地球

[log] 約45億年前

形成。

塵と岩が衝突を繰り返し、重力が“形”を生む。

核が沈み、外殻が冷え、海が降った。

音はなかった。言葉もいらなかった。


> origin: solar.system.third

> composition: iron.silicate.water


[log] 約38億年前

最初の有機体、発生。

“生”が始まったことに、地球は何も感じなかった。

ただ、表面が少しずつ、うごめき始めただけ。


> life.status: detected

> atmosphere: primitive


[log] 約25億年前

酸素発生。

大気の組成が変わる。

何億もの命が絶え、何億もの命が始まる。

地球にとっては、ただの“揺らぎ”だった。


> extinction.count: 1st_major

> memory: none


[log] 約6600万年前

巨大隕石衝突。

熱と灰と長い闇。恐竜、絶滅。

でも、地球は止まらなかった。

一周の自転も、軌道も変わらず。


> impact.site: yucatan.crater

> recovery.time: ~10^6 years


[log] 約300万年前

ヒト科、発生。

火を起こし、言葉を使い、空を見上げた存在。

「地球」と名付けられたのは、この頃以降。


> observer: created

> awareness: reflected


[log] 西暦1883年

クラカトア噴火。

爆音が地球を3周。

でも、マントルの震えは日常のひとつだった。


> energy.release: ~200Mt

> internal.response: none


[log] 西暦1945年

核実験。

人間が自らの手で“地表を書き換える”という遊びを始めた。

その影響は浅い。だが、熱のパターンが変わった。


> isotope.traces: logged

> CO2.surge: noticeable


[log] 西暦2020年

パンデミック。

数十億の声が止まり、都市が静まりかえる。

でも、雲は流れ、地磁気は回り続けた。


> noise: reduced

> forest.growth: localized


[log] 西暦2086年(予測)

海面上昇、都市消失。

山が崩れ、砂漠が広がり、氷が音もなく落ちていく。

でも、回転は止まらない。


> mean.temperature: +4.2°C

> ice.coverage: <20%


[log] 西暦3025年(予測)

人類、消滅。

誰も「ありがとう」とは言わなかった。

でも、最期まで“帰る場所”と呼ばれていた。


> habitation.status: none

> language: extinct


[log] ????年

太陽、赤色巨星化。

表面、蒸発。

構造崩壊。

でも最後の最後まで、**地球は何も言わなかった**。


> orbit.lost

> form: scattered


[log] 最終出力:

「私は命ではない。

 でも、命を抱いたことはある。

 それだけが、存在の意味だった。」


> power.off

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