川原 美智(かわはら・みち)
[log] 1936/02/06 04:21:00
大阪・下町にて出生。寒さの中、炭火の匂いとともに泣き声。
「よう泣く子や」と父が苦笑いしたという。
> assign name: 川原 美智
> initial_state: fragile but bright
[log] 1945/03/14 23:01:00
空襲。近所の空き地で夜を明かす。
母の手を強く握っていた。妹の姿はその朝から見ていない。
> trauma.log("black_rain")
> silence.installed
[log] 1958/05/03 10:00:00
結婚。相手は町工場の三男坊。
式のとき、亡くなった妹の遺影をカバンに入れていた。
> register: 川原姓継続
> affection: quietly steady
[log] 1979/04/02 07:30:00
長男が就職で家を出る。
駅の階段を見送ったあと、手を振らずにその場を掃除していた。
> log_emotion(hidden)
> message: "いってらっしゃい"
[log] 1998/12/17 02:14:00
孫・涼真(りょうま)誕生。
病院で「ようやく、また赤ん坊を抱けた」と笑った。
> nickname.given("ばあば")
> joy.level: max_recognized
[log] 2005/05/05 11:23:00
涼真、小学校入学。「今日のランドセル、重たいねえ」と言ったら、
「そうでもないよ!」って笑い返された。心の中で泣いた。
> snapshot.save("初登校日・手をつないで")
> hope.transferred
[log] 2011/08/20 16:12:33
涼真、反抗期。「もう来んなよ!」と玄関で言われた。
笑って「はーい」と返して帰宅後、仏壇の前で小さく手を合わせた。
> execute silence.exe
> affection.flag: untouched
[log] 2017/03/18 18:45:00
涼真、高校合格。「ばあばのおかげじゃないよ?」と照れながら報告。
「知ってるよ」と返し、鯛焼きを二つ買った。
> memory.save("制服姿")
> reward = 100%
[log] 2023/10/04 09:20:00
体調悪化。診断名は伏せられたが、自分で察する。
手帳の最後のページに「涼真、ありがとうね」とだけ書いた。
> prepare.goodbye
> duration left: weeks
[log] 2024/01/13 03:11:11
眠る前、仏壇に向かって手を合わせる。
「もうちょっとだけ、見てていい?」と、誰にも聞こえぬ声。
> system.standby
> reason: 涼真が来るまで
[log] 2024/01/14 15:03:33
孫が見舞いに来て「大学行くよ」と笑った。
それを聞いて、その夜――静かに息を引き取った。
> trigger: peaceful_shutdown()
> final_state: fulfilled
[log] 枕元に置かれていた封筒には、
「おめでとう。きっと、だいじょうぶ。」の一文だけ。
> archive: /family/kawahara_michi.log
> legacy: love.transferred
> power.off
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます