Ep12:校長日誌の謎(後編)
~倉庫への再挑戦~
9月の中旬、朝の涼しい風が校庭を渡る中、星見キッズは再び旧体育館の隣の倉庫に集まった。
昨日の黒スーツの男との遭遇で緊張感が高まる中、シュウは仲間たちに作戦を説明した。
「昨日、あの男に日誌を守る意図があった。今日は慎重に進むよ。タクミ、警報や監視カメラのチェックをお願い」
「了解。倉庫の周りにカメラはないけど、近隣の記録をハックしてみる」タクミがタブレットを操作し始めた。
リナがスケッチブックを手に持って言った。
「昨日見た男の特徴、描いておいたよ。背が高くて、スーツにナイフを持っていたね」
「ありがとう、リナ。それを元に特定できるかもしれない」シュウがノートにメモした。
ケンタがサッカーボールを地面に置き、気合を入れた。
「シュウ、俺が先陣切るよ。危険でも逃げないからさ!」
カナエが笑顔で言った。
「ケンタ、勇敢だね。でも、無理しないでね。みんなで協力しよう」
錆びた鉄扉を開けると、倉庫の中は埃っぽく、古い体育器具が散乱していた。床の隅に小さなハッチが見つかり、シュウが懐中電灯で照らすと、地下への階段が現れた。
「ここだ。日誌に書かれた『地下の鍵』がここにあるかもしれない」
階段を降りると、狭い部屋が広がっていた。壁には古い地図が貼られ、机の上には鍵と一緒に古いメモが置かれていた。
シュウがメモを手に取ると、
「平和教育の基盤は、未来の世代に知識を残すこと。鍵は星見の心に」と書かれていた。
「星見の心…。校舎の中心を指してるのかな?」カナエが首をかしげた。
その時、階段から足音が聞こえた。
昨日と同じ黒スーツの男が現れ、ナイフを手に持っていた。
「お前たち、また来たか。日誌の秘密は一族のものだ。鍵も渡さない」
「一族のものじゃない! 町の歴史の一部なんだ!」シュウがきっぱりと言った。
男がナイフを振り上げ、シュウたちに迫った。
ケンタが素早くサッカーボールを男に投げつけ、足を絡ませて転倒させた。
「今だ、逃げろ!」
5人は地下室の奥に隠れ、男が立ち上がるのを待った。
タクミがタブレットで警察に連絡し、
「校舎の倉庫で襲われてる! 助けてください!」と叫んだ。
~警察の介入と鍵の謎~
数分後、サイレンの音が近づき、警察が倉庫に到着した。男は抵抗したが、すぐに取り押さえられた。
刑事の佐藤さんがシュウたちに近づき、穏やかに言った。
「大丈夫か、星見キッズ。この男は星見一族の遠縁、鈴木隆だ。星見計画の秘密を守るために動いていたらしい」
「鈴木隆…。なぜそんなことを?」リナが驚いた声で尋ねた。
「一族の名誉を守るためだ。財宝や不正は表に出たが、平和教育の計画は隠したいらしい。日誌や鍵を奪うつもりだった」佐藤刑事が説明した。
シュウは鍵を手に持って言った。
「この鍵、校舎の中心にある何かを開けるみたいです。『星見の心』って何だろう?」
警察が倉庫を捜索する中、シュウたちは校舎の設計図を確認した。タクミが指をさして言った。
「校舎の真ん中、図書室の床下に秘密の部屋があるよ。鍵が合うかもしれない」
図書室に急ぎ、床下のハッチを見つけた。鍵を差し込むと、カチッと音がして開いた。中には古い木箱が入っており、開けると教育資料や子供向けの本、戦後の希望を伝える手紙が詰まっていた。
シュウが手紙を読んだ。
「星見計画は、戦後の子供たちに教育の機会を与え、平和な未来を築くためのものだった。一族の不正とは別に行われたんだ」
「じゃあ、財宝や不正とは別の目的があったんだね」カナエが感心した。
「うん、星見の真の心は平和教育だった。鈴木隆はそれを隠したかったんだ」シュウがノートに書き込んだ。
~事件の解決と新たな決意~
警察は鈴木隆を逮捕し、星見計画の平和教育の目的が町に公表された。
資料は学校の歴史として保存され、子供たちに平和の大切さを教える教材に使われることになった。
シュウたちは教室に戻り、夕陽が窓をオレンジに染める中、話し合った。
「シュウ、すごいよ。平和教育の秘密、解いちゃったんだから!」ケンタが笑った。
「ありがとう、ケンタ。でも、まだ全部じゃない気がする。日記に『未来への希望』ってあったよね。その続きが気になる」シュウが真剣な顔で言った。
「次はどんな謎かな? 楽しみだよ」リナがスケッチブックを閉じた。
「そうだね。新学期が始まったばかりだし、10月の文化祭までには何かあるかも。準備しておこう」タクミがタブレットを片付けながら言った。
シュウはノートを手に持つと、窓の外の桜の木を見つめた。
「星見計画の真実を、全部解き明かすよ。みんなと一緒に」教室に笑顔が広がり、星見キッズの新たな冒険が始まる予感がした。
(Ep:12完)
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