第15話 USB

第3セキュリティフロアに柊が合流する。


「クエタ、さっきのログをもう一度お願いします」


クエタは再度画面にいくつかのデータを並べた。そこには、Noesisの自動監視モジュールによるログ一覧が表示されている。


柊はディスプレイに映るログを見つめた。


「アクセス経路はどこから?」


「まだ特定できません。けれど、Noesis内部で一部のプロセスが過剰な応答時間を示しています。ログの閲覧権限も制限されています。」


ロナの眉がわずかに動いた。


「ログの閲覧権限も制限…?セキュリティフロアの内部処理ってそんなにロックされてたっけ?」


「いいえ、通常は管理者である柊さんなら確認できるはずです」


柊は首をかしげながら、手元の端末にアクセスした。だが…


「……アクセス拒否されました。ロックされています。僕の権限で開けない」


一瞬、空気が張り詰めた。

それは明確な異常の証だった。


クエタは静かに補足を続ける。


「…このUSBデバイス。認識されたタイミングが、通常の規定ログとずれているんです」


「USBのユーザーは……ロナさん、ですね」


柊の視線がロナに向けられた。彼の言い方に責める色はなかった。事実を確認する、ただそれだけの温度だった。


ロナは一瞬だけ眉をひそめたが、すぐに端末に向き直った。


「Noesisのファイル管理ユーティリティを試したときに接続したかも。でも……」


「何かを特定できるかもしれません。USB内のデータ、今から私が解析します」


クエタが操作を開始する。だが、すでにその中身に気づいていた人物がいた。


「……っ」


「エイダ?」


ロナの声に、彼女は反射的に首を振った。


「何でもない」


笑って見せたが、柊とクエタはその変化を見逃さなかった。


柊はふと、静かに言った。

「ログの解析を進めながら、内部のアクセス履歴を再確認しましょう」


その言葉は、誰かを名指しすることなく、ただ淡々と響いた。

けれど、確実に誰かの心を揺らした。


「クエタ、急ぎで内部アクセス履歴を出してください」

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