第24話 対価を求められた方が信用しやすい

多摩川。東京と神奈川を隔てる川だが今までは何の気も無しに渡河していた。


と言っても電車なり車なりでのことだが。しかしそう言った乗り物が扱えなくなった今、川が移動を妨げるというのを実感するね。


しかも予想通りと言うか何と言うか。橋が残ってるもののその通行にはダンジョンのクリアが必要である。


ここまで来ようと思えるくらいにはダンジョンでの戦闘にも少しは慣れた。もっとも、慣れた時が危ないとも言うから油断は出来ないのだが。


ここまで来るのに数か所のダンジョンも攻略しているわけで。中には多少潜らされたところもあったが、それでも大きな問題はなく抜けてきた。


過信は良くないが自信は持つべきだ。


ここに来るまでに数か所の避難所もあったと思う。遥香の目には俺たちがいた町田の避難所と同規模かそれより大きいくらいの集団も見えて炊いた。


だが俺たちはソレを無視してここまで突っ切ってきた。世直しの旅がしたいんじゃなくて大本を叩きに行きたいわけだし。


どこもそれなりに問題があるだろうことが予想される訳で。構っていたらいつまでたっても先に進めない、


というのと町田の避難所でもそうだったが俺たちがいなくてもソレなりに規律は保たれていた。避難民たちにも意思の力はあるものもいて、徐々にダンジョンなどもクリアできただろうし。


戦う力を持たない場合でも生き抜く意思などは多くの人が持ちやすく、それは生きるために必要なカロリーが抑えられたり、メンタルを含めた健康が阻害されにくかったり。当初の想定よりはサバイバル的生活にも耐えられる環境が出来ていたわけで。他の避難所でも同様であろうと思われるわけだ。


各地の避難所でもそれぞれ自力で生きていく道を模索していると信じて先に進もうというのが俺たちの出した結論だ。


拠点は明け渡して必要な物資を大きめのリアカーに積んでの旅と相成ったわけだ。引くのは自分たちだがまぁ言ってみれば現代版の馬車の旅。


電車で一時間の旅程も周囲を警戒し、適宜ダンジョンアタックを強いられ、魔物と戦いながらでは数日かかってしまう道のりとなった。


歩く速度などは当然にして以前とは比べ物にならない速度ではあるんだけどな。


「前方、橋の手前にダンジョンね。川の近くだけど、今までと違ったりするのかしら? 内部が分からないのは不便よね。もう少しその辺も改善して欲しいところねこの能力」


「遥香の能力も分かりやすいようでそうでもないよな。ま、今までも分からないことだらけだったんだ。行くしかないだろ。あとは川を越えて、東京だ」



川ダンジョンだが特に今までと変わりはないな。出てくる敵が亀っぽいやつってくらいだ。甲羅は堅いが大きくなった分、頭を狙いやすい。


小さいサイズの方が強敵だったかもしれない残念な亀だった。


遥香の目で見て、海斗が俺たちにそれを伝え、俺が潰す。何かあっても雫のフォローがある。パーティーとして理想的と思える構成だ。俺の力は上手く使えば大抵の敵を無力化できる。


重さの変化が可能になった時点で、重力の理が残っている以上かなりのチート能力になったわけだ。


搦め手にはそこまで使えないが、そこは遥香と海斗が強力過ぎる。役割分担である。俺はそうだな、極端に自分を軽くして空中浮遊でもするとか?手品にしか使えん。


雫の治癒の力と絡めれば宗教立ち上げられそうだな、いざとなったら検討してみよう。出来れば嫌だけど。教祖になりたいやつっているんかね。


「待って、おかしい。変ね、コレは初めて? ちょっと止まって貰っていいかしら」


「僕も気づいたかも。これ、変だよね。多分何かの力もあるんだろうけど、誰かがこっちに来てる、今のところだけど敵意は感じないけど、注意が必要かもね」


うん?二人とも少し様子がおかしい。そりゃ異変後は分からないことだらけ、初めてのことだってあるだろうがそれにしても?


「緑なの。緑っていなかったのよね。普通に考えれば青と黄色の中間ってことになるのかしらね」


「それか青にも黄色にもなるやつってことか。海斗には分かる程度に何らかの意図を伝えたがってる訳だろ。いきなり争う必要もないだろ。


 接触だ。勿論、中止はしていくが。特に雫は絶対に先制されないように、そこは海斗のフォローで頼む」


「すみません。私も一応は戦えますから、そこまで心配されなくても大丈夫です。自分の治療だってできるんですから」


「って言ってもヒーラーの安全はパーティーの安全なんだよね。僕が前衛した方がチームとして安定すると思うよ。もっとも戦うかどうかは別だけどさ」


さて、緑ってのがどんな状況なのか、見極めていかないとな。そう言えばダンジョン内で知らないやつと合うのは初めてだな。


同じ空間を共有していることが分かったのは一つの収穫か。入るごとに変な空間に飛ばされるって訳じゃないようだ。



「こんにちはー。珍しいね、4人で行動してるの? それともどこかの集団から送られてきた感じ? 東京じゃないよね、西から来たのかな?」


「初めまして、かな。多分会ったことはないと思うからね。お察しの通りこっちは4人で行動してるわけだが、集団にも今は所属して良いことになるかな。独自に東京を目指しているんだが、君は東京の人間とやり取りがあるのかい?」


「東京の人とは話はしたよ。でも内容を話すのに俺たちはまだ会ってすぐ過ぎると思うんだよねーだからさ、一回話を聞いてくれないかな? 取り敢えずこのダンジョンをクリアするのは待って欲しいんだけど。話をしてからでも遅くないでしょ?」


(遥香、反応は?)


(踊りのままよ雅人)


(海斗、頼めるか?)


「分かったよ、話を聞いてもいいんだけどさ、なんか変なことはないよね?僕の目を見て、だます意思がないことをしっかりと伝えて貰ってもいいかな?」


「だます必要がある間部んじゃないと思うんだけどなー。でもいいよ、何かの力でしょ?嘘ついてないか分かるの凄いね。

 だます気はありませーん。ただお願いを聞いて欲しいだけ。でも、聞いてくれないなら、敵ってことになるのかな?」


(全部本音ですよ最上さん。この人、悪い人ではなさそうだけど、なんか変な感じ?注意はしておいて)


(了解だ海斗、取り敢えず話を聞いてみよう。無駄に人と争っても仕方ないしな)


「分かった、話を聞こう。で、ここで話すって訳じゃないんだろ?」


「もちろん、付いてきてもらっていいかな? 一応俺たち拠点があるから。そこに案内するねー」


案内されたのは大型ショッピングモール。どこでもやっぱりこういうところが拠点になるわけだ。


ただココは町田のショッピングモールと違って避難民の数も多いし統制も取れている。というかこの不思議な男への敬意を感じる。


そして案内された家具コーナーでそのまま机といすがある場所で軽い会議となったわけだが


「でさ、僕は面白おかしく生きていきたいわけ。幸い食事はあまり必要ない身体になったんだよねー。お酒は必要だけど。だからさ、ここの人達とは色々分け合えたってわけ。魔物を倒して食べるってのも知らなかったみたいだしさー。

 俺が教えて上げたら喜んでね。色々教えたり魔物狩ったりしてたら俺がリーダーみたになっちゃってさ。周りから集まった人もここは割と落ち着いてるし困ってないし。だから変に干渉されたくないんだよね。川向うから来た人たちは協力して欲しいとか助けるとかいうけどさ、要らないんだよねそういうの。

 だって俺の直感が言ってるんだ、向こうは厄介ごとが待ってるって。だからあのダンジョンは封鎖中、ってわけ」


「そっちの事情は分かったが俺たちはその厄介ごとのために東京に行きたいんだ。迂回すればいいだけだから構わないっちゃ構わないんだが。話ってのはそれだけか?」


どうしてもここを通らなきゃいけないわけじゃない。一日二日の遅れは許容範囲。穏便に引いてもいいかと思ったその時


「いや、あそこ意外にもっと近くで向こうに行く手段はあるよ。それで実はお願いって言うか提案があってさ。俺の手伝いしてくれたらそこを通して東京まで案内する。しかも君たちの行きたがってる中心部まで早く安全に行けると思う道だよ」


その提案は悩ましいところだったが、ショートカットが望めるかもしれないし、一度は経験しておいた方がいいかもしれない提案だった。


ダンジョンの火葬ボスの討伐。1000人程度を養いつつダンジョンを下層ボス前まで攻略するこの男と一緒なら。


俺たちがいまだに行っていない下層ボスとも戦えるかもしれない。コイツと俺たちの直感を信じるのも一興か?


4人でも話し合いだした結論は協力。明日はダンジョン攻略、5層にいると思われる一段上のボスとの戦闘。さて、鬼が出るか蛇が出るか――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る