3,試練

 地球に一旦帰った三人は、良太と由香里は会社に残り、雄介だけでリンリンと話しをする為にゾイバー星の宇宙船が停泊している場所に向かった。

 「リンリンさん、地球の天野です。聞こえますか」

 「ああ、お前か。また来たのか。今度は何か良い知らせを持って来たんだろうな」


 「リンリンさん、先日私は仲間と一緒に銀河系の中に有る、Z39番惑星を見に行って来ました。その惑星にはまだ文明は無いのですが、とても住むのに環境の良い星だと思いました。そこでゾイバー星がギャラクシーユニオンに加入できましたら、ギャラクシーユニオンの力でそこにゾイバー星の人々が生活できる街を建設し、そしてそこにゾイバー星の人々が移住すると言うのはどうでしょうか」


 「何、ゾイバー星がギャラクシーユニオンに加入するだと。なにをバカなことを言っているんだ。何故ゾイバー星がギャラクシーユニオンに加入しなければならないんだ。ゾイバー星はギャラクシーユニオンなんかに加入などしない」


 「しかし、ゾイバー星がギャラクシーユニオンに加入しなければ、Z39番惑星に街を建設することができません。ゾイバー星さえギャラクシーユニオンに加入する努力をして頂けましたら良いのです」

 「天野、お前はバカか。俺たちがギャラクシーユニオンに加入する努力をしても、現在加入している星達が我々の加入を認めなければ、ゾイバー星は加入できないだろ」


 「それはそうですが、先ずゾイバー星の方がギャラクシーユニオンに加入する条件を満たすことが先決です」

 「何を言おうが、俺達はギャラクシーユニオンなんかに加入などしない。だったらお前たち地球人が、そのZ39番惑星とやらに移住したら良いではないか。そうすれば何も問題無く我々ゾイバー星が地球に移住できるだろう」


 「それは絶対にできません。地球人が移住する必要などありません」雄介は、リンリンの言葉に自分の心の奥底にある怒りの感情が、沸々と沸き上がって来るのを感じた。しかしその感情を何とか抑えようと頑張っていた。

 「リンリンさん、それではあなた達は、どうしても地球に移住するとおっしゃるのですか」


 「そうだ、それしか考えていない」

 「そうですか、しかしリンリンさん。あなた方が誰かを苦しめてしまえば、それが何時かは自分達に苦しみとなって帰ってくるのですよ。人に幸せを与えれば、それが何時かは自分達の幸せとなって帰ってくる。これが宇宙の法則です。あなた方がこうして人の星を奪っても、何時か必ず自分達に不幸が訪れますよ」


 「何を言う。そんなことはどうでも良い。俺達は、地球に移住すると言ったら移住するんだ」

 「そうですか。ではまた次の案を考えまして参ります。今日はこれで失礼します」


 「そうか、次の案を考えるより、早く地球から出て行く段取りをした方がいいぞ。さっさと帰って地球人にそう伝えろ」

 雄介は、リンリンの言葉に沸き上がる怒りの感情をグッとこらえて帰って行った。地球に帰って来た雄介は、良太と由香里にリンリンと話した内容を伝えた。


 「そうか、リンリンさんは全く変わっていないね」

 「そうなんだ、しかも僕もリンリンさんと話していると、心の奥底から怒りの感情が沸き上がってくるのが分かったよ」

 「それは雄介君、当たり前よ。そんな分からず屋と話をしていたら誰だって腹が立つわよ」


 「でも、僕の心の奥底に有る悪い心は、全く無くすことができていないのが分ったよ。どうすればこの心の奥底を変えることができるんだろうか」雄介は、自分の心の奥底にある悪い感情について悩んでいた。


 そしてまたマザーのアドバイスを貰おうと思い、雄介はその日の夜マザーにテレパシーを送った。

 『マザーさん、地球の天野です。私の声が聞こえますか』

 『はい、天野さん。聞こえますよ』

 『マザーさん、この前お話しした心の奥底について教えて頂きたいのです』

 『そうですか、かなり天野さんは悩んでおられますね』

 

 『はい、そうです。マザーさんにはお分かりですね。今回私が直面している問題は、ゾイバー星と言う星の方が我々の地球に移住させろと言ってきているのです。そのゾイバー星の代表者の方と話しをしていると、私の心の奥底に有る悪い感情が沸き上がってくるのが分るのです。


 何とかその感情を抑えようとしてはいるのですが、どうにも難しいです。どのようにしていけば心の奥底の悪い感情を変えることができるのですか。どうか教えて下さい。お願い致します』


