第26話『鋼鉄都市』アシモフ
わたしには尊敬する三人の小説家というのがありまして、その人たちの作品はいっとき「ずっとこれを読んでいたい」と思って、その人たち作品を片っ端から読んでいた時期があります。そのうちの一人が、今回取り上げるアイザック・アシモフです。
アイザック・アシモフは、20世紀に活躍したアメリカのSF作家で、ローバート・A・ハインライン(『夏への扉』、『異星の客』、『月は無慈悲な夜の女王』)やアーサー・C・クラーク(『幼年期の終わり』、『都市と星』、『2001年宇宙の旅』)と共にSF御三家とも呼ばれたSF界の大御所でした。
アシモフ作品最大特徴は、リーダビリティの高さです。とにかくスルスルと読むことができるのです。英語で書かれた(そして日本語に翻訳された)小説のなかで、アシモフの作品ほど読みやすいものを私は知りません。
外国の文化を背景に外国語で書かれた小説を日本語に翻訳しても日本人にはイマイチよく分からないことが多い。ましてやSFというとっつきにくいジャンルなら尚更なのですが、アシモフだけは格別に読みやすいのです。言語や文化の制約を超え、世界中の人に分かりやすく伝わる普遍性を備えた文体――これがSFという文学にとてもよくマッチしている――といっていいでしょう。
ユーモアのセンスもすばらしいです。アシモフはサービス精神旺盛な作家で、それぞれの短編にちょっとしたエピソード(その短編を書くに至った経緯や、ボツにした担当編集者、はたまた採用してくれた編集者とのやりとりなど)が添えられた短編集がいくつもあるのですが、どのエピソードもすごくおもしろいし、アシモフの人となりを知ることができて楽しいです。いや、もちろん本編もおもしろいんですよ。
また、科学解説書も超わかりやすいです。アシモフの作家としてのキャリアを前期、中期、後期に分けるとすると、前期と後期はSF作家、中期は科学解説者としてキャリアを積んでいます。いまでは絶版になっていますが、中期の科学解説エッセイが抜群におもしろいのです。いまでは読めないのが残念無念。
あとアシモフはSFだけじゃなくてミステリも書くんです。これがまた本職(?)のミステリ作家も赤面して逃げだすほどうまい……というか、ミステリ作家としても一流としかいえない。
『鋼鉄都市』は、宇宙人に支配された地球上に建設された「鋼鉄都市」を舞台に、地球上における宇宙人科学者殺害事件めぐり、捜査を命じられたニューヨーク市警の刑事、イライジャ・ベイリが、宇宙人側から派遣された人間型ロボット、R・ダニール・オリボーとコンビを組んで事件の犯人を捜索するというストーリー。イライジャが、支配する宇宙人と支配される地球人の対立という難しい政治状況のなか、相棒のロボット、ダニールに対する偏見と猜疑心を乗り越えて、不可能犯罪の犯人を追い詰める――という、いろいろてんこ盛りなエンタメSFミステリとなっています。
古典中の古典SFなので、内容に古臭さは否めませんが、「これこそSF」というお手本のような小説です。安心して勧められるSFって少ないのですが、『鋼鉄都市』はオススメできるSFのひとつです。
☆
アイザック・アシモフ(1920-1992)は、アメリカのSF作家、科学評論家。本文中書いたように、わたしの中ではナンバーワンの作家の座に君臨し続けています。代表作は『鋼鉄都市』にはじまる「ロボット三部作」や「ファウンデーション・シリーズ」、短編集『夜来たる』、ミステリでは『黒後家蜘蛛の会』などなど。
『鋼鉄都市』が映画化されるというニュースが今年のはじめに流れました。『アイ,ロボット』や『アンドリューNDR114』といったアシモフSFが原作の映画はいくつかありますが、原作ほど評価は高くないですね。
アシモフの小説を映画化する話、アシモフの生前からいくつもあったようです。ただ、映画化権を売ると途中でその話が立ち消えになるということが繰り返され、「わたしはハリウッドが映画化するという話は信じない」とエッセイに書いていたことを思い出しました。
「安心してください。あなたの小説、映画化されてますよ」とアシモフに会えたら言ってあげたいです。笑
次回は、スーパー頭脳集団アイデアファクトリー『君はエスパー』を取り上げます。
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