【パート7】突入。
──ビルの前、静かな緊張が満ちていた。
「長いな、いい加減、様子を見に行くか。被疑者がいたら確保だ。」
建物の出入り口周辺には、いつの間にか制服警官たちが配置についていた。
「お前はここにいろ。危ないからな。」
颯汰はぐっと唇を噛みしめたが、素直にうなずく。
──頼むぞ。
心の中でそう呟き、要も小走りに駆け出した。
暗いビルの階段を、足音を殺して上がっていく。
2階、3階──
狙うは、4階だ。
──着いた。
静寂の中、左手のリサイクルショップのドアの向こうから微かな物音。
要は手の合図で捜査員達を止める。
(……ドアの向こうだ。本当にいやがった。)
篠塚が手短に無線を出す。
「対象扉前、突入。」
瞬間──
バンッ!
ドアが蹴り開けられ、刑事課員と機動捜査隊がなだれ込む。
「動くな! 警察だ!」
叫び声と同時に、室内で何人かが立ち上がる。
逃げようとする男、抵抗する男。
だが、刑事たちは無駄なく彼らを押さえつけた。
「確保!」
「確保!」
暗い空間の中で、刑事達の声がこだまする。
──
ビルの外、路地裏。
震える拳をぎゅっと握り締めていた颯汰は、無意識に顔を上げた。
聞こえる。
誰かが言った、「確保」の声。
(──やった。)
今まで感じたことのない何かが、胸の奥に込み上げる。
──夜の歌舞伎町に、静かな勝利の空気が満ちていった。
──
──捜査員たちが犯人を連行していくのを見送ったあと。
要と颯汰は、篠塚が置いていった覆面車両で新宿署へと戻っていた。
夜の静けさが車内を満たす中、助手席の颯汰が首から提げていたイヤーマフを手に取り、耳にかけようとしたとき──
運転席の要がちらりと視線を向けた。
「それ、ずっと気になってたんだが……なんでいつもヘッドホンしてんだ?」
「え、これっすか?」
颯汰は照れたように笑いながらイヤーマフを装着する。
「ヘッドホンじゃなくて、イヤーマフっす。工事現場とかで使うやつ。……これしてると、頭が痛くなりにくいんで。」
「へぇ。」
要は感心したように頷き、ハンドルに視線を戻した。
「耳栓じゃダメなのか?」
「耳栓でもいいっすけど、こっちの方が安心できるんすよ。……お守りみたいなもんすね。」
そう言って、颯汰は冗談めかして笑った。
「……なるほどな。」
要はその横顔を見やり、少しだけ目を細めた。
まるで、何かを噛みしめるように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます