第12話 事の顛末



――――やがて、私は家に帰ることができた。ベランダの窓が直った我が家にはカイ、杏樹部長と嗣吹さんがいる。


「会社のことを話すけど、現状イブキちゃんな解雇にはなっていないよ」

「……そうだったんですね」

あの時の杏樹部長との電話で私は休職になっていると知らされた。


「むしろ華ノかのみや麻亜矢まあやと一緒になって、不倫の末にイブキちゃんを解雇させようとした三角みすみたけるの方が解雇通知を回された。ま、社長でもないのにそんなことをしたら、罰則を押し付けられても仕方がないね」

「でも華ノ宮の圧力は……?」


「まさか。そんなのどうってことないよ。そもそも2年前華ノ宮の令嬢がやらかした件で華ノ宮は信頼も権威も失墜寸前。それでもほとぼりが覚めるまで令嬢を国外に逃がすことしかできなかったからそのために会社や私財を手放しているはずさ。最近では業績も悪化している。ま、自業自得だね」

そっか……あんなことをやらかして無事でいられるはずがない。私は麻亜矢の身代わりとして麻亜矢を誘拐しようとした連中に人質にされた。それなのに逃げた麻亜矢はメディアに姿を現して自分は無事で一緒にいた友人も全員逃げ延びたと告げ人質はもういないと告げた。


つまり私は友人ではないからそれも事実。しかしながらそれによって私は役立たずの偽物だと明らかになり……カイが助けてくれなければ殺されていただろう。

私は救出され、その後は警察に保護された。その事典で麻亜矢の嘘は明らかになり世間的には私と麻亜矢はクラスメイト。友だちではないと言う事実で擁護されるほど世間は甘くなく、警察が報道規制を敷いている中でメディアに姿を現した麻亜矢に批判が飛んだ。そしてそれは華ノ宮の力を持ってしても抑えることはできなかった。


「三角も逮捕される。華ノ宮はさらに失墜する。仕事にも復帰できるよ」

「は……はい、杏樹部長」

良かった……。そして私があんなに恐れていた華ノ宮の権威がもう既に堕ちていた。


良かった……やっと解放されるんだ。だけど麻亜矢はどうしてそこまで私に……?それだけが未だに謎である。


※※※


――――数日後。


「それじゃぁ、行ってきます」

「あぁ、行ってらっしゃい。車で送ろうか?」

カイが作ってくれた朝食をたいらげ、私は仕事に向かう。いつも通りの……いや、違う。新たな日常だ。


「電車で行くから平気よ」

「ならいいが、何かあれば連絡してくれ」


「仕事はいいの?」

「今夜は夜からだ」

普通の警備保障の仕事か、それとも傭兵の仕事か。しかし海外の仕事はあまり受けていないらしい。日本で……私の家で一緒に生活している。

今は恋人……婚約者のような関係かな。猛との暮らしとは違う。幸せな日々。


「じゃぁ……その時は呼ぶね」

「あぁ」

カイに手を振り、私は会社に向かった。

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