4,ラボーヌ星
その後、何事も無く無事に航行を続けたマザーシップは、モナム星を出発して約2か月後、ついにラボーヌ星の近くまでやって来た。
「あれがラボーヌ星です」議長がディスプレイに映し出されたラボーヌ星を指差した。ラボーヌ星は、無数に輝く星々をバックに銀色に輝いていた。
「この星は、全てが銀色に輝く星なんだ」良太が恒星の光を受けて、眩しく銀色に光るラボーヌ星を見て言った。
「このラボーヌ星には、ほとんど自然は残っていません。全ての土地は人工物で埋め尽くされています。それに海も銀色をしているので、この星の全てが銀色に見えるのです」プッペ議長が説明した。
「議長、ここからラボーヌ星に通信衛星を送り込むことは可能ですか」
「大丈夫だと思います。早速送り込んでみます」
しばらくするとラボーヌ星に送り込んだ通信衛星から、ラボーヌ星の様子がディスプレイに映し出された。上空から見るラボーヌ星の街は凄く近代的で、建物は高層ビルばかりだった。しかし街には人影がまったく見えなかった。
「よし、早速ラボーヌ星に呼び掛けてみよう」雄介がラボーヌ星にメッセージを送った。
「こちらは、ギャラクシーユニオンの者です。ラボーヌ星の方、どなたかこの通信が聞こえましたら交信して下さい。誰か聞こえませんか。この声が聞こえましたら交信をお願いします」雄介が何回かラボーヌ星に呼び掛けると、しばらくしてラボーヌ星から応答があった。
『こちらは、ラボーヌ星総長のルバノーラです。ギャラクシーユニオンの方が、なぜ我がラボーヌ星に来られたのですか』
「ルバノーラ総長、私はギャラクシーユニオンの天野と申します。ラボーヌ星がギャラクシーユニオンを脱会されて、その後ラボーヌ星の様子が分からなくなりましたので、最近のラボーヌ星の状態を確認に参りました」
『そうでしたか。しかし我がラボーヌ星は何も問題はありません。ご心配は無用ですのでどうぞお引き取り下さい。そして我がラボーヌ星はギャラクシーユニオンを脱会しておりますので、今後ラボーヌ星への交信はご遠慮願います。それではこれで通信を終了させて頂きます』そう言って一方的に通信が途絶えた。
「もしもし、ルバノーラ総長聞こえますか」雄介が慌てて言ったがもう通信が切れていた。
「雄介様、今のルバノーラ総長の話しはどう思われましたか」プッペ議長が聞いた。
「今の声はルバノーラ総長では無いですね。たぶんメインコンピューターが、ルバノーラ総長の声を合成していたのでしょう。どうにかしてメインコンピューターと交信しないといけませんね」
「雄介、本物のルバノーラ総長とテレパシーで交信して、もっと詳しいことを確認したらどうなんだ」
「そうだね、そうしてみるよ」
そして雄介は瞑想してルバノーラ総長にテレパシーを送ってみた。
『ルバノーラ総長、聞こえますか。ギャラクシーユニオンの天野です。今私達は、ラボーヌ星の近くまで来ています。ルバノーラ総長、私の声が聞こえましたら心の中で良いので返事をして下さい』雄介が、ルバノーラ総長にテレパシーで呼び掛けた。
『天野さん。ルバノーラです』
『ルバノーラ総長、お元気ですか。お体は大丈夫ですか』
『天野さん、ありがとうございます。私は大丈夫です。いま天野さんはラボーヌ星の近くまで来て頂けているのですね。私達の星を助けに来て下さったのですね。ありがとうございます。どうかよろしくお願いいたします』
元気そうなルバノーラ総長の声に、雄介は少し安心した。
『ルバノーラ総長。私達はラボーヌ星の近くに着いて直ぐに、ラボーヌ星に交信をしたのですが、するとルバノーラ総長の声で、ラボーヌ星は大丈夫だから交信して欲しくないと言われました』
『そうでしたか。でも、それは私ではありません。たぶんメインコンピューターが私の声を使って交信したのでしょう』
『そうですね。私達もそう思っておりました。ところでメインコンピューターのことをもっと詳しく教えて頂きたいのですが、ルバノーラ総長は何かご存じですか』
『メインコンピューターには、ルシアと言う名前が付けられています。この星は全てがコンピューターで制御されていて、街のいたるところに監視システムも有り、全てがルシアに繋がっています。