 『天野さん、あなたはそのゾイバー星の代表の方とあなたが、同質であることはお気付きですか』

 『はい、それは分かっています』

 『それでしたら今回天野さんが直面していることは、あなたの現在の心が招いたことだと言うのも理解していますね』


 『はい、理解しています』

 『だったら天野さん、自分の心をよく見つめて下さい。あなたは今、そのゾイバー星の代表の方を心の底から大好きですか』

 『え、大好き。それは、好きではありません。どちらかと言うと嫌っていると思います』


 『でしたらそれが答えです。人を嫌っているのなら、その人からは嫌なことをされるでしょう。あなたとその人は同質なのですから』

 雄介には、言葉が無かった。


 『天野さん、人は心が成長するときに必ず試されます。その人の心が、本当にもう一段階上に上がるのに適しているのかを試されるのです。そんなときに必ず上に上がらせないようにする出来事が起こるのです。それに負けてしまって悪い心を出してしまっては、心が成長することはできません。心の奥底を変えることは本当に大変な試練です。


 それは、あなたの心が真に良い方に変わろうとしているからこそ、試されているのです。くじけず真の良い心を手に入れる為に頑張って下さい。すると必ずあなたは、この宇宙の全てを包み込むことができる、素晴らしい真の魂を得るでしょう』


 『マザーさん、ありがとうございます。本当に今回のことは僕にとって試練だと思います。私の心の奥底の悪い感情が、地球の人々を苦しめるかも知れない。これほど辛いことはありません。


 しかしこの試練を乗り越えられたときに得られる物も大きいのだと、いま気が付きました。マザーさん、くじけず頑張ってみます。またご連絡させて頂きますので宜しくお願い致します』雄介は、マザーとのテレパシーを終了した。


 次の日、雄介は昨夜マザーとテレパシーで話した内容を、良太と由香里に話した。

 「そうなんだ、雄介は今回大変な試練にぶつかっているんだね」

 「でも雄介君、今回のことを無事に乗り越えることができたら、雄介君の魂の力は凄いことになりそうね」


 「そうだね、くじけずに頑張らないといけないね」

 「そうだ、雄介。マザーさんにリンリンさんを大好きかと言われたんだろう。だったらリンリンさんを大好きになる為に、リンリンさんに直接会ったらいいんじゃないのかな」


 「そ、そうだね。まだリンリンさんとは話したことは有るけど顔も知らないし、ゾイバー星の人がどんな感じの星人なのかも分からいんじゃあ、大好きになることはできないね」雄介の顔は引きつっていた。

 「良太君、あなた簡単に言うわね。相手は地球を乗っ取ろうとしている相手なのよ。直接会ったら何をされるか分からないでしょ」


 「そうだね、ごめん雄介」

 「でも良太の言うとおりだ。顔も分からなくては相手を好きになれない。直接会うのはもう少し先にしたとしも、今度リンリンさんと話しをするとき、映像を映してもらって顔を見ながら話をするよ」


 「雄介、色々と僕も考えたんだけど、本当にリンリンさんが芯から悪い人なら、地球移住に1年も猶予を与えずに、いきなり侵略してくるよね」

 「そうね、リンリンさんは、わざと怖いことを言って雄介君を怖がらせて、本当に地球を明け渡してくれたら、儲け物ぐらいに思っているのかも知れないわね」


 「だったらいいんだけどな。でもリンリンさんを本当に大好きになるには、もっと相手を知る必要が有るよね。よし、そうとなったら今からリンリンさんと話しをしに行って来るよ」


 そして雄介は、シップに乗り込みゾイバー星の宇宙船を目指した。

 「リンリンさん、地球の天野です。こんにちは」

 「また来たのか。今度は良い話を持って来たんだろうな」

 「それはそうとリンリンさん。声だけではお互い中々理解できないので、顔を見ながら話しませんか」


 「なんだと、お前、俺の顔が見たいのか。だったら見せてやっても良いが、一度俺の顔見たら夢に見て眠れなくなるぞ。それでもいいのか」

 「え、そんなに恐ろしい顔なのですか」

 「お前は失礼な奴だな。その逆かも知れないだろ」

 「そうですね。失礼しました」

 

 「じゃあ映像を映そう。俺もお前の顔を覚えておかないといけないからな」

 そしてシップのディスプレイにリンリンの顔が映った。雄介はリンリンの顔を見て驚いた。リンリンの顔は、目がクリクリとして丸く少し離れていて、鼻は上を向いている。口は『へ』の字で顔にも毛が生えていて、まるで犬のチンそっくりな顔をしていたのだ。しかもリンリンの顔は、雄介が子供の頃に飼っていた犬に似ていた。


