第7話 ここはどこ?再び
「お目覚めですか?」
金髪の女の子が声かけてきた。
見回すと馬車の中だとわかった。金髪の女の子に膝枕されている。
「お目覚めですか?」
金髪の女の子が再度声かけてきた。いい匂いがしていて、鼻がくすぐられる感じだ。思わず起き上がるが、頭が非常に重いことに気づく。二日酔いの様に気分が悪い。
「すいません。寝てました。気を使っていただき申し訳ありません」
日本語でしゃべっているつもりが、変な音に変換されている。どうも、それで伝わっているようだ。
「いえいえ、気になさらず。命の恩人ですから」
彼女はふんわりとほほ笑む。片側にでるえくぼが可愛い。
「紹介がおくれましたが、私は、レバークレーゼン商会の娘で、フローラ・リセ・レバークレーゼンと申します。この度は助けていただきありがとうございました。何とお礼を言えばいいか?」
見た感じ15、6才の女の子にそんな言葉をもらった。
「いえ、お礼なんて」
僕は、それから続く、”これからどうしたら良いか分からない迷い人である”ことを告げる言葉をためらい飲み込んだ。変換される音がだんだん日本語に聞こえてきた。
彼女は続ける。
「セバスに聞いたら、日本という遠い国から来たとのこと。その国はさぞかし高度な文化が発展しているのでしょう。あなた様の服装からも見受けられます。また、優れた魔法を使えて、言葉使いも丁寧なんで、高度な教育を受けられたのですね。もし、よろしかったら、我が家で心行くまでお過ごしください。お父様にも挨拶してもらいたいと思っております」
彼女は2倍増しにほほ笑む。
どうするべきか?考えもまとまらず無言になる。見つめられているのが恥ずかしく、馬車の窓から外を見ると、緑の田園風景が広がっている。
小麦かなぁ。
彼女の方を向いて
「この国のことを少し、教えてもらえませんか?私の国ではこの国のことを教えてもらってないので」
声をかける。
「わかりました。この国は、北部と中央部と南部に大きく分かれています。北部は海に面して商業が盛んで、中央部は緑豊かな穀倉地帯、南部は切り立った山々がある鉱山地帯となっています。
その先は魔境と言われる魔物のすむ地域なんですが、今回のオークも魔境から流れてきたはぐれオークではないかとおもっております。私どもは、北部の街のベネーデヒでの打ち合わせを終え、商会があるシュバルツバルトへ帰る途中でした。
私が少しでもお爺様に良い報告をしたくて近道を選んだためオークに遭遇したのです。偶にお腹を空かした魔物が住民を襲うということが話題になることがありますが、私どもがそれに遭遇するなんて思いもよらぬことでした。私のせいで皆に迷惑をかけたのは反省しなくてはいけません」
彼女はしゃべりながらもその時のことを思い出しはじめたのか?目がうるうるし始めた。僕はまずいと思い、無理やり話しを終わらせる。
「ありがとうございました。よくわかりました。大変でしたね。まぁ、無事でよかったではないですか?お手伝いできてよかったです。ところで、この馬車はどこへ向かっているのでしょうか?」
「シュバルツバルトです。この国の王都になります。お気に召すか分からないのですが、私どもの家へお立ち寄りください」
「はあ~」
選択肢が無い僕は生返事する。
別れるべきか?このまま一緒行動すべきか?悩んでみたが、何も分からない土地で単独行動するよりは何かと知り合いがいた方が良いと思い、このまま同行する事にした。
「それではご迷惑でなければご一緒させてください」
という事で王都へ向かうことになった。二日酔いのような症状はまだ収まらない。
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