48. 新しい仲間

「本当にこの子は竜なのでしょうか……?

 大聖女様のお話では、竜は鱗に覆われていて禍々しいと書かれていました」


 目の前の鳥のことをイアン様は竜だと言っていたけれど、こんなにモフモフで愛くるしい生き物が竜だなんて信じられない。

 けれど、普通の鳥は喋らないから、この子が鳥だと信じることも出来なかった。


「お姉さん、助けてくれてありがとう。お姉さんさえ良ければ、僕の一生をかけて恩返しさせてくれると嬉しいよ」

「恩返し……? それも、一生をかけて?」

「うん。お姉さんが僕に名前を付けてくれたら、主従の契約を結べるんだ。竜の主従は絶対だから、安心してね」


 ……疑っていたら、この子が自ら竜だと打ち明けてくれた。

 主従の契約と言われても、私が結んで良いのか分からず、イアン様に視線を向け助けを求める。


 すると、こんな答えが返ってきた。


「従魔を作るためのテイムと同じ方法だ。竜を味方に出来るなら、やらない手は無いよ」

「信じて良いのですね?」

「疑り深い人達だなぁ。この通り、僕はお姉さんに逆らえないから、早く従僕にしてほしいよ」


 私がイアン様に問い返すと、竜の子がお腹を見せてきた。

 確か……この格好は魔物や動物が抵抗しないことを示すもので、格上の相手にしかしないと言われている。


「……信じよう。もし罠でも、聖女の君なら何とか出来るだろう」

「分かりました! えっと、名前を付ければいいのよね?」

「うん。出来ればカッコイイ名前にしてほしいな」

「ドーラって名前はどうかしら?」

「悪くない……かな。お姉さんの名前も教えて」


 ふと思いついた名前を口にすると、そんな答えが返ってくる。

 どうやら気に入ってもらえたらしい。


 もっとも、名前を口にした瞬間に魔力の繋がりのようなものを感じたから、やり直すことは出来ないと思う。

 もし不満に思われていたらどうなっていたのか、考えたくなかった。


「私はアイリスっていうの。ドーラちゃん、よろしくね」

「うん、よろしく」


 この状況に戸惑いながら、そんな言葉を交わすと、ドーラは私の手を離れて肩に飛び移る。

 どうなっているのか分からず、水魔法で鏡を作って見ると、顔だけ私の髪から出しているドーラと目が合った。


「くすぐったくない?」

「大丈夫。あったかくて安心する……」

「ゆっくり休んでね」


 そう口にすると、ドーラの瞼が少しずつ下がっていく。

 首元に羽毛が触れて少しくすぐったいけれど、これくらい我慢できるから気にしない。


 でも、この状態で魔物と戦うことは出来ないから、実験は切り上げて王都に戻ることに決めた。


「イアン様、実験はもう大丈夫なので、そろそろ帰りましょう」

「分かった。一応、父上にドーラのことを報告したいんだが、大丈夫だろうか?」

「殺されたりしないなら、大丈夫です」

「それは大丈夫だ。従魔だと説明すれば、保護の対象になる」


 不安はあるけれど、イアン様が断言してくれたから、気にしないようにして馬車に乗る。

 そうして王宮に入った私達は、陛下にこのことを報告してドーラと一緒に暮らすことを許された。


 最初に竜だと伝えた時は大騒ぎになったから、ものすごく不安だったけれど……無事にアースサンド邸に入るとドーラも歓迎されて、ようやく肩の力を抜くことが出来た。

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