私にはあります。見えない恋人を作って、木と木の間を歩いた経験が。木と木でなくてもいい。誰しもが人生で一度は経験しているはず。見えないひとに恋焦がれる想いを胸に秘め、探し歩いたことが。そんなあなたに、おすすめです。あなたが持っていたはずの鈴の音を、思い出す日が来るかもしれませんから。
神社の参道にある脇道。そこにはいつも不思議なお兄さんがいて、ただ一緒に話をする。その繰り返す幸せな日々と、「私」の秘めた甘酸っぱい恋心。ありきたりの様でありきたりではない、異質な空間での逢瀬に、年上のお兄さんへの憧れといった「私」の心理描写が感情移入しやすく読みやすい。あの日交わした二人の約束は。お兄さんは。いつか、の日を想像し、続編を読みたくなる作品です。