第33話 The Beginning of the Massacre

廃ビルのエントランスでは、がたいの良い男たちが、オレ達を待っていた。三分の一が、最初に菖蒲を襲った人々に似た風貌、次が狗飼研で現れたような人間もどき、残りは東京警備局の羽織を着ていた。

「お熱い歓迎だねえ。回すにしても人数多すぎるからあんまりおもしろくないよ」

オレの耳元でヨウコは悍ましい発言をする。

「オレがここで破壊されても、地獄蝶の屋敷には向かってください。『地獄蝶を探している』という目的があれば見つかりやすいらしいですから」

「でも私の魔眼で一人ずつ入れ替えていけば・・・・・・」

「あーっとね。それはナシにしよ、菖蒲ちゃん。私と入れ替えて顔真っ青になっていたじゃない。無理無理。人間もどきヒューマイムっぽいのもいるし、私程度で耐えられなかった菖蒲ちゃんがこんな血みどろ連中の肉体なんて持たないほうがいいよ。ユーイチ君。菖蒲ちゃんのほうに寄って」

ヨウコは、持っていた黒いレースで菖蒲の目を隠した。

「じゃ、私たちはユーイチ君から見える範囲で移動していくよ。私も、ちょっとだけバトルの勘はあるからねえ。」

そういってヨウコがオレの背中から降り、菖蒲の手を握る。

「信じていいのですか。それ」

「もちろん。好きな子が目の前でぐちゃぐちゃになるところなんて何度も見られるものじゃないから」

ヨウコさんは問題ないだろう。どこかで死んだところで、ひすいさんが修理をしなくても元通りになっていそうだ。

二人を背にして、熱烈な出迎えの群れを見据える。ざっと三十人ほどか。一歩踏み出すごとに、空気が張り詰める。

鯉口を切り、柄に手をかける。


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