ルシアには、この星の全てが繋がっていると言っても差し支えないのです。ですからこの星のどこで何が起きているか、ルシアは全てお見通しです。それにルシアは人工知能を持っていて人間と会話もできます。しかし機械ですから人間のような感情は無いです』
『何故ルシアを作ったのですか』
『ルシアを作った当初は、ルシアはとても忠実で、全てが上手く行っていました。ルシアが全てを管理していたので、交通渋滞や物流の不具合など無く、防犯システム等も全てが順調に行われていたのです。ルシアのお蔭でこの星の全てが順調にいくと、全ての人々は思っていたのです。
それがある日突然、全ての家庭に配置していた家政婦ロボットが人間を拘束したのです。全てがルシアの仕業かもしれません』
『ルシアは、人間を敵だと思い出したのでしょうか』
『いいえ、それはありません。その点はルシアを作る前から危惧されていた点で、星の全てを管理させるルシアには、人間を敵だと認識できないようにプログラムしています』
『そうですか。それでは何故人間を拘束したのでしょう。総長は何かお気付きの点はありますか』
『私には分かりませんが、ルシアを作ったダーバルなら何か分かるでしょう。ダーバルのことは何か分かりましたか』
『ダーバルさんとテレパシーで交信しましたが、ダーバルさんはとても衰弱していて、会話ができませんでした』
『そうなんですか。それは大変なことです。彼がそんなに衰弱しているなんて。ダーバルでないとルシアを止めることはできないと思います』ルバノーラ総長は、とても心配している様子だった。
『分かりました。ではなんとかルシアとコンタクトしてみます。何か分かりましたらご連絡致しますので、ルバノーラ総長もお体には十分気を付けて下さい』
『ありがとうございます。天野さん、ラボーヌ星を何卒お救い下さい。よろしくお願い致します』
雄介は、ルバノーラ総長とのテレパシーを終了した。
雄介はルバノーラ総長と話した内容を良太と由香里、そしてプッペ議長に話した。
「どうしたらいいですかね」プッペ議長が腕組みをして考えている。
「雄介。そのルシアと言うメインコンピューターを攻撃して、破壊するのはどうなんだい」良太が言った。
「おいおい。過激なことを言うなよ。僕達はギャラクシーユニオンの人間なんだよ。ギャラクシーユニオンは全宇宙の平和の為に活動をしているのに、攻撃してどうするんだよ」
「そうよ、良太君。なに考えているのよ。あなたは過激な人ね」由香里もあきれ顔で良太を見た。
「ごめん。反省します」良太がしょぼくれた。
「ルシアは、人間を敵だと思わないようにプログラムされているなら、何故人間を拘束しているんだろう。その点が分れば何か解決方法が有ると思うんだけどな」雄介も首を捻って考えている。
「雄介様。もう一度ラボーヌ星に交信して、今度はルシアを直接呼び出すのはどうですか」
「そうですね。それしか方法が無いかもしれませんね」雄介もうなずいた。そして雄介はもう一度ラボーヌ星に交信を試みた。
「こちらは、ギャラクシーユニオンの天野と申します。ラボーヌ星のメインコンピューターのルシアさん。私の声が聞こえたら交信して下さい。私達は、あなたがラボーヌ星の人々を拘束していることを知っています。何故そのようなことをしているのですか教えて下さい」
雄介は、メッセージを一日に何回も発信した。雄介は、メッセージを録音では流さなかった。メッセージを発信する度に内容を変えて、自分の声でメッセージに心を込めて伝えた。
「ルシアさん。聞こえていますか。聞こえたら返事をして下さい。何故あなたは、あなたを作った人間を拘束しているのですか。ラボーヌ星の人々は、あなたの働きに感謝していたのですよ。ルシアさん。返事をして下さい」
雄介が、日に何回も、そして何日もメッセージを伝えてもルシアからの交信が無かった。プッペ議長や良太、由香里も雄介の体を心配していた。
「雄介、メッセージを録音して流した方がいいよ」良太が心配している。
「良太、心配してくれてありがとう。でも録音ではダメだ。録音では心が伝わらない気がするんだ」
「雄介さん。相手は機械なのよ。あなたがいくら心を込めてメッセージを送っても心は伝わらないわ」由香里も雄介の身体が心配でたまらない。
