文明が崩壊した世界では、ダンジョンクリアで神様から王権が貰えるけど俺はそれより神を超えたい~第三次世界大戦は神の怒りで終了し人類はこん棒と意志で闘うようです~
第19話 物事はできるかぎりシンプルにすべきだ。しかし、シンプルすぎてもいけない
第19話 物事はできるかぎりシンプルにすべきだ。しかし、シンプルすぎてもいけない
さて海斗の提案の内容だが。存分にその能力を活かしたものであり、そして海斗の覚悟も感じるものだった。
それに、俺も一つ思いついたぜ。合わせ技でいけば状況を変えることが出来るかもしれないのだが。今度は同行者の方がな。こっちの目も少しは気にしないとまずいな。
でもま、俺たち4人の情報共有までは気にする必要がないってのは助かる。海斗の能力も十分にチートだ。特に人間社会においてはな。
今回の作戦は4人全員の力が必要になるからな。十分に準備をしていこう。
ショッピングモールの解放については様々な問題が絡み合っていて解決が難しいという状況だった。
本来であればお互いに協力し合える状況のはずなんだけどな。まず避難所とモールの拠点間の問題を考えると。
避難所としてはモールの物資で欲しいものがある。協力し合いたい。特に衣類なんかは避難所にとって助かるものだし。
モ―ル側としては継続的な生活に対して不安がある。結局は消費するだけだしマンパワーも不足している。出来れば合流したいというのがマジョリティだ。
避難所は今後の安全と安定を。モール側は避難所にない物資の提供を。といってもモール側だって占拠してるだけで物資の保有権があるわけじゃないとは思うが。
もっとも警察機構や法が十全に機能していない現状で、保有権なんてものが何によって保障されるかってのは定かじゃないが。ある意味占有は強い理由かもしれん。二次大戦後みたいに。
それだけでも少し揉めそうな気配があるな。だが今回は更に問題がある。モール側の問題だ。
これは二つの要素があってまず一つ目、モール側に支配層と非支配層が出来てしまっていること。世紀末君たちが実際に暴力を使ったのかは分からないが脅しやらなんやらで支配層になっているんだろう。
それによって支配層にとっては避難所への移動は現在有している権力的なものを手放すことと同意になる。
失うことに対する忌避感は得ることによる満足感を上回る。世紀末君たちにとっては今後の安定は魅力的かもしれないが、今の支配階層にいるかのような錯覚は手放したくないだろう。
被支配層側は無理に自分たちの意見を通そうとして世紀末君たちに制裁されるのが怖い。直接的な暴力ってのは手っ取り早い人心掌握術ではあるからな。
これによって本来はマジョリティである合流したいという意思は支配層によって潰される。いつの世もサイレントマジョリティは弱いのかね。世知辛い。
もう一つはモール側で勢力が分散しちまってること。内部の力関係の詳細は分からないがこれも問題だ。
仮に一番大きい勢力であるスーパーの集団が避難所に移動する。世紀末君も心を入れ替えて全員で、と仮定だ。
するとどうなるか?2番目の勢力である映画館集団がスーパーも占拠するだろう。そしてフードコートも吸収するかもしれない。
この時のスーパー側、特に支配層の心理としては自分たちの行動によって映画館側を助けたような気持ちが生まれることになる。
つまりスパイトジレンマ。3勢力の戦力に差があるのに統一されないのもコレが影響してるだろう。先に仕掛けて損をすること以上に、それによって漁夫の利を得るやつを出したく無いって言う。
こうして問題は多重化され複雑になる。勿論コレだけじゃなく他の問題だってあるだろう。だが差し当たってはこの問題の解決が必要だ。
パッと思いつく解決方法はさっきそれぞれが提案してたもの、シンプルに突貫、魔物をぶつける、など。
シンプルに突貫は真田が面倒だから、と理由を言っていたが実は凄く効果的。
支配層さえ排除すれば被支配層は合流に肯定的だろうし、3勢力まとめて潰す戦力を用意しさえすれば。支配層はいなくなりマジョリティである合流の流れに動いていくだろう。直接的解決にしこりは残るが、それは後で対処できない問題じゃない。
ここで時間を掛けることにだって問題はあるわけだしな。
そして魔物をけしかけるのは古来より伝わる最強の戦法。共通の敵を作る、だ。
そしてその共通の敵に対して圧倒的な力をこちらが見せればそれは威圧外交となり。直接戦う必要がなくなることだって期待できる。
それ以外だと兵糧攻め、モールの強みは物資のみなんだからその強みが消えるのを待つ。こちらが欲しいのは時間経過で無くならない衣類等だし。
他には内応、扇動、その他諸々あるが、時間や相手に依存するし確実じゃない。
正攻法+搦め手+超常の力。これで攻略といこう。
「真田さん、すいませんがちょっと外します。アレなもんで」
そう言って俺は真田に小声で話しかける。
