第44話 嫉妬
人ひとりが硬直して、倒れているにも関わらず、テーブルの上の食器は無傷だった。
二人が魔眼を行使した際、とっさに庇ったヨウコが、オレの足元から顔を出す。
「菖蒲ちゃん、鈴鳴だったか」
「鈴鳴ではないだろう。自身が持つ奏術を、言葉を唱えて発動させたが、言葉の内容から察するに、今の段階になって紡げたのだろう。この二人の少女については解決だ。一人は二人になりたかった。そのため、瑰玉を目として、一つになった。硬直した躰と抜け殻の躰。この二つについては、全てが終わり次第、素材として使うよ。問題はこの恋人たちに、一つになる手段を与えた奴がいるということだ。そこの幼女趣味、ユーイチから離れろ。殺すぞ」
ヨウコはオレの後ろに回った。ひすいさんが殺さなかったのは、オレがヨウコを庇ったからだろう。
「はいはーい。怖いお姉さまには逆らいませーん。じゃ、あれだね。タチバナミナトってやつに会いに行くんでしょう」
「一昨日、アキバ辺りで見かけたのは見間違いではないだろう」
経帷子のような衣を纏った男を思いました。その男には、以前、会っている。
「その人、ひすいさんが見間違いとかなんとか言っていた男ですか。タチバナミナトっていうのは」
「今は男か。まあベースがそれだったしな」
「その人、前、ユーイチ君とお酒飲んでいた時に会ったヒト?凄いきにいてたようだよね。え、噂は全部本当だったの。うわー。巻き込まれてみるもんだね。カリナン一位と四位大激突じゃん」
カラカラと楽し気に笑っていた頭が、お菓子と一緒にテーブルの上に転がる。
「ユーイチの交友関係を害するのは偲びないので、後で修理する。狗飼茅が持ち込まれた夜、何があったかを洗いざらい話せ」
「ちゃんとこの部屋片づけてくださいね。血は染みが付いたらなかなか落ちないんですよ」
不気味な青年に会った夜のことと、ヨウコとの関係性について、詳細に説明をする羽目になった。
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