 「マロ」

 「マロ?マロって何だ」

 「ごめんなさいリンリンさん。でもあなたは、私が子供の頃家で飼っていた犬のマロにそっくりなんです。それでつい呼んでしまいました。でもびっくりしましたが凄く懐かしい気分です」


 「犬の名前か、失礼なやつだなお前は。まあいいが、お前のそのあっさりとした顔も俺がいま飼っている魚にそっくりだ」

 「魚ですか。こんな顔の魚がゾイバー星には居るのですか。一度見てみたいです」

 「そうか、また見せてやる」


 「ところでリンリンさん、ゾイバー星について色々と教えて頂きたいのですが、ゾイバー星の方々は現在何人位おられるのですか」

 「それを聞いてどうするんだ」

 「今後、ゾイバー星の人々を移住させるには、大体の人数が分っていないと、どれ程の街を作ったら良いのかも見当が付きませんから」


 「そうか、まあいいだろう。現在我々の人口は1億人程だ」

 「そうですか、その1億人の方々が宇宙船10隻に分かれて生活をしているのですね」

 「そうだ」


 「ゾイバー星の方々は、宇宙船での生活がもう長いと思うのですが、現在何かお困りのことは無いのですか。何かお困りのことがありましたら協力させて頂きますけど」

 「おい天野、お前やけに親切に言うじゃないか。何か下心が有るんじゃないだろうな」


 「いえいえ、決してそんなことはないです」

 「そうか、じゃあ俺達が一番困っていることを伝える。それはゾイバー星の者が住む星が必要なことだ」

 「それは、この前から聞いています」

 「分っているんだったら、早く地球を明け渡せ」リンリンが大きな声で怒鳴った。


 「リンリンさん、それは絶対に無理です。だから他に良い方法を探しているのです。少しは私に協力して下さいよ」雄介は、今の言葉を言った後、自分の心の中にリンリン対して『困ったやつだな』と言う感情が沸き上がってきているのを感じた。

 「しまった。また悪い感情が出てきている」

 「どうした、何か言ったか」


 「いえいえ、何でもありません。ではリンリンさん、もし1年後に地球人が地球から出て行かず、ゾイバー星の人々が地球に移住できなかったら、リンリンさんは地球に対してどんなことをするのですか」


 「お前はバカか。それを言ったらお前らはその対策を取るだろう。まあこれだけは言っておいてやる。それはお前達地球人が今まで経験したことが無い程の恐ろしいことが起こるんだ。そしてお前達地球人は地球から出て行かなければならなくなるんだ。いいな、だから地球から出て行く準備を今からしておいた方が身の為だぞ」


 「そうですか、そんなに恐ろしいことが起こるんですか。分かりました。でも私は決めました。地球とゾイバー星の人々にとってお互いに最も良い方法を探して、そしてそれぞれの星の人々が、幸せに暮らしていける未来を必ず実現させて見せます」


 「何だと、何を偉そうなことを言っているんだ。まあいいがゾイバー星のことを第一に考えるんだな」

 「では今日はこれで失礼します。また話しにやって来ます。今日はリンリンさんのお顔を拝見できて良かったです。リンリンさんとは仲良くなれそうな気がしてきました」


 「お前は何をバカなことを言っているんだ。仲良くなんかならなくていい。さっさと帰れ」

 「はい、わかりました。ではまた来ますね。さようなら」そう言って雄介は、地球に帰って行った。地球に帰った雄介は、リンリンの顔を見て話したことなどを良太と由香里に話した。


 「リンリンさんは、犬のチンに似ているの」

 「僕も最初見たときはびっくりしたよ。でも僕が子供の頃に飼っていた犬にそっくりなんだ。なんだか懐かしかったよ」

 「だったら雄介君、リンリンさんのことを好きになれるんじゃないの」


 「そうだね、でもうちの犬はとても賢くて言うことをよく聞いて、ものすごく可愛くて、リンリンさんとは少し違うけどね」

 「アハハ、でもリンリンさんがとても怖そうな怪物のようでなくて良かったね、雄介」

 「そうだね、怖い怪物のようなら好きになるのもかなり勇気がいるよね」

 

 「でも雄介君、何かいい方法を考えないといけないわね」

 「ゾイバー星の人々をZ39番惑星に移住させるにしても、必ずゾイバー星をギャラクシーユニオンに加入させないといけない。どうしたらゾイバー星をギャラクシーユニオンに加入させられるんだろう」


