ある細胞のログ
[log] 00:00:00
分裂によって誕生。
設計図に従って形ができ、仕事が割り当てられる。
まだ何も知らないが、すでに“やるべきこと”は決まっている。
> origin: stem.cell
> assignment: epithelial.tissue
[log] 00:00:08
細胞膜が安定。
核内で転写が始まる。
外部刺激に応じて、化学物質を受け取り、応答を始める。
> gene.expression: ON
> status: responsive
[log] 00:02:41
隣接細胞との接触。
“自分”と“他人”の境界が明確になる。
シグナルを受け、分裂は停止。
> contact.inhibition: active
> differentiation: fixed
[log] 03:12:09
熱、侵入物、異常タンパク質。
何かが起きているが、自分には理解できない。
ただ、目の前の刺激に応じて応答し続ける。
> cytokine.release: initiated
> inflammation: localized
[log] 05:55:48
再生プロセス、起動。
古くなった細胞が剥がれ落ち、自分はその下に残る。
新しい細胞に場所を譲る準備を始める。
> mitosis.potential: depleted
> role: nearing.end
[log] 06:22:13
アポトーシス信号、検出。
プログラムされた自己崩壊。
DNAが分解され、膜が縮み、自己の形が失われていく。
> fragmentation: underway
> phagocytosis: incoming
[log] 06:22:19
マクロファージに取り込まれる。
何も残らない。記録も記憶もない。
でも、これが最初から決まっていた“正しい死”。
> remnants: recycled
> identity: erased
[log] 最終出力:
「考えたことは一度もない。
でも、最後まで、ちゃんと“生きる役目”は果たした。」
> power.off
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