「あぁどうぞ。どうせ状況は動かないでしょう。まったく、こちら側ですら意思統一出来ないのに相手にそれを求めるとはね。非常事態に民主主義は最悪の相性だと私は思いますよ。すみませんね、独り言です」
「地位があれば悩みも増えるでしょう、心中お察しします。しかも、その地位に見合った責任は残って、報酬はないとなればなおさら。頭が下がります。おっと、私はまだしも我慢が難しそうなやつがいるもんで。大丈夫、短いですので」
真田も大変だろうなと思うよ。しかしこの状況でも役針を果たす姿勢に対するリスペクトは本当だぜ。流石警察官。
それに優秀だとも思う。村上と馬場の間を取り持ったり日本的中間管理職の姿を見せながら、自分達より数の多い相手に対して突貫する自信もあるんだろうし。
真田の苦労は解決できないが状況は分からんぞ。俺と海斗によって少なくとも状況は変わる。そのために、少し離れるんだからな。
――――――――◇◇―――――――――――――――――
ショッピングモールから少しだけ離れた建物の死角。死角にいることは不自然じゃない。小便に行くはずで場を離れたのだから。
本来の目的は、真田達からじゃなくモール側から見られないように、なんだがね。
『遥香、向こうの様子をしっかりと確認してくれ。準備は出来た。プレゼントの時間は一分後を予定だ』
『了解よ。各所とも内部の世紀末は少ないわね。私たちがいるからでしょうけど外に出てる奴が多いわ。助かるわね』
オーケー。それじゃこっちも開始していこう。
そして俺は地べたにうずくまる四足歩行の物体を軽く海斗に向かって放り投げ、海斗がそれをノーマルバットで打つ。ノックの時間だ。受け取ってくれよ?
海斗が打った物体はまるでピンポン玉のように勢いよく空を飛んでいき、世紀末君たちの集団の中にポトリと落ちる。
「なんだっ!? 何が飛んできた?これは……犬?」
「違いますぜリーダー! こいつはみたことがありやす、魔物です!!」
「なにぃ!? と、とにかくなんとかしねぇと! 持ってる棒でぶっ叩くんだ!」
しかし無情にもノックは続く。その後も数体の黒狼が集団の中に届けられる。世紀末集団は大混乱。3つの集団すべてで。
黒狼たちはホームラン級の飛距離で遠方から飛んでくる。にもかかわらず着地は非常に軽やか。というより着地音がしない。
まるで羽のように地面に落ちる。しかしそこからの動きは違う。魔物として、まるでプログラムされたかのように周囲の人間に襲い掛かる。
集団に突貫、世紀末君を跳ねのける。時に世紀末君に棒で打たれるがその表皮で受け止めて再びの突貫。倒れた人間の上にのしかかる個体もいる。
「真田さん!すまん魔物の集団だ。モールにも突っ込まれた。そっちを頼む!」
「把握している!すでに村上を向かわせた。俺も突っ込む!そっちは大丈夫だな?」
「任せてくれ、すぐに片付けて救援に行く!」
短いやり取りで真田と村上が混乱の只中に突っ込む。遥香もだ。
俺と海斗と雫も、一番大きな混乱を引き起こしているであろうスーパー側へと向かって駆け出す。
そう、雫は俺たちと一緒にいたんだ。まさか連れションしてたわけじゃないぜ?黒狼の回復役だ。
この混乱のからくりはこう。
まずは遥香と雫が周辺の黒狼を瀕死にして集合場所へ集める。
初戦闘の時もそうだったが生体がリアルと言うか何と言うか。弱って動けなくなってから死ぬまでには時間差があるから可能だった。
そしてその場に雫を残して遥香は真田たちのもとへ戻る。その辺のアレコレは適当に言い訳して貰っている。
俺たちと合流した雫は黒狼を回復させる。一匹ずつ、ノックのたびに。
そして俺は黒狼の質量を時間限定で極軽量に落とし海斗へトス。
筋力や巧緻性が向上している海斗の正確無比なノックは、見事世紀末君たちに黒狼をプレゼント。
そして質量を殆んど無くした黒狼は着地の衝撃で死ぬことはなく、時間経過で取り戻した質量を持って世紀末君たちに襲い掛かる、というわけだ。
完全に自作自演のマッチポンプではあるのだが、救世主となって助けようじゃないかショッピングモールの諸君。
これで被支配層のヘイトのほとんどを逸らすことが出来るだろう。そして、最後の一手はこれからだ。
懸念は黒狼による被害で死傷者多数にならないか、ってことだが即死性のダメージは少ないだろう。避難所の探索でもそのようだったし、最悪の場合は世紀末君たちの自己責任ということで。
自己責任かは知らんが決して褒められることじゃないことをしてたんだ。多少の報いは覚悟の上と、俺は判断しちまうぜ。
生きてさえいれば雫が何とかしてくれる、かもしれないしな。
大混乱となったショッピングモール。黒狼退治&被支配層の解放へと向かうため、俺たちはその速度を高めていく。
その速度は、アスリートどころじゃなく、周囲に見せる姿を、英雄に変えて――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます