転生SEの異世界どすこい無双外伝 ~コード・アカデミア ~マリカの仮想学園日記~

藤紫 雫

第1話 ログインの朝

朝の光が和み亭の窓から差し込む中、マリカは慌ただしく準備していた。


「あっ、もうこんな時間!」


 青と白のブレザーに身を包み、髪をきちんと整えたマリカは、普段の着物姿からは想像できないほど凛々しい。

 その胸元には「CODE ACADEMIA - VR学習環境最適化」と刻まれた銀のバッジが光る。


 「行ってきまーす!」と女将に声をかけ、和み亭の奥にある小さな部屋へと駆け込む。


 その部屋は彼女の「教室接続ポッド」。シンプルな椅子と、壁一面に広がるホログラフィックインターフェースだけがある空間だ。


 マリカは深呼吸し、目を閉じる。


 「システム起動、マリカ・アクセスコード:インターフェース・デザイン2025。コード・アカデミアへ、ログイン!」


 目を開けると、そこは広大なキャンパスだった。


 コード・アカデミアは、各言語国家から集まった学生たちが学ぶ、最高峰の教育機関。

 クラシカルな建物と最先端技術が融合した校舎群が、まるで一つの都市のように広がっている。遠くには、クリスタルドームの図書館が朝日に輝いていた。

 コード・アカデミアでは、生徒たちは自分の出身国を表す特徴的な制服を着用していた。各言語国家の国旗色や特性を象徴するデザインが施されたブレザーは、この学園の象徴的な光景の一つだ。


 COBOL王国出身のマリカの制服は、伝統と堅牢性を表す紺色のブレザーに、金色の縁取りが施されている。胸元のエンブレムには「COBOL - 伝統と信頼」の文字が刻まれていた。


「マリカちゃん、おはよう!」


 振り返ると、Ruby連邦の赤いブレザーを着た女の子が手を振っていた。ルビナ・クリスタルは、マリカの親友だ。深紅のブレザーを着用する彼女の制服には「Ruby - 優雅さと柔軟性」のモットーが刻まれ、デザイン性の高いカッティングが特徴的だ。


「ルビナ、おはよう!今日の『プロトコル・コミュニケーション』の授業、楽しみだね!」


「アキラ先生が特別課題を出すって言ってたよね。それより、この間の実装演習の課題、できた?」


 二人は楽しそうにおしゃべりしながら、中央キャンパスへと歩いていく。道中、様々な国の制服を着た学生たちとあいさつを交わす。


 厳格な構造を象徴する黒と金のJavaシティ、実用性を重視した青と灰のPythonヴィレッジ、効率と速度を誇る緑のGoアセンブラ、複雑さと強力さを表す紫のC++帝国など、様々な国の制服が廊下を彩っていた。中には、人間とは思えない、データの流れそのものを身にまとったような存在もいる。


 生徒たちはそれぞれの国の代表として誇りを持って制服を着用しているが、アカデミア内では国籍を超えた交流が推奨されている。アキラ先生をはじめとする教師陣は「言語の多様性こそが、この世界の豊かさを生み出す源泉」だと教えているのだ。


 彼らの前に現れたのは、チュートリアル・アシスタントの「ログ」。フクロウのような姿をした知性派の補助AIだ。丸い大きな眼鏡のような目と、知識の象徴である古い書物の形をした胸のエンブレムが特徴的である。


「ホゥ・ホゥ!アキラ教授ガ オマチデス。講義開始マデ残リ時間ハ3分24秒デス」


 ログは常に正確な情報を伝え、的確なアドバイスを与えることで学生たちから信頼を集めている。アカデミアの図書館の膨大なデータにもアクセスでき、質問があればいつでも答えてくれる頼もしい存在だ。


「あっ、遅刻しちゃう!」


マリカたちは足早にプロトコル・コミュニケーション教室へと向かった。

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