 「リンリンさんは相当頑固だもんね。どうしたらリンリンさんの気持ちを変えることができるのかな」良太が腕組みをして考えている。

 「でも、人を変えることはできないと言うわよね。自分が先ず変われば相手が変わるんでしょ」


 「僕も段々とリンリンさんに対しての感情が変わってきている感じがするんだけど、でもまだまだだね。どうしてもリンリンさんと話していると悪い感情が出て来るんだ」

 「そうなんだ、でもそんなに簡単なことでもないよね。自分の気が付いていない心の奥底を変えるんだからね」


 雄介はその日の夜、瞑想をしながら眠ろうと布団に入った。布団の中で瞑想をしていると意識の中でゾイバー星の宇宙船が見えてきた。そして雄介の意識は、ゾイバー星の宇宙船の中に入って行った。


 『これがゾイバー星の宇宙船の中なんだ。宇宙船の中は沢山の通路があるな。部屋も沢山ある感じだ。ん、誰かの話し声が聞こえる。この部屋だな。入ってみよう』雄介の意識が、話し声が聞こえる部屋に入ってみると、そこにはリンリンと犬のブルドックに似たゾイバー星人が居て話しをしていた。

 『ゾイバー星人は地球に居る色々な犬に似ているんだ』

 

 「リンリン代表、地球への移住計画の進行状況はどのような感じですか」ブルドックに似たゾイバー星人が聞いた。

 「今は地球の天野と言う奴と色々話をしている。奴はギャラクシーユニオンの総理事長をしているそうだ。奴を脅してはいるが、中々すんなりと地球を明け渡そうとしない」


 「そうでしょうね。今までもギャラクシーユニオンには度々邪魔をされて来ましたし、奴らの組織は大きいですから、我々の要求をすんなりとは受け入れないでしょうね。しかし代表、我々もそんなに長くはもちませんよ。早くどこかの星に移住しなくてはなりません」


 「そうだな、いま天野が言っているのは、我々がギャラクシーユニオンに加入すると、Z39番惑星とやらに移住できるようにしてやると言っているが、そう簡単にギャラクシーユニオンに加入することもできないだろう」

 「だったら、やはりあの恐ろしい方法を使ってでも、地球を奪うしか無いですね」


 「そうだな、だがそうなったら他のギャラクシーユニオンの奴らが放っては置かないだろう。それにあの方法を使ったら地球人は地球から出て行くだろうけど、我々も直ぐには地球に住めなくなるかも知れない」

 「そうですね、でしたらもう少し地球の天野とやらを脅しながら様子をみますか」


 雄介は意識を戻した。

 「リンリンさん達が話していた恐ろしい方法とは何なんだろう。その方法で地球には住めなくなると言っていた。なんとしてでもそんなことはやめさせなければならない。早く僕の心の奥底に有る悪い感情を無くさなければ、リンリンさんも変わってくれない」雄介は、ふと気が付いた。


 「そうだ、ちょっと待てよ。僕は心のどこかでリンリンさんが変わってくれることを望んでいるんだ。人に望んではダメだ。望めば望むほどリンリンさんは変わらないんだ。問題はリンリンさんに有るんじゃない。最大の問題は僕の心に有るんだ。


 僕自身が僕の心を変えるんだ。リンリンさんが変わってくれるのを望むのは止めよう。人を変えるのは難しいけど自分が変わるように努力する方が簡単だ」雄介は、自分の心の奥底と向き合う方法に気が付き始めた。


 「僕の今の最大の問題は、リンリンさんと話していると僕の心の奥底の悪い感情が出ることだ。しかしリンリンさんによって僕の心の問題を見つけることができた。リンリンさんのお蔭だ。


 今回リンリンさんが地球に移住させろと言って来なかったら、僕の心や魂は、今以上に成長することはなかったはずだ。そのチャンスをリンリンさんは与えてくれたんだ」雄介のリンリンに対する気持ちが変わり始めた。


 「よし、リンリンさんのことを思いながら、僕の心の中をリンリンさんに対する愛情で満たしていこう。そうだ悪い心を抑え込むのではなくて、僕の心の中を良い心、愛情の心で満たすんだ。すると自然に悪い心は居場所が無くなって消えていくんだ。きっとそうだ。


 以前何かの本で読んだことがある。人の悪い所を直そうと、悪い所を責めてはいけない。その人の良い所を見つけて、そこを伸ばしていけば悪い所は無くなると書いて有った。そうだ、そうしていくことが僕の心の奥底を変えていく訓練になるんだ。よしこれだ。頑張るぞ」そして雄介は、リンリンが今まで雄介に言っていた言葉を思い出しながら考えた。


