第2話 宵闇の訪問者1

公共機関を使いたかったが、店から自宅付近までの足は無かった。一時間ほどの道のりを徒歩で帰った。住宅街の中に突如として現れる門扉を抜け、ジャコビアン様式の屋敷が見えてきた。夜も深くなっていた。しかし、一階の応接室に明かりが灯っている。夜中に来客だろうか。急ぎ足で玄関をくぐる。見慣れない大きなレザーブーツが並んでいる。

ドアをノックしてから、開けると、そこには、ひすいさんと大柄な男性、土生津が、眼球がくりぬかれた遺体をローテブルに乗せながら会話をしていた。

「遅かったな。ユーイチ。一杯ひっかけてきているのだろう。今日はもう風呂入って寝な」

「異常な死体を挟みながら会話しているところを見せたうえで寝ろっていうのですか。土生津さんもこんな変な時間に、一人で、屋敷に向かうのも、考え物だと思います」

「言うようになったな。少年。死にたくて殺したがっていた、安定しない瑰玉が今じゃ減らず口を叩けるまでになったか」

「・・・・・・。飲み物を取ってきます。そうしたらオレにも詳しい話を聞かせていただけますか」

「お願いしようかな。台所にカモミールがあったはずだからそれを入れてきてほしい」

洋館を抜け、和館の二階へ上がる。この屋敷ができたばかりの時には、洋館にもキッチンがあったらしいが、現在はひすいさんの道具置き場になっている。

お湯が沸くまでの間、台所の椅子に座り、ガスの炎を眺めていた。

土生津さんは、東京警備局の局長だ。そのような立場の人が、夜中に死体を持ってやってきた。眼がくりぬかれていたことが原因なのだろうか。思考の海に沈みそうになっていたところで、薬缶が鳴いた。火を止めて、3人分のカップを用意すると、オレは台所を出て、二人の待つ、応接室に向かった。

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