「そうだね。でも僕にはなんだか感じるんだ。何かがラボーヌ星にはある。そんな気がするんだ。心配を掛けて申し訳ないが、もう少しだけやらせてくれないか」
「分かったよ。雄介がそこまで言うならら仕方ないけど、身体だけには十分気を付けてくれよ」
「ありがとう。気を付けるよ」
雄介は再びルシアに向けてメッセージを送った。
「ルシアさん。あなたを作ったダーバルさんはとても衰弱していますよ。このままだとダーバルさんは死んでしまいます。ダーバルさんとの間に何か有ったのですか。教えて下さい。ルシアさん、お願いします」すると雄介が交信を始めて5日目のこと、やっとラボーヌ星のルシアからの交信が入った。
『ギャラクシーユニオンの天野さん。私はルシアです』
「ルシアさん、交信してくれたんですね。ありがとうございます。是非、話しを聞かせて下さい」
『分かりました。でも私と話しがしたければ、あなたが私の所まで来て下さい。そうすればお話し致します』
「そうですか、分かりました。私がそちらに伺います」
『天野さん、こちらに来るのはあなた一人だけで来てください。そして何も持たずに来て下さい。いいですね』
「分かりました。私一人で参ります。では準備ができ次第伺います」すると通信が切られた。ルシアとの交信を聞いていたプッペ議長が言った。
「雄介様、大丈夫ですか。あなただけでラボーヌ星に行くなんて無謀です」
「雄介そうだよ。議長の言うとおりだ。冗談は止めてくれよ。君がラボーヌ星に行っても拘束されてしまうだけだろ。行くのは絶対にダメだ」良太も強く言った。
「由香里はどう思う」雄介が由香里に聞いた。
「そうね、とても危険だと思うわ。でもラボーヌ星の人々を救うには、他に方法は無いのかも知れないわね」由香里が冷静に雄介の目を見て言った。
「そうだね、僕もそう思うんだ。皆には心配を掛けると思うけど行って来るよ」
「その前に雄介君。ラボーヌ星に行って人々を救うことができて、そして無事に帰って来られるのか、宇宙波動エネルギーに聞いてみてくれる」由香里が強い口調で言った。
「分かったよ。早速聞いてみるよ」雄介はそう言って瞑想を始めた。
『宇宙波動エネルギーにお尋ねします。私がラボーヌ星に行ってラボーヌ星の人々を救うことは可能ですか。そして私は無事に帰って来ることができるのでしょうか』すると雄介の左耳の奥で『ポク、ポク』と音がした。雄介はゆっくりと目を開けて皆に親指を立て見せた。
「安心してくれ。大丈夫みたいだ。行ってくるよ」
それから直ぐに雄介はシップに乗り込んだ。
「シップ、ラボーヌ星のメインコンピューターのルシアの所に行ってくれ」
「了解しました」シップは、ゆっくりマザーシップのプラットフォームを離れ宇宙空間に出た。
「シップ。ルシアは何処に有るのか分るかい」
「分かります。ラボーヌ星から信号が出ています」
シップはそしてラボーヌ星を目指した。直ぐに雄介を乗せたシップは、信号が出ていた大きな建物の上空に着いた。するとその建物の屋上のハッチが開いて、中にシップが入って行った。シップがプラットフォームに着陸すると屋上のハッチは閉まった。
雄介がシップの中にしばらく居ると、人間型のロボットが近づいて来たのが見えた。雄介は左腕のスペーススーツのコントローラーを外した。
「シップ、これを外すと君ともしばらく交信ができない。いつ戻って来られるか分からいが、ここで待っていてくれ。僕は必ず戻ってくるからね」
雄介は、シップを降りた。そこに居たロボットは、人間の形はしているが全身が金属でできているのが分かった。雄介がロボットの前に立つとロボットは、雄介をスキャンしたのか、ロボットの目から光線が出て、雄介の頭の先からつま先まで光を当てた。するとロボットが言った。
「耳に付けている物は何ですか」
「これは翻訳機です。これが無いと会話ができません」
「分かりました。ではそれは認めます。天野様こちらへどうぞ」そうロボットは言って向きを変え進みだした。雄介は、ロボットの後に付いて行った。
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