとに役割分担した。
カナエが鍋をかき混ぜながら言った。
「シュウ、カレーってみんなで作ると楽しいね。星見キッズ、料理も得意だ!」
「うん、チームワークがいいからだよ。カナエ、味見してみて」シュウがスプーンを渡した。
「うまい! ちょっと塩を足したら完璧だよ」カナエが笑顔で答えた。
悠斗が野菜を切る手伝いをしながら言った。
「シュウ、カレーって男らしくていいな。僕、もっと辛くしてもいい?」
「大丈夫だよ、悠斗。みんなの好みに合わせて調整しよう」シュウが穏やかに言った。
夕食後、キャンプファイヤーが始まった。
外の広場に大きな焚き火が作られ、子供たちは円になって座った。
歌を歌ったり、ゲームをしたりして大盛り上がりだった。悠斗がリードして「山の歌」を歌い、みんなで合唱した。
「シュウ、歌うまいね! 僕も一緒に歌おう」悠斗が隣に座って笑った。
「ありがとう、悠斗。僕、歌は苦手だけど…頑張るよ」シュウが少し照れながら歌った。
カナエが手を叩いて言った。
「星見キッズ、歌も最高! キャンプファイヤー、楽しいね!」
「火がきれいだな。夜の森って雰囲気ある」リナがスケッチブックに火の模様を描いた。
タクミがタブレットを置いて言った。
「Wi-Fiないけど、こういう時間も悪くないな」キャンプファイヤーが終わり、子供たちは宿舎に戻った。
1日目の予定はすべて無事に終わり、みんな満足そうだった。
シュウがカバンからノートを取り出し、
「1日目、楽しい一日だった。明日も楽しそう」と書き込んだ。
「シュウ、明日もがんばろうね。川遊びが楽しみだ!」ケンタが眠そうに言った。
「うん、みんなで楽しもう。じゃ、おやすみ」シュウが笑顔で答えた。
(Ep13 完)
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