人魚の涙

クライングフリーマン

クレームじゃないけど分かって欲しい。

おとぎ話でもない、本当の話。

「万博行かないんですか?」「行けないんです。」

「どうしてですか?大阪でしょ。」「電車乗れないんです。」

「シルバーシート譲ってくれないんですか?」「歩けないんです。コンビニ行くのも大変なんです。」

ここで、気が付く。相手との「距離感」を。

相手は、「通常に話せる」「高齢者ということは知っている」為に、「深刻な体の問題を抱えている」ことに思いあたらない。

「車椅子に乗っていない」「身体障害者ではない」「介護保険をまだ使っていない」、それでも体の支障はある高齢者は少なくないのです。

電動アシスト自転車は、変な命名だからよく誤解されます。

「電気で動く自転車」じゃないんです。「漕ぐ力を電気的に『助ける』自転車」なんです。

電動アシスト自転車に故障があったら、通常の自転車以上に大事です。

「押して歩くのが困難な体」だから乗っているのです。

どこかに駐輪しておくか、自転車屋さんまで無理矢理乗っていかなければいけないのです。

タクシー?いつも通っている診療所まで往復約8キロ。5000円です。

緊急でなければ乗れません。

私は左の膝関節症と腰部脊柱管狭窄症という、大きな外科的な持病があります。

内臓にも6つ程疾患があります。

1.膝関節症について

膝の軟骨は一度すり減ってしまうと、自然に再生することは難しいとされています。軟骨には血管や神経がほとんどなく、修復に必要な栄養や細胞が届きにくいからです。

膝の軟骨は時間とともに少しずつすり減り、一度すり減った軟骨が自然に元に戻ることはまずありません。

最近では、iPS細胞を用いた軟骨再生医療なども研究されていますが、まだ一般的な治療法としては確立されていません

正常な膝関節の軟骨の厚さは、大腿骨(太ももの骨)で約7mm、脛骨(すねの骨)で約5mmです。関節を覆う軟骨は硝子軟骨と呼ばれ、厚さ2~4mm程度です。

私には、スムーズに体を動かせる程の軟骨がありません。

2.脊柱管狭窄症について

脊柱管狭窄症は頚椎ないし腰椎に発症することが多い疾患です。亡くなった私の母のように頚椎に生じる場合もありますが、私は腰椎です。

動作や姿勢により強い痛みなどの症状が出るのを抑えるためにサポーターやコルセットを装用し、血行改善や鎮痛薬、筋肉弛緩剤などによる薬物療法が行われることが一般的な治療法です。私の場合は、それに加えて診療所のリハビリや鍼灸院の治療を受けています。

もう電車に乗れる体ではありません。旅行はおろか行楽も行けません。

「万博行かないんですか?」「行けないんです。」

病気で食事制限している人に「食べないの?嫌いなの?」と言えますか?


「社交辞令」に、とやかく言っても仕方がない。

でも、悲しい。

おとぎ話の「人魚」は「普通」が欲しかった。でも、それは「贅沢な願い」だった。

私は、もう「普通」を欲しがらない。リスクとデメリットを知っているから。

―完―

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