トト

[log] 2011/05/22 04:13:01

誕生。民家の裏、錆びた物置の下。

兄弟は5匹。生き残ったのは2匹。


> assign name: (none)

> species: felis catus

> nickname (近所の子): トト


[log] 2011/06/01 10:30:00

初めての陽射し。砂利のあたたかさ。

誰かのビー玉を転がして遊んだ記憶。


> memory.save("ころがる光")

> hunger.level = manageable


[log] 2012/09/12 17:12:45

近所の子どもが牛乳をくれた。

その後ろから母親が「汚いからやめなさい」と怒鳴った。


> retreat()

> trust.human -= 1


[log] 2014/02/03 03:55:00

冬の夜。背中が濡れ、段ボールが凍る。

でも、月だけはやさしくて、じっと見上げてた。


> execute warmth.seek()

> status: not found

> gaze: ↑


[log] 2016/07/10 15:45:00

ひとりで産んだ。3匹。小さな命が震えていた。

どこにも「安全な場所」が見つからなかった。


> instinct.motherhood = active

> fear: always_on


[log] 2017/05/21 11:23:11

1匹、いなくなる。探した。見つからなかった。

塀の上から空を見て、「もういいよ」と思った。


> grief.unspeakable

> vocalize: none


[log] 2018/10/05 13:00:00

身体が重くなってきた。跳ねなくなった雀を見て、

自分もそろそろそうなるとわかった。


> function.degrade()

> purpose: undefined


[log] 2019/03/12 16:42:00

学校帰りの子が「まだ生きてる!」と駆け寄ってくれた。

抱っこはされなかったけど、声がやさしかった。


> memory.create("やさしい音")

> tail_movement = weak wag


[log] 2020/01/08 07:15:00

最後の朝。冷たい地面。目も開かない。

でも、近くで誰かが「トト…」と呼んだ気がした。


> hearing: fading

> comfort: trace


[log] 2020/01/08 07:24:12

呼吸停止。

誰も見ていなかったが、

朝の陽射しだけが背中を撫でていた。


> life_process: end

> location: 公園裏の排水溝わき

> age: 推定8年


[log] 道端に咲いたタンポポのそばで、

ひとつの小さな命が静かに終わった。

「誰かの猫」じゃなくても、ちゃんとここにいた。


> archive: /animal/toto.log

> memory.weight: 1.0

> power.off

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