 「リンリンさんは、いきなり地球に移住すると言ってきた。これで僕の心の奥底にある悪い感情にスイッチを入れてくれたんだ。感謝だ。

 次に僕がギャラクシーユニオンに加入する話を出したときもリンリンさんは、絶対に加入しないと言った。これで僕の悪い心を更に燻し出してくれた。感謝だ。


 Z39番惑星の話をしたときも地球が移住しろと言った。これで僕の心の奥底に有る悪い感情が全く変わっていないことを教えてくれた。感謝だ。

 リンリンさんには感謝することばかりだ」雄介は、リンリンに対しての感情の変え方を会得してきだした。


 「それにリンリンさんは、僕が以前飼っていた大好きな犬のマロに似ている。本当に感謝だ。マロにまた会えた気がした。とっても嬉しい。僕はリンリンさんのことが大好きだ。リンリンさんが大好きだ」


 雄介は、リンリンのことを思いながら瞑想を始めた。瞑想をしながら雄介は自分の潜在意識に『僕はリンリンさんのことが好きだ、大好きだ』と何回も唱え、そして潜在意識に植え込んでいった。すると雄介の心の中に段々とリンリンに対して好きだという心が芽生えだした。


 「よし、なんだか要領がつかめてきた気がするぞ。この調子でゾイバー星の為に何ができるか考えていこう」雄介は考えた。地球にとって、そしてゾイバー星にとって最も良い方法は何かを。


 「大好きなリンリンさんに喜んでもらえる方法は何だ。地球を明け渡すことなのか。それよりも、もっとリンリンさんが喜ぶことは、ゾイバー星が元の状態に戻って自分達の生まれ育った故郷の星に帰ることができれば、もっと喜んでもらえるんじゃあないのだろうか。


 しかしあんなに酷い状態のゾイバー星を元に戻すのは、そんなに簡単なことではない。しかもゾイバー星は遠いいし地球の力だけでは無理だ。どうすればいいんだろう。でもそれしか無い気がする。一番リンリンさんやゾイバー星の人々が喜ぶことは」雄介は悩んだ。リンリンに喜んでもらい、そしてゾイバー星の人々にとって最も良い方法は何かを考えて。


 「そうだアロンが、ゾイバー星はアロンがいるアンドロメダ星から比較的近い所に有ると言っていたな。何とかしてアンドロメダ星の力でゾイバー星を元の状態に戻すことはできないのかな。一度相談してみよう」そして雄介は次の日、アロンに連絡を入れてみた。


 「アロン、聞こえますか」

 「聞こえるよ雄介。その後ゾイバー星のことはどうなったんだい」

 「そのことでアロンに連絡したんだ。色々と考えたんだけどやはりゾイバー星の人々にとって最も良いことは、今のゾイバー星を元の状態に戻して、そこに帰ってもらうのが良いのではないかと思うんだ」


 「そうだな。まあそれがゾイバー星の人々は一番望んでいることかも知れないね」

 「アロン、もし今のゾイバー星を人が住める状態にまで戻そうとすると、どれくらいの日数が掛かると思う」


 「そうだな。アンドロメダ星だけの力ではかなりの年数が掛かると思うけど、もしギャラクシーユニオンに加盟している全ての星々の力を借りることができれば、1年以内にはできるかも知れないな」


 「そうなんだ。だったらゾイバー星がもしギャラクシーユニオンに加入することができれば、1年以内にゾイバー星の人々は自分達の故郷の星に帰ることができるかも知れないね」

 「そうだね、でもゾイバー星をギャラクシーユニオンに加入させることなんかできるのかな」


 「そこだね、そこが一番の問題点だね。でもアロン。アロンの言葉に僕は救われた気がする。ギャラクシーユニオンの力が借りられるのであれば、ゾイバー星の人々が故郷に帰ることができるかも知れないんだ。アロン、ゾイバー星の人々を故郷に帰してあげられるように、僕は頑張ってみるよ」


 「そうなんだ、分かったよ。もしゾイバー星がギャラクシーユニオンに加入できて、ゾイバー星を人が住める状態に戻すときは、僕も協力させてもらうよ」


 「ありがとうアロン。アロンは本当に頼りになるよ」

 「でも雄介、頑張れよ。リンリンはかなり手ごわいぞ」

 「そうだね頑張るよ。また連絡します」雄介はアロンとの通信を終了した。雄介は、アロンの言葉を聞いて断然やる気が出